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~中医学~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 石学敏教授のセミナー資料
石学敏教授のセミナー資料

 

日本における鍼灸界には、3大流派と言われるものがあります。経絡(伝統)派、中医学派現代派の3つです。

 

鍼灸師ではない方にとって、鍼灸とはどれも一緒だと思っているかもしれませんが、内容はかなり違いあります。どれも源流が同じなのですが、鍼灸という技術が長い時間をかけて進化、変化するにあたり枝分かれをしていきました。少々イデオロギーの違いにもなります

 

とても簡単に言えば、伝統的な手法を守るのが経絡派で、現代医療に即した考え方をするのが現代派と言えます。これは鍼灸師の側からすると、とても稚拙な区分ですが、一般患者さんに説明するにはこれくらいに留めておきます。

 

私個人の鍼灸は、第一選択が現代派、第二選択が経絡派、第三選択が中医学派、という感覚です。もちろん症例、症状、状況によって適時変えますが、基本はこの順番となります。
鍼灸を受ける患者さんの多くはこのような派閥があること自体知らないので、自分が受けた鍼灸師のやり方が「鍼灸の全て」になってしまいがち。その「患者さんの常識」(偏った知識)が臨床でトラブルになることもあります。
経絡と現代については既に触れているので、今回は残りの中医学について、少し書いてみます。

 

中医学とは、大雑把に言えば中国で行われている伝統医療(鍼灸および湯液)となります。
中国に源流を持つ、我が国のいわゆる東洋医学は日本で風土、文化に根付いて日本独自の伝統医療として発展したため、中国のものと若干異なった部分があります(日本における伝統的な鍼灸が「経絡」と便宜上考えてください)。
なお、中国の伝統鍼灸は2011年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。ここに中国は他国のものとは違って特別である、という国の意思が見え隠れします。

 

歴史的に中国が鍼灸の発祥であることは間違いありません。アイスマンと呼ばれるミイラがヨーロッパで発見されたことで、起源の定説が崩れる可能性がゼロではありませんが、体系を完成させたのは中国です。その理論・技術が日本に伝わり、日本でも鍼灸が盛んになりました。

 

まず日本の鍼灸を少し見ていきましょう。

大陸よりも高温多湿である日本では、細い鍼、優しい刺激、腹診が発展しました。江戸時代には管鍼法という大きな発明が生まれました。
そういった独自性がある一方、真面目な気質の日本人は古典と言われる古い文献を残し、手法を守ってきました。鍼灸のバイブルと言える「黄帝内経」というものがありますが、その現存する最も古い写本は京都にあると言われています。

 

対して中国では、20世紀の文化大革命の際に教養層や伝統への大きな反発が起こり、多くの伝統的な文献が失われ、さらに技術・知識も捨てられたとされています。

そのため、中国の鍼灸を研究する人間は、国交正常化する前から鍼灸師同士の交流により、日本に残された古典文献を借りたり、勉強に訪れたりしていたと言われています。大元は中国でありながら、伝統を守ったのが日本という奇妙な逆転現象が起きたと言われています。
「言われています」と断定しないのは日本側の主張であり、中国側はそのようなことは思っていない場合もありますので、一つの意見として捉えてください

 

一度伝統を捨てた中国は、ある意味しがらみから解かれ、現代医療を鍼灸に取り入れることに躊躇がなくなります。

これは、ある中医学派の先生の意見ですが、「中医学は西洋医学における薬の処方の影響を受けている」と言っています。伝統的な鍼灸ではどちらかというと、気の流れ(経絡)を意識して治療を行いますが、中医学ではツボ(経穴)を意識した特効穴治療という考えをすることがあります。それは、この症状にはこのツボ(経穴)を使う、と1対1の対応をさせたもの。また、いつも同じ経穴を使うと経穴が疲れるので使う経穴を変える、という薬の処方のように経穴を選択するというものです。もちろん中医学には経絡(気の流れ)を意識した考えがあるのですが、一つの特徴としてツボ中心の考えを持つということが挙げられるのです(経穴治療、特効穴治療)。

 

私が鍼灸専門学校時代の話です。

ある先生は「この症状にはこの経穴が効きます、特効穴です。」と言いました。

別の先生は「鍼灸に特効穴など無い。気の流れで見るから、その都度経穴は考えるべきだ。」と言います。

当時は意見が全然違う、何が正しいのか?と思いました。これは今思うと、前者は中医学派で後者は経絡派の先生だったのでしょう。


中医学派に限らず多くの鍼灸師が経穴治療(ツボで考える)が広まってきたときに、これではいけないと伝統派と呼ばれていたグループは経絡治療(気の流れで考える)と名称を用いたそうです。

 

一般の患者さんにはどうでもいい話でしょうが、鍼灸師同士ですと中医学と経絡では相いれない部分がここでして、論争になることがしばしあります。経絡派の勉強会で「それは中医学の考えだよ」と講師に指摘されたり、中医学の先生が「経絡は浅く刺すだけで、それで本当に効くのかね」と発言したりと、各々の主張があるのです。もちろん全員が全員こうではありませんが。


ですから、もしも鍼灸を受ける機会があり、それとは別の先生に受けた鍼灸の技法や考えを話して、否定されたり批判されたりすることがあったら、業界の都合があると察してくださいね。ムキになる先生もいらっしゃいますので。

 

 

中医学の一番の利点は西洋医学との連携です。中国では西洋医学の医師と伝統医学の中医師が存在し鍼灸と医療機関との連携において、日本では考えられないくらい取れています。国を挙げて鍼灸を世界に発信するべく、医療と連携させる取り組みがなされています。
日本では一部の大学病院で、少しだけ鍼灸が入っていますが肩身は狭いです。医師にとって鍼灸はまだまだ理解しづらい分野です。これから変わっていくかもしれませんが、それが3年間大学病院で働いた実体験ですね。

 

中医学が医師と連携している分かりやすい例が高次機能障害に対しての、鍼灸臨床例です。(その例として以前紹介した醒脳開竅法があります。)脳卒中の急性期に鍼治療ができる環境は、日本ではほとんどありません。中国では画像診断をしながら鍼治療の経過観察をする場があります。


それ以外にも市井の治療院ではお目にかかることが少ない重篤な疾患に対する臨床報告が多数存在するのです。日本では鍼灸治療が選択されないであろう重篤疾患の。
西洋医学との連携という意味では、とても優れていると言えるのではないでしょうか。

 

最後に私個人の考えです。

どんな鍼灸でも患者さんに効果があれば良いと考えています。もともと鍼が嫌いでしたから、学派に強いこだわりがありません。技術的なこと、知識的なことを踏まえると現代派、経絡派の順で患者さんに効果が出せると思うからです。鍼灸という伝統的な技法が広く認知されることを願います。

 

甲野 功

 

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