治療時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休診日:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

~「何で言わないの?」って何で言うの?~

臨床現場では患者さんが本当のことを言いません


嘘をつくわけではありません。治療に必要な情報を教えてくれないことが往々にしてあるのです。

 

以前も書きましたが、予診票の記入にし問診をした時点では大事な情報を教えてくれないことがあります。それから患者さんの体を触っていき、あん摩指圧なり、鍼なり、その他の治療方法なりを実施していくと、段々重要な情報が出てくるのです。

ずっと通ってくれている患者さんでも、ふとした会話の流れで「実は過去にこういう経験がありまして」と語りだすこともあります。内心、おいおいそれは先に言ってくださいよ!と叫ぶこともあるほどです。それくらい治療に関係する内容であったりします。

 

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。理由は幾つか考えられます。

 

信用していない
→新規患者さんでは、こちらどのような人間か分かりません。予診票に住所や年齢すら書いてくれない人もいます。警戒して重要なこと(プライベートに関わること)は話したがらないのです。このような場合は治療を通して心を開いてくれると新たな情報を出してくれるようになります。

 

主訴と関係が無いことだと決めつけていた
→当たり前ですが、患者さんは医療知識が我々医療従事者よりも乏しいため、このことは話さなくてよいと思うことがあります。

例えば鍼灸を受けたいという患者さんがいて、重たい糖尿病を患っていたとします。この場合糖尿病は感覚神経を鈍くさせることがあるのでお灸には注意が必要です。

肩こりで鍼を受けたいと来院された方が、心房細動の既往があるため血液凝固剤を常用していることを話さなかった。この場合も鍼治療では注意が必要なのですが、患者さんにとっては関係の無いことだと思っている場合があります。

 

個人の趣味、嗜好に関すること
→仕事はさほど忙しくありません、と言いながら、毎日深夜までスマホゲームに熱中している。真冬でも毎日アイスを食べることは欠かさない。このような方は当人にとって当たり前の事かもしれませんが身体に影響を与える要因になり得るのです。

 

女性特有のこと
→私が男性ですので婦人科系のことは必要以上に話したくない方もいます。あくまで例ですが、不妊治療をしていてホルモン剤を投与している、などの場合ですと知っていると知らないでは治療方針に大きな違いが出ます。

 

上に挙げた要因により、治療する上で本当に必要な情報を得られないまま、治療に入ることが、ままあります。ですが、私はこれは当然の事だと割り切っています

 

新規患者さんならば、初めて会った赤の他人に体を触らせるのですから警戒することは仕方ないこと。その代わり、治療をしながら体に手を当てることで信頼関係が生まれ、そこから大切な情報を得やすくなります。
心理カウンセラーとの違いは手で触れる、すなわち「手当て」ができること。物理的に距離がゼロになることで心を開いてくれることが多いので、本格的な問診は触診を兼ねてあん摩指圧で行う、くらいの気持ちでいます。

 

大切なことは重要な情報を事前に話してくれなかった患者さんを責めないことです


何かしら不調があって治療院に来院される患者さんに、「そんな重要なこと、何で言わなかったんだ?!」と怒ることは違うと思うのです。術者側の立ち振る舞いで警戒されたり、きちんとした質問(問診)ができていなかったりすることが原因なのですから。
患者さんを怒るというのは責任転嫁、上手く行かなかったときに相手に押し付けたいという心理があるからではないでしょうか。


同じような言葉で「なぜこんなに悪くなるまで来なかったんだ?!」というものもあります。医師、特に救急外来ならばいた仕方ないこととは思いますが、患者さんには来たくない理由があったはずです。頭ごなしに問い詰めても何も良くなりません。これも処置が大変になるから困るという術者側の都合が大きいのでは。

 

子育てでもそうです。何で言わないの?と怒鳴りたいことが多々あります。しかし、子供にとっては言葉が上手く出ないのです。頭を整理して言葉にできなくて黙ってしまいます。そのときに何で?と強く聞いても、それは問いではなくこちらのぼやきに過ぎません。


また、新人社会人が習う「ほうれんそう」もそうです。報告、連絡、相談をきちんと上長、先輩にしましょうということですが、これは本来、上長が部下からすぐに報告、連絡、相談を受けられるような環境作りをしなさいという戒めだったそう。立場が下の部下が問題をすぐに報告できるように上長が気を遣いなさいということらしいのです。

 

「何で言わないの?」という言葉は問いのようでいて、実質問いになっていないことが多いのではないでしょうか。少なくとも私は臨床現場で患者さんに使わないようにしています。

 

甲野 功