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~ダイレクト課金者 「革命のファンファーレ」を読んで~

ビジネス書籍でヒット作となった、西野亮廣氏の著書「革命のファンファーレ」。鍼灸業界でもこの本から学ぶ人が出てきており、一部で盛り上がっています。
本書の内容を私のいる治療院業界(もしくは鍼灸業界)に置き換えて考えることで様々なことが見えてきました。実際に行動して効果が出そうなこともありました。そのことを何回かに分けて書いています。

 

第二回目はダイレクト課金者について。

 

前回の人気タレントと認知タレントの違いに関わることです。「革命のファンファーレ」の一部を抜粋してみましょう。



 ベッキーとゲスの極み乙女。が例として分かりやすい。
 不倫をしても活動を続けることができたゲスの極み乙女。に対して、ベッキーの活動が、たった一度の不倫で完全に止まった理由は、彼女が「認知タレント」で、ファンを抱えていなかったからに他ならない。
 スポンサーが離れ、広告以外の場所でお金を稼ぐしかなかったわけだが、ファン(ダイレクト課金者)がいないからお金を生み出すことができない。
 テレビタレントとしてリクエストに徹底的に応え続けた結果だ。
 現代のテレビ広告ビジネスの、最大の落とし穴だと思う。
』 

 

同じ芸能人だからこそ書ける、そして書きづらい内容です。とても的を射ていると思いますし、私はこの文章から芸能界の構造を知りました。そして治療院業界にも関係することだ!と肌身に感じています。

 

前回のおさらいですが、「革命のファンファーレ」の中で西野亮廣氏はベッキーさんを<認知タレント>、ゲスの極み乙女。を<人気タレント>としています。その差は、ゲスの極み乙女。には信用と人気がありファン(ダイレクト課金者)がいることだ、としています。騒動当時の知名度は間違いなくベッキーさんの方があり、多くの大企業CMに出演し、好感度が高いタレントでした。所属事務所の稼ぎ頭であり、ベッキー班なる部署もあったそうです。
それだけ認知されていても、直接お金を払ってくれるファン(=ダイレクト課金者)がいないことが<人気タレント>ではないということ。この点を指摘していることが重要です。

また大事なことは、直接お金を払ってくれる人をファンと定義していること。


もちろんベッキーさんにはあの騒動以前には多くの“ファン”がいたことでしょう。ただこの“ファン”はテレビで見るのかが好き、広告になっても不快ではない、といった程度の人が大多数だったはずです。対してゲスの極み乙女。については固定ファン、すなわちライブに足を運ぶ、CDやグッズを購入する人が存在したとしています。広告主からお金を頂いたわけではないことが、経済活動を続けられたポイントだと西野氏は指摘しています。

この見方がとても斬新でした。


よって、敢えて今回のテーマはファンではなくダイレクト課金者としました。経営を考えるとファンという言葉ではぼんやりするからです。誰が直接お金を支払うのかを考えることが大切です。

 

私はもちろん当てはまりますし、生業として鍼灸なり治療業なりをしている人にとって、施術対価を支払ってくれる存在は大切です。俗に言う「飯のタネ」というやつです。それをとても生々しい言い方にすると「ダイレクト課金者」になります。

 

ただしこのダイレクト課金者は同じ鍼灸師、治療家でも対象が変わります。

 

独立開業鍼灸マッサージ師である私にとってダイレクト課金者とは来院される患者さんに他なりません。来ていただいた患者さんに治療行為を行い、その対価として料金を頂いています。お金を支払う人が患者さんの保護者である場合がありますが、原則治療を受けた患者さん本人が支払います。次回書いた「信用」に繋がることですが、患者さんというダイレクト課金者がいるということは大きな財産でありメリットです。

 

これが勤務鍼灸マッサージ師や雇われ院長だった場合は状況が変わります。
同じように患者さんに治療行為を行っても、給料を支払うのは雇用主になります。患者さんの施術料金が鍼灸師の手元へダイレクトに届くわけではありません。給料という形でお金を支払うのは院長であったりオーナーであったりします。これらがダイレクト課金者にあたるのです。

