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~ある記事に対する反論~

先日、Forbes Japanに掲載れた記事がyahooニュースに転載されました。

読むと驚きと怒りがありました。
内容は
はり治療は偽物であり、決して受けてはならない
というもの。

 

鍼灸専門学校教員資格を持ち開業鍼灸師として、更に大学病院で鍼治療を行う立場としては無視することができない内容であったので、紹介しつつ個人の見解を述べたいと思います。

投稿者はSteven Salzbergといい、調べるとアメリカの計算生物学者及びコンピューター科学者のようです。

 

抜粋始め
オーストラリアの研究チームは5年前に医学誌「Medical Journal of Australia」に発表した論文で、数千種類もの医療行為を検証し、効果がなかったり、逆に人体に害を及ぼしたりする156種を特定した。ここでその全てを紹介することはできないが、中でも特にばかげているのが、はり治療だ

 

 

論文で問題視されたはり治療はいずれも、妥当性がゼロであるのにもかかわらず、はり師たちによって推奨されている
抜粋終わり

 

記事でははっきりと鍼治療は妥当性ゼロと断言しています。

 

ここで私が気になるのは、記事の著者、当の本人が調査したわけでは無いということ。

5年前の論文を参考に持論を展開しているように読み取れます。また、その論文(執筆者:Adam G Elshaug、Amber M Watt、Linda Mundy、Cameron D Willis)を検索しgoogle翻訳して見ましたが、数千の論文を検索ワードでソートしただけのようです。

記事では個別に効果が無いとされるはり治療10種類を抜粋しています。それが以下の通り。

抜粋始め
1.妊婦に対するはり治療。論文はこう指摘している。「陣痛誘発のためのはり治療は、効果または弊害を証明する十分な証拠がなく、推奨されない」
2.子宮類線維腫に対するはり治療。「子宮類線維腫に対するはり治療の効果を示す信頼できる証拠は存在しない」と論文は指摘している。子宮類線維腫については効果ある治療法が多数あり、はり治療で治癒できるかもしれないという主張はナンセンスだ。
3.過敏性腸症候群(IBS)に対するはり治療。先行研究からは「IBSへのはり治療は、総体的症状、痛み、生活の質において、偽薬(プラシーボ)と比べ有意な効果はない」ことが分かっている。
4. 滲出性中耳炎(OME)に対するはり治療。これは子どもによく見られる病気だが、過去の研究でははり治療の効能は確認されず、「OME患者の治療に用いられるべきではない」との結論が出されている。
5.男性における下部尿路の症状に対するはり治療。これも効果はない。いったいどこにはりを刺すのだろうか…。
6.高ビリルビン血症に対するはり治療。「黄疸(おうだん)」とも呼ばれるこの症状は、新生児に多くみられる。生まれたての赤ちゃんにはり治療を行うなど、率直に言って原始的で残酷だ。論文は「高ビリルビン血症に対するはり治療を支持する証拠は存在しなく、NICE(国立医療技術評価機構)はこの治療法をこの人口層に使用しないことを勧告する」と結論している。
7.手根管症候群に対するレーザーはり治療。複数の先行研究で、効果がないことが確認されている。うち一つの研究では、「さらに厳密な研究が必要とされる」との結論が出されているが、望みの薄い治療法の検証に時間をかける必要はないのではないか。
8.うつ病に対するはり治療。多くの研究が存在するが、大半に「高い偏りのリスク」があり、全てにおいて、はり治療はうつ病に効果がないとの結論が出されている。なんとも憂鬱な話だ。
9.変形性関節症に対するはり治療。驚くべきことではないが、変形性関節症におけるはり治療には、プラシーボ以上の効果はない。
10.ベル麻痺(顔面神経麻痺)に対するはり治療。8件の試験が行われたが、いずれも信頼できる効果は確認されなかった。患者にこれ以上の試験を強いるのは残酷かつ非倫理的だろう。
抜粋終わり

 

細かいところを専門家として突っ込むときりがないのですが、そもそも鍼治療の既往とは思えない症例があります(例えば陣痛誘発とか申請時の高ビリルビン血症とか)。ベル麻痺については日本では多くの症例報告があり、わずか8例で結論つけるのは随分乱暴に感じます。男性の下部尿路に対していったいどこに鍼を刺すのだろうか、とありますが遠隔治療や本治などを知らない人が行ったのでしょうか。
他にも鍼灸師ならば気になることは点が他にあるでしょうし、まあ妥当だと思う症例もあるでしょう。

 

