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~先生と生徒~

先日のALL東京理科大学舞踏研究部OB会イベントでは、例年と違った趣向のデモンストレーションが行われました。

 

毎年、最上級生となる4年生のカップルがOBOG参加者及び下級生を前にして、各組1曲デモンストレーションを披露するのが恒例です。
今年も、都合で行えなかった2組を除く6組が行いました。そのうち3組がスタンダード部門の選手なのですが、偶然にも全員同じプロの先生に習っています。その先生とは、今年のOB会にプロデモンストレーションを依頼した、三森秀明・酒井良美組なのでした。


三森秀明・酒井良美組はどちらもALL東京理科大学舞踏研究部出身であり、同期同士です。両方が卒部生というのは、現役プロ選手では、唯一の存在。二人とも大学で競技ダンスに出会い、基本を学びました。卒部後にカップルを結成し、アマチュア選手として経験を積んだのちにプロ転向し、JBDF東部総局スタンダードA級まで上っている現役競技選手。

 

奇しくも同じ理科大舞研という共通項の中で、先生と生徒(師匠と弟子)が同じフロアーでデモンストレーションを披露することになったのでした。運命を感じる出来事でした。

 

3年前、不祥事により舞踏研究部は東京理科大学から部活動停止処分を受けました。一時は廃部の危機もありましたが、当時の現役幹部の奔走により、数カ月の活動停止期間で済むことになりました。
それでも、競技会に出場できない、合宿に行けない、練習会を開けない、自主練習を大学でできない、という状況。春に入部した1年生を何とか辞めないように引き留めておかないといけませんでした。そのときの1年生が現在の4年生にあたります。上級生やOBOGが部に残ってもらうよう尽力しました。

 

そして停止処分が明けた11月の競技会に、プロデモンストレーターとして呼ばれたのが、偶然にも三森秀明・酒井良美組でした。母校の先輩が踊るのに、大学そのものが出場停止では話になりません。何とか間に合った状況。大会そのものは、まともに活動できなかったわけですから当時の1年生は早々と敗退してしまい、面白くなかったことでしょう。そんな1年生にとって、広いフロア―をたった一組で踊り、千人規模の観客を魅了する“先輩方”はとても格好良く見えたようでした。

 

そこから年が明けて、これから2年生になる子たちのスタンダードとラテンに専攻分けが済み、プロの先生に習うことが解禁される4月を前になった頃。
部活動停止明けで見た三森秀明・酒井良美先生に習いたいという希望が出て、多くの新2年生が三森・良美先生を選びました。それまでの先輩たちは別の先生に主に習ってきたので、新規の先生を開拓するのは冒険でもありました。初めて習う1期生ですから情報がありません。
それでも新しい道を今の4年生は選びました。

 

今のスタンダード4年生は色眼鏡抜きに、素質が無い子ばかりでした。
ただでさえ部活動停止で一番練習すべき夏を棒に振っています。センスも身体の強さも例年をかなり下回るレベルでした。三森秀明、酒井良美両先生は私が3年生の時に1年生だった直の後輩。ダンスを始めた頃がよく知っている間柄。これから入る理科大の子たちは本当にポンコツばかりだから何とかしてくれ、と連絡を入れたくらいでした(実話)。

 

そのどん底の時期に入った当時の1年生が、理科大舞研でダンス人生をスタートさせてA級選手になった先輩ダンスを習う。

現実は小説より奇なりと言いますが、本当に数奇な巡りあわせだと思いました。11月の大会にプロデモンストレーターとして呼ばれなければ、きっとそれまで先輩が習っていた先生のところに行ったであろう。それ以前に、もしかしたら部活そのものが廃部になっていたかもしれない。

 

ポンコツばかりだったあの頃の1年生は、三森先生、良美先生の指導のもと、4年次には全員大会で入賞できるまでに成長しました。最高学年としてOBOGに踊りを披露するときに教えている先生もデモンストレーションをする。色々な偶然がまた重なりました。これも巡り合わせ。

 

このことを知ったのか、今年のプロデモンストレーションは後輩への、現役生への、メッセージ色が強いものになりました。曲の合間には事前にアンケートを取った後輩への指導に関するコメントが司会により紹介されました。また4年生の弟子たちによるコメントを出すコーナーがありました。後期の残り少ない大会に向けて、先生の前で勝利を誓う(誓わざるおえない?)生徒たち。
このような進行になっているとは知りませんでしたから意外過ぎて驚きます。

 

また、三森秀明・酒井良美組も動画撮影を許可しました。
本来プロ選手のデモンストレーションは商品ですから、無償で撮影することは禁止であるのが普通です。それを後輩のために撮影許可をしたのです。更にはドレス・衣装を4曲全て変えてデモンストレーションをしました。ドレスの消耗度を考えると、(私は謝礼金額を知っている立場なので)あまりに割に合わない大盤振る舞い。プロ選手とちてよりも大学の先輩として踊っていることを感じました。

 

二人が入部してダンスを始めた頃から知っています。あれから約20年が経過してこのような風景が見られるとは思いませんでした。4年生以外にも3年、2年も生徒がいますし、習っていない現役生にも伝わる内容だったでしょう。ダンスを続けて、部活が続いて、色々なタイミングが揃ったイベントでした。現役生は何かを感じ取ってもらいたいものです。

 

追記:
酒井良美先生は学生時代ラテン選手でした。1年生の後半からラテン中心の練習をしていたので、彼女と踊ったのはほとんど1年生の頃しかありません。
卒部して、これからスタンダードを真剣にしていきます、今度踊ってください、と言われました。
アマチュアで成績を残し、プロ転向した直後に大会を見に行ったことがあった。まだC級だったと思う。
学生の競技会にプロデモンストレーターとして呼ばれることを知ってスタジオに遊びにいった。そのとき、踊りましょうと言われたけれど、プロA級の先生となった彼女はもう簡単に踊れる相手ではないと思った。
今年のOB会、デモンストレーション後に主催者の計らいで、二人がダンスタイムに入ってくれた。ドレスを着たままで。そのときワルツを良美先生と踊った。当たり前だけどとてもつもなく上手だった。
今度踊ってください、と言われてから軽く10年以上経過しているけれど、踊ることができて本当に良かった。

あの、ヒデとよっちゃん、が多くの生徒を抱える先生になっていた。自分も頑張ろう。

 

甲野 功