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先日は、全日本学生競技ダンス選手権大会が開催されました。
母校、東京理科大学の後輩の中には、治療やコンディション調整を目的としてうちの治療院に来てくれる選手もいました。今年も予定を調整して朝から応援に駆けつけました。
この全日本学生競技ダンス選手権大会は学生最後の大舞台。今年の8種目の各学生日本一を決める大会であり、4年生にとっては最後の競技会になります。
すなわち、本大会で多くの選手は実質的な競技引退をするのです。(年内はまだ大会がありますが、正規の組で本腰入れて行うものはありません。)日本全国の学生競技ダンスを行う大学が集まり、各大学1種目につき1カップルのみエントリーして勝負する学生最大の競技会です。
毎年、学生最後の大会を見ようと、他の大会とは桁違いの観客が押し寄せ、一種異様な雰囲気の中で行われます。
ちょうど20年前の1996年12月、私は大学1年生で初めて全日本戦を見ました。
初めて聞く大学名がたくさんあり、北は北海道から南は九州まで本当に全国の大学が参加し、会場がぎっしりと埋まった光景に驚きました。そして、4年生の主将が優勝し、学生日本一を勝ち取った瞬間をフロアーサイドで目の当たりにしました。
その頃、東京理科大舞踏研究部にとっては、初の全日本優勝。それまで私の身近で、日本一を勝ち取るという経験が無かったものですから、感動、感激、色々な感情が沸き起こりました。
先輩が優勝する姿を見て、
東京理科大でも、大学からダンスを始めても、学生日本一を狙うことができる、
という事実に打ち震えたものです。
同時にこの瞬間、4年生の主将カップルは最後なのだと、オナーダンス(優勝したカップルが一人で踊りを披露すること)を見ながら理解したものでした。
この3年後、私の同期カップルが、夏の全日本選抜選手権大会で東京理科大では2組目の、学生日本一に輝くことになります。上級生が残したもの、見せて来たもの、形になるもの、形にならないもの。色々なものを受け継いだのでした。
今年も、20年前と同じように最上級生の4年生から後輩たちへ、たくさんのものが受け継がれたと思います。
アマチュアやプロフェッショナルの競技ダンスと異なり、学生は引退競技会を自分で選ぶことが基本的にできません。もうこれで辞めにすると決心するならばできますが、まずいません。もちろんもっと学生競技ダンスを続けたいということも不可能です。
ほぼ全員が4年生の全日本を全うすることが目標になります。
残念ながら近年の東京理科大学では男女に人数差や学業との兼ね合い、実力面などから半分くらいの学生が部活を続けたとしても、最後の舞台に立つことはかないません。最後の学生日本一をかけた舞台に立つだけでも容易ではないのです。出場した4年生は、大会に出ることは叶わなかった同期の分まで気持ちを込めて踊るため、気合の入り方が違います。
そして、どれがラストダンスになるか当人は分からないのが普通です。審査員の点が入らなければ落ちるため、結果が出てから、あのダンスが学生最後だったのだ、と思い返すわけです。
これが最後かもしれないと、気合と覚悟を伴って1次予選から踊る4年生たちですが、確実にラストダンスと認識してフロアーに立つ場合があります。それが下位決勝戦とオナーダンス。
下位決勝とは12組に選ばれた準決勝戦から上位6組をファイナリストとして選び、上位に選ばれなかったメンバーで準決勝の下位順位を決める学生特有のシステムです。この場合、決勝入りを逃したので落胆する中、これが学生最後のダンスだと本人も周囲も認識して踊るので、毎年泣きながら踊る選手が続出します。それまでは絶対勝ちあがるという気持ちでいますが、下位決勝戦に次は無いので、これが最後と理解した上で臨むラストダンス。
もう一つはオナーダンス。決勝戦を踊り終えて優勝が決まったカップルが踊るラストダンス。歓喜とともに、4年間を締めくくる最幸のラストダンスをすることができます。
昨日の大会で、東京理科大の選手は、両方のラストダンスをしました。
優勝候補と目されながら下位決勝戦にまわったカップル、3年生の頃から決勝常連でありながら一度も優勝をしたことが無かったカップル。対照的な2組のラストダンスがあったのでした。
そんな4年生の姿を見て、悲しさと感動の涙が、多数の後輩たち、同期、OBOGにありました。
この光景を目の当たりにした後輩、特に1年生たちに大きな経験が受け継がれたと思います。20年前の私もそうだったように。
学生という限られた期間で行う部活だからこそ、終わりが決まっているからこそ、体験できること。
創部50周年記念となった本年、昨日で引退した4年生は言葉に表せられないくらいのことを残しました。そのことに、OBとして、そして治療人として、わずかながらですが関われたことに感謝します。
甲野 功
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