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~筋トーヌス~

筋トーヌスというものが人体に存在します。

 

トーヌス(tonus)は緊張を意味し、筋トーヌス(muscle tonus)とは筋緊張のことです。

ただ筋緊張と日本語にしてしまうと、単純に筋肉が緊張している状態を想像してしまい、言葉の誤解が生まれることがあるので、敢えて筋トーヌスとカタカナを使った方が分かりやすい場合があるのです。

 

自ら動かすことができる筋肉(随意筋)のほとんどが、骨格筋という動作に関連する筋肉であり、動いていない時でも絶えずわずかに緊張しています。これは無意識(不随意)に筋肉が弱くそして持続的に収縮していることを示します。この状態を筋トーヌスと言います。

 

健常な状態の筋肉では、他動的に伸ばそうとしたときにわずかに抵抗する張り感があります

運動するための準備や姿勢を保つために、筋肉が緊張している状態を維持しており、準備状態を保っていると考えられています。自動車で言えば、常にエンジンがかかっていて、停車していてもアクセルを踏めばすぐに発進できるアイドリング状態のようなもの。筋肉は指令が来たらすぐに動けるようにするために筋トーヌスがあると言われています。

 

大脳から末端の筋肉まで神経の伝達ルートがあり、刺激を常に送っているので筋トーヌスが生じます。病気になるとこの筋トーヌスに異常がおきます。

 

例えば筋トーヌスが全くなくなる筋弛緩状態。

これは末梢神経のルートが切れた場合に、大脳からの刺激が伝わらないので、だらーんと筋肉が緩み切ってしまう状態です。操り人形の糸が切れた状態を想像すると分かりやすいでしょうか。

反対に痙縮のように中枢神経からの刺激が暴走して、不自然なな筋肉の収縮がみられる場合もあります。脳梗塞では腕や指が固まってしまったり、無理に動かそうとすると最初に抵抗があるがスッと抵抗が消えて動くようになったり、と意図しない動きが生じることがあるのです。これは操り人形を操作している人間が滅茶苦茶な動きをしていると思ってください。

 

臨床現場では、筋トーヌスを診ることはとても重要であり、この反応によって末梢神経(もしくは下位運動ニューロン)の障害か中枢神経(もしくは上位運動ニューロン)の障害か大まかに判断できます。理学検査法も確立しています。

 

東洋医学では「肌肉」をみるという視診(望診)項目があります。肌肉とは筋肉の盛り上がった筋腹を指すと言われ、そこから体の肉付きの状態と解釈されることもあります。個人的には、筋トーヌスを診ることに近い考え方だと思っています。西洋医学でも東洋医学でも、筋肉の状態を診ることが大切だと示しているのではないでしょうか。

 

というのも、健常者でもコンディションによって触って感じる筋トーヌスが異なることが、経験上あるからです。

 

スポーツ選手の身体は、疲労によって筋肉が張っているのとは別に、内側から力が漲っているような触覚をえます。マッサージなどで筋肉の緊張を取り除いたとしても、表面の筋肉が柔らかくなったとしても、奥にゴムまりのような強さと張りを感じるのです


対して、気持ちが落ち込んでいる、覇気がない人の身体を触ると抵抗感がなく、悪い意味で脱力しているように感じます。筋肉が柔らかいだけでなく、奥に眠っている力も弱い、そんな感覚です

 

大病をして数週間入院している患者さんを触ったときは、当然筋肉がやせ細っていることがありますが、感触に力(張り感)を感じませんでした。体調が回復しそろそろ退院するというときなると、筋力が戻るのとは別に、力がみなぎってきている感触がありました。
想像するに、大脳から筋肉へ常に刺激を与えているのですが、入院生活によって軽い鬱状態となり、大脳からの刺激が弱まってしまうことが一因なのではないか。そう思えます。

 

 

別に競技ダンス選手のケースもあります。
現役バリバリのある競技ダンス選手がメンテナンスと治療を兼ねてうちに来るのですが、そのときは諸事情により忙しくて大会前にも関わらず満足に練習ができない状態でした。通常コンディションを知っているので、筋肉が落ちたな、と触って私は思いました。選手本人もそれを自覚していました。


按摩指圧をしながら、次の競技会の話、現在の状況、ダンスの課題などを話し合いました。

すると奇妙なことに、筋肉をほぐして緩めているはずなのに、段々と筋腹が大きくなり、筋肉に張りが出てきたのです。普通はリラックスして筋肉が緩むだけのところが、緩みながらも力がみなぎってくる感触が手から伝わってきました

元々別のスポーツを行ってきて競技ダンスでも上位の選手であるため、脳が活性化して筋肉へ刺激が強くなり筋トーヌスがいい意味で上がったと考えられるのです。

 

トップアスリートはイメージトレーニングだけでも筋肉が付くという話を聞いたことがあるのですが、それに近いようです。正直、驚きました。

 

筋トーヌスという、常に筋肉にある弱い緊張が存在します。筋肉に触れてそれを読み取ることで、色々なことが予想できるのです。

 

甲野 功

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