治療時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休診日:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

~陰陽論~

娘とプールに行ってから日焼けで背中の皮が剥けています。皮が剥けるくらい日焼けをしたのはいつ以来でしょうか。

 

日焼け止めを塗っていた娘も皮が剥けないまでも日焼けしました。娘が自分の腕を見て、日焼けしているところとそうでないところがあるとつぶやきます。それを聞いたときに鍼灸師のサガでしょうか、陰陽の話をしました。

日によく焼けているところが陽経、そうでないところが陰経の経絡が流れているのだよ、と

娘は何のことやらさっぱり分かっていませんでした。

鍼灸理論の根幹は陰陽論五行説(両者を合わせて陰陽五行論)にあります。

 

陰陽論は日に当たる場所、日陰になる場所から生まれた思想、哲学だとされます。農業をする上で日向と日陰は重要であり、鍼灸が生まれた古い中国では農業が中心であり、そこから陰陽論は生まれたと推測されているのです。

陰陽論は万物を陰と陽に分ける考えです。一切の現象は正と反の二つの面を持つと考え、基本的な観点としました。


とは、中心、暗い下、収縮、黒、冷たい、下降、といったイメージ。対して、とは、外周、明るい、上、発散、白、温かい、上昇、といったイメージです。
項目を細かくしていけば無制限にありますが、大雑把にはこれらのイメージで陰陽を分けます。太陽は陽、月は陰。山は陽、海は陰。火は陽、水は陰。何となく分かるでしょうか。
万物が陰陽に分けられますから、女性は陰・男性は陽、右は陰・左は陽、偶数は陰・奇数は陽、と一見なぜそのような分け方をするのか不明なものも陰陽に分けてしまいます。分け方の理由はここでは書きませんが、意味があって陰陽が決まっています。

 

女性が陰、男性が陽と言うと気分を害する女性がいました。陰とは何事か、と。陰は、日陰者、根暗といった悪いイメージがあるようです。
しかし鍼灸の陰陽論ではむしろ陰の方が陽より上、重要であると考えることが多いのです。中心にあって重要な機能を持つもの、陽は陰の周りにいて陰を守るもの、こういった考えをします。昔は女性が家にいて家族を守り、男性が外に出て働いていたから、このような陰陽の分け方をしたのでしょう。


中国の古典には『陰は内にありて陽の守りなり。陽は外にありて陰の使いなり。』という文があります。今でも旦那さんは満員電車に揺られて必死に働き、給料は全て奥さんが管理されわずかな小遣いをもらう、家庭の中ではペットの飼い犬よりも立場が下、というケースもあるようで。そう考えると陽だから優れているということにはなりません。
鍼灸では陽がやられる分にはそれほど問題視しないが、陰までやられたら大ごとだ、という考え方があるのです。

 

陰陽の関係を表す陰陽太極図というものがあります。
誰しも目にしたことがあるはずです。韓国の国旗に入っています。韓国国旗では上部が赤で陽、下部が青で陰となります。周囲の棒も真ん中が切れているのは陰、切れていないものは陽を表します。サーフィンの有名ブランドにも採用されていますね。

 

少し違った視点で陰陽論を紹介しましょう。
かつて大ヒットした少年漫画の金字塔北斗の拳という作品があります。名前くらいは女性でも聞いたことがあると思います。この北斗の拳、初期設定は陰陽論に基づいています。


北斗の拳は主人公ケンシロウが北斗神拳という拳法を使い、南斗聖拳を扱う敵(シン)と戦います。陰陽に分けると北が陰、南が陽となります。


すなわち北斗神拳は陰、南斗聖拳は陽。


北斗神拳は陰拳なので一子相伝、すなわち一人にしか奥義を伝えず分派を認めません(のちのち別の流派がでてきますが)。対して南斗聖拳は陽拳なので108派の流派に広がっています。

北斗神拳は身体を内部から破壊することを真髄とし、南斗聖拳は外部から破壊することをそれとします。作中一番初めに出てくる大技、北斗百裂拳は敵を拳でボコボコに殴っているように見えて、実は各々手の形を変えて相手のツボ(経絡秘孔)を突いています。くらった敵は高速で何かをされ、かつ痛くないので状況を把握できません。もう済んだとばかりに背を向けるケンシロウに、まだ終わっていないぞという態度を取ったときに、かの有名な「お前はもう死んでいる」というセリフがケンシロウの口から出ます。すると敵は身体が中から破裂して死亡するのです。対して、南斗聖拳では敵をいとも簡単に切り刻んでいきます。外部破壊です。

 

このように初期段階の北斗の拳は忠実に陰陽論に則っています(話が進むにつれて崩れていきますが)。これは原作者の武論尊氏が鍼灸の経絡図を見て話を思いついたためだと言われています。「経絡秘孔」自体は創作ですが、世間一般に『経絡』なる言葉を知らしめたのは北斗の拳の功績と言えます。

 

陰陽論で大切なことは万物を陰陽に分けることではありません。陰陽が変化しうることが大切なのです。
陰の中には陽があり、陽の中にも陰がある。完全なる陰、完全なる陽はあり得ません。陰は陽に変わることがあり、その逆もまたしかり(陰陽転化といいます)。『陰極まれば陽となる』という言葉あり、陰の属性が過ぎると反転して陽に変わることがあるのです。太陽が正午に最も高く照らし、そこから西に沈んで夕方を経て夜になる。このように陰陽は変化するし、入れ替わるのです。
男女で見れば陰である女性も、女性だけの集団ができれば、その中で陽のメンバーができるのです。大きなイベントが終わって燃え尽き症候群に陥るのは陽が極まり陰に転化したということです。

 

陰陽論は万物を陰陽に分けますが、それは絶対的な区分ではなく相対的なもの。お互いが依存しあい、関係を持ちながら、ときに属性を変える事すらある。その柔軟性が大切であると私は考えています。陰陽論を知っていると物事を見る目が少し変わります。

 

甲野 功

こちらもあわせて読みたい

治療技術について書いたブログはこちら→詳しくはこちらへ