そもそも問題はオーストラリアの論文を元にしているところ。
鍼治療の先進国は、“今のところ、一応”中国、日本、韓国とされています。古来より鍼を扱ってきた3国です。せめて著者本国の米国の論文なら分かるですが、なぜオーストラリアの研究結果を取り上げたのでしょうか。オーストラリアの機関が全世界の、特に中・日・韓も含めて、論文を全て集めたとも考えられますが、そうだとするとベル麻痺の症例が少なすぎます。
一方、鍼が盛んな国では鍼治療に携わる人間が多くいるためバイアス(偏り)がかかって正確なデータにならないという理屈かもしれません。ただ、個人的には感覚としてはアメリカで歌舞伎の研究をし、歌舞伎そのものを評価しているような感覚に襲われます。研究するのは構いませんが、それで一般的だと結論つけるのはおかしいのではないかと。

 

最後に著者はこう結論付けているようです。

 

抜粋始め
はり治療に関する研究論文は今後も出てくるだろうが、新たな発見は期待できない。人々は、この時代遅れのえせ科学について、いい加減目を覚ますべきだろう。
抜粋終わり

 

理屈が通らないのですが、記事ではあくまで10の疾患に対して鍼治療に効果が無いと述べております。他にも効果があるとうたわれている、としておきながら、それらは全て嘘と言わんばかりの表現。挙げた10疾患に関しては納得できる部分もあります。陣痛誘発や新生児の高ビリルビン血症に鍼が効くとは思えません。そもそも鍼をしてみようとは私は思いません。その10疾患が効かないというオーストラリアの論文結果に対して、すべての鍼治療はえせ科学であり、効果が無いと結論つけているのが暴論だと感じるのです

 

私も東京理科大を卒業している身。科学に対する見解が少しはあると自負しています。科学において物事を否定するには、それを証明する根拠(エビデンス)が必要です。
真の科学者はUFOや宇宙人などいないとは言いません。存在しないことを証明できないからです。
<宇宙人がいたとしても地球に来るまで科学が発達しているとは考えられない、それほど宇宙は広大だ。宇宙人の存在を証明する決定的なデータは見つかっていないため、存在しないと考えるのが妥当であろう。>
と表現します。

 

少なくとも科学者として鍼治療をこの時代遅れのえせ科学と断言するのならばそれ相応の研究結果を出してもらいたい。せめてWHO(世界保健機構)が認めた疾患に対して追試験を行い、ある程度のサンプル数を得たうえで統計処理を行い、効果なしという実験結果を提示するべきです。そうでなければ、著者が科学者だとしても記事は科学的とは言えません。

 

最後にこの記事がいわゆる炎上マーケットを狙っているのでは、という疑問もあります。
<海外の科学者が過激なことを言っているから記事にすれば話題になり閲覧数が増えるだろう。海外の記事ならば責任は向こうにある。いざというときのために「鍼治療」ではなく「はり治療」と表記しておけば言い訳できるし。>
そのような思惑を感じるのは考えすぎでしょうか。

 

私は記事のタイトルやえせ科学といった言葉だけでイメージがつくのが怖いです。逆のプラシーボ効果です。本当に鍼に効果が無い物ならば社会から淘汰されるべきです。えせ科学というのならば現代科学に基づいた検証を踏まえた上で。こんなものは非科学的だ、と思考停止に陥って結論つけるのではなく。

 

悠久の歴史を行き抜き、現代でも残っている鍼というものを馬鹿にされているようで遺憾です。

 

甲野 功

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コメント: 2
  • #1

    和楽堂整骨院 (木曜日, 27 4月 2017 18:51)

    失礼します。
    数例の症例や病名についての否定的な論文を集め、斜め読みした結果ではり治療を全否定するなんて信じられません。
    否定するなら論文内容を自身が再現し、統計解析した結果を基にするなどエビデンスのある意見をするなら解かりますが・・・
    掲載するサイトもいい加減なのでしょうね。
    下手に騒ぐよりは治療する側がしっかりとエビデンスに基づいた治療効果をどんどんと発表していく方がよさそうですね。

  • #2

    あじさい鍼灸マッサージ治療院 甲野 (金曜日, 28 4月 2017 09:55)

    和楽堂整骨院様

    コメントありがとうございます。
    おっしゃられる通りで記事そのものが科学的ではないと思います。

    臨床で大きな効果が出たと症例発表しても自己申告ですからエビデンスは?と言われ、実験プロトコルをしっかりした基礎研究では実際の治療にはほど遠くなります。ここのジレンマを感じます。