治療時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休診日:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

~おまかせ~

あじさい鍼灸マッサージ治療院は飲食店のような部分があると考えています。


単価が一回で3,000円~6,500円くらい。決して安くありません。人によっては贅沢な支出だと考える場合もあることでしょう。そのときは良くても、戻ってしまう。治療を受けるなら健康保険がきく病院に行けばいいのに。そんな意見があるかもしれません。


では、レストランではどうでしょうか。例えば、それなりのフレンチレストランに入りコースディナーにワインを付けたとしたら一人5~6,000円くらいかかることもあるでしょう。居酒屋で2時間飲み放題の飲み会に参加したら3,000円くらいかかるのではないでしょうか。
そのときは満腹になるが、どうせすぐにお腹が減るのだから、飲食店にお金を払うのは無意味だ、と考えるでしょうか。そうはならいないでしょう。美味しい料理を食べる体験に、居心地の良い空間に、気心の知れた仲間との交流に、お金を払うはずです。単に飢えをしのぐために利用するわけではないでしょう。

 

1回に支払う金額帯がこういったレストランや居酒屋と同じくらいなので、治療院と飲食店の共通点を探すことで何かのヒントになるのではないかと、普段考えています。

お寿司屋さんでたまに聞きますが、常連さんの大将のおまかせでというセリフがあります。


金額の上限を決めて(決めない人もいますが)、自分の好みを熟知した板前さんが、旬のネタやおすすめの寿司を、こだわりの方法(出す順番、ネタの選別、合うお酒)で出していくやり方。この場合、お客さんは板前のことを信頼しゆだねることになります。そうすることでプロが薦めてくれる寿司を効率よく食べていける、自分で種類を決める手間が省ける、新しい発見がある、といったことが得られるわけです。

 

そんなおまかせでを言われることが治療院でもあります。

 

こんなことがありました。


開業当初から来ている常連さんから連絡がありました。明日から旅行だと言うのに風邪をひいてしまった、5,000円くらいで収まる範囲で風邪の治療をしてください。そういう内容でした。幾つかの条件から効果が期待できるものを求められました。私のおまかせで

 

そのときの条件を挙げます。
・この患者さんは普段、30分3,500円の鍼治療をしている。
・誕生日割引ハガキ(500円引き)を持っている。
・うちには長く通われています。
・鍼治療ですが、身体に刺すことはせずに接触させる鍼しかしません。円皮鍼はできる。
・風邪をひいている。
・明日から旅行で、当然旅行を楽しみたい。
・5,000円で収める治療内容にする。
ここまでが事前に判明している条件でした。

 

この条件から、事前に、経絡治療でお灸をする作戦を立ていました。置鍼(鍼を刺したままにしておくこと)ができないので鍉鍼(体に刺さない鍼)で経穴(ツボ)を刺激する、風邪に効果がある場所にお灸をする、という作戦です。

 

患者さんが来院されて実際に診てみると、条件が増えました。
・咳込んでいて、身体が動いてしまう。
・発熱していない。
・虚実で言えば状態は実(余計なエネルギーが有り余っている状態)ではなく虚(正常なエネルギーが足りない状態)。
・お腹をくだしていた。
・腹診をすると冷たくて力が無かった。
・風邪を発症して3日目。
これらが実際に会って判明した新たな条件でした。

 

誤算だったのは咳をする際に思った以上に上半身が動くこと。これですと体にお灸を乗せるのが厳しくなります。お灸が倒れたり、火のついた線香が皮膚に触れたりする可能性があるからです。
体に乗せるお灸は足だけにして、他の部位は棒灸で近づけて温める手段を取ることに。

 

西洋医学では風邪は上気道炎、感冒と考えますが、東洋医学ではどこまで風邪(ふうじゃ)が身体に侵入しているか、段階を追って考えます。お腹をくだしたということは深い部分まで邪が侵入したと考えられ、厄介だなと思いました。明日までに良くなるように、とにかく補法(エネルギーを入れるやり方)でしようと決めました。
経絡治療とお灸での温熱療法にする事前の方針はそのままで、時間的な制限を加味して鍼灸治療を行いました。

この患者さんにとっては、初めて受ける手法でした。少なくとも私からの治療では。お代は、誕生日ハガキ割引を使った上で5,000円にしました。

 

このときは、おまかせにしてくれたので普段とは異なる方法を選択して行いました。こういったことができるのも個人治療院だからこそ。雇われの身では自由に値段ややり方を変えることができません。従業員を抱える院長の立場だったとしたら、イレギュラーの例を出すことで特例ができてしまい、全体の規律が乱れる要因になるかもしれません。


患者さんに信頼されて任されて、出された条件で最善と思われる、新しい手法を提案する。簡単なことではないですが、自らを試され、成長する機会になります。これも個人治療院の醍醐味の一つだと思います。

 

甲野 功