 

ダイレクト課金者が患者さんではないと何が起きるかというと完全な患者さんファーストとはなりえません。
私は患者さんから直接現金を受け取り、それを元に経営しているので患者さんの事もお金もとてもありがたく感じます。目の前の患者さんを大切にしようと心底思います。
ダイレクト課金者がオーナーや院長だった場合、どうしてもそちらの意向に沿わないといけません。時に患者さんのためと考えて起こした行動があだになることがあります。患者さんは喜んでくれているのに、咎められる。例えば自分にしかできない技術を使ったとき。院長が理解できない、把握できない、他のスタッフには再現できない、などの理由からできないことが過去にありました。
内容な違いますが似たようなことはクリニックや病院で勤務しているときにもありました。すごく患者さんに不利益なことをしているな、と心の中で思うことを。

 

現金なことを言えば、患者さんよりも給料を支払う人間に従うことになります。「患者さんのことを考えて」と言われても、“そのように言っている院長もしくはオーナー(=ダイレクト課金者)”の指示に従っていることになるのです。
そうなるとどこかで矛盾が生じてきます。かつての私は矛盾が大きくなり過ぎて職場を変えました。患者さんよりも院長に集中しないといけない状況になり過ぎたからです。

 

ビジネス書籍を読んでいると多々見受けられる「日本企業は顧客目線がない」というワード。顧客目線が無いのに企業が成り立つのか?と疑問に思うことがしばしばありました。ただ、それはここ数年の個人事業主だから湧き出る感想であり、会社員時代や勤務時代を思い返せば顧客(患者)よりも上長への報告や会議資料作成の方に視線が向いていたことを考えれば仕方のないことでしょう。なんせ顧客に食べさせてもらうというよりも企業(組織)に食べさせてもらっていると思いがちになるわけです。

 

鍼灸院ではあまり該当しませんが、接骨院や医療機関で重要なことが保険適応についてです。治療行為に健康保険が適応されて患者さんの窓口負担が減るというものです(鍼灸院でも保険適応疾患はありますが)。
日本は国民皆保険制度で全員が原則何かしらの健康保険に加入することが義務付けられています。


接骨院の急性外傷の処置や病院・クリニック等の医療機関における医療全般に保険適応があります。保険請求業務を行い保険者(健康保険を運営する組織、自治体や企業)からの入金で運営を回しているところにとっては、ダイレクト課金者が保険者になります。言い換えれば保険システムがダイレクト課金者にあたります。窓口でお金を支払う患者さんではありません。窓口で支払われる0割から3割くらいの自己負担金よりも遥かに大きな額を請求していますから。

 

そうなると大切にすべき対象がずれてくることがあります。極端なことを言えば来院される患者さんよりも「患者さんの持つ保険証」の方が大切になるのです。
どの医療機関でも保険証を持っていない人には態度が変わります。表に出さなくともスタッフの本音、病院の本音は違います。とりっぱぐれがあるかもしれませんから実費全額を現金で支払えないなら帰ってください、が本音です(ただし生活保護を受けている人はまた別です)。


そしてダイレクト課金者である保険システムには逆らえません。患者さんに負担になることでもそれに従わないといけないのです。保険請求できなくなったら立ち行かなくなりますからです。医療機関や保険治療メインの接骨院に勤めていると、この問題は多かれ少なかれ直面します。
本当は患者さんのためにしたいところをシステムに縛られてできない。板挟みになる。

 

これが理由で私はこの状況が嫌で保険治療を行っていません。保険請求を収入のメインした場合、もしもシステムが変わったらとてつもない影響を受けるからです。また保険システムに従うために幾つかの矛盾を飲み来ないといけません。

腕に自信がある医者は保険治療を一切しないで自費治療のみを行っているひとも存在します。厚生労働省の指図は受けない、という態度。治療報酬を自分で決める。この場合もダイレクト課金者を患者にしていると言えるでしょう。

 

変化の激しい現代で、ファン(=ダイレクト課金者)がどれだけいるかが重要なことになる。「革命のファンファーレ」を読んで思い知りました。

 

甲野 功