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~産後うつ~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 子ども連れのママさんの施術の様子
子ども連れのママさんの施術の様子

 

 

最近の新聞報道で、東京23区で2005年~2014年の間に63人の妊産婦が自殺で亡くなったことが明らかになりました。出産数に占める割合は10万人あたり8.5人となり、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍に上る、とのことです。

 

これはとても残念で悲しい現実です。医学史の観点からみれば、19世紀に産婦が産褥熱により死亡することが頻発していたのを、ハンガリー出身の医師ゼンメルワイスが手の消毒によって死亡率を激減させました。かつての日本は出産において「先進国の中でも赤ちゃんは助かるが母親がよく死ぬ国」でありました。人類は医学の進歩により出産による死亡率を下げていきましたが、いまだに100%安全な分娩(お産)はありません。(日本では)低い確率ながらも命がけで出産を乗り越えたにも関わらず、自ら命を絶ってしまうことがあることは悲しいことです。また、不妊で悩むひとがいる一方で、妊娠中に死を選んでしまうこともしかり。

 

自殺の原因の多くが産後うつとされています。産後のホルモンバランスの変化や育児の悩みによって起きると言われています。産後うつに対して予防できることは周囲のサポートにあるはずです。医療カウンセリングや投薬など。その中に鍼灸、マッサージも必ず入ってくると考えていますホルモンバランスを整えることは鍼灸治療の得意分野です授乳を考慮すると、なかなか薬物を摂取したくないと考えるママさんは多いでしょう。副作用(眠気、内出血、火傷など)が全くないとは言いませんが、化学的副作用はほぼ無い鍼灸は有効なのです。
マッサージ(正確にはあん摩、指圧、マッサージ、タッチング、など)は体に直接触れることで精神を安定させる作用があります。手技を行っているあいだ、話を十分に聴くことができることも大切です。

鍼灸師には四診といって望診、聞診、問診、切診、という観て、聴いて、問いて、触って症状を判断する術があります。画像診断ができない分、その人そのものを診ることに長けています

 

以前、生後1年未満の赤ちゃんを連れたママさんが治療院に来ました。その方は初産でした。問診を始めると2時間にわたり育児の辛さや夫への不満、子供への不安を話し続けました。2時間です。しかも、聞いてみると、原因も対応策もはっきりしています。対応策もこれから実行するのです。それでも話さずには、吐き出さずにはいられなかったのでしょう途中、驚いたことに赤ちゃんが自ら私の膝の上に乗ってきました。初めて会った白衣を着た男性である私のところに来たのです。そのまま赤ちゃんを抱っこして寝かしつけていましたが、ママさんの話は止まりませんでした。ひとしきり話を聴いたあとに、45分按摩指圧治療を受けて帰宅しました。
経営面からすれば45分の代金で、追加で2時間居られてはたまったものではありません。
しかし、鍼灸マッサージ師の使命としては良かったと思っています。これも自らが育児を経験していないとできなかったことだと思います。またどこかの院に勤める一従業員ではできなかったことでしょう。

 

産後苦しんでいるママさんに対して、私ができることを続けていきます資格技術、経験体験、開業環境を含めてです。もしかしたら私が男性だったからできることがあるのかもしれませんし。

 

甲野 功

 

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