～寝かせる～

子育てをしている人には、
・眠っている姿は天使なのになあ
・やっと眠ってくれた
・寝静まってからが自分の時間
などと思うことが多いのではないでしょうか。

寝かしつける技術は立派な武器になると切実に思います。これは育児だけでなく、本業の治療にも関係しています。

私がこの業界に入ったきっかけは民間のリラクゼーションでした。そこでは、いかにお客を寝かせるかが大事な技術になります。むしろお客は疲れて寝に来ていると言えるので、速やかに気持ちよく、眠ってもらうことがゴールなのかもしれません。そのため、寝かせるための技術があり、磨いてきました。

眠るということは、自律神経の副交感神経が優位になり、心が落ち着いて、脳にはα波が出てくる状態。心身を休めるのに大切なことです。
そして自宅ではない場所において他人である術者がそばにいる状態で、眠るためには安心してもらいリラックスすることが不可欠。そのために外見、態度、話し方、手技、など複数の要因があります。
整体専門学校のときの授業でも、腕が下手だったり安心させられなかったりする人は、相手を寝かせることができません。
その当時、オヤジギャグを連発する中高年の男性がクラスにいましたが、実技授業で速やかに寝かせイビキをかかせて黙らしていました。寝言は寝て言え、と。

そんなことですから、子供ができるずっと前から寝かせる技術を持っていました。これが鍼灸マッサージ師となり、治療の現場になっても活きることになります。

経絡が、補瀉が、気の流れが、とか言う前に、まずリラックスして寝てもらった方が体に良いことがあります。
いわゆる自律神経失調症では気持ちよく寝てもらうくらいの気持ちで行うことがあります。不眠症の患者さんにはまさに眠れるように治療するのですから目的が一致します。また、美容鍼で「顔がスッキリしました」と言われても、気分よく少し眠りにつけば、寝不足が解消されてそれなりに顔がスッキリするものです。

人を寝かせる技術。それなりに奥が深いものです。

甲野　功

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