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~2018年第33回教員養成科卒論発表会~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 第33回卒論発表会
東京医療専門学校第33回鍼灸マッサージ教員養成科卒論発表会に参加してきました

 

今年も母校、東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科第33回卒業論文発表会に行ってきました。今年は教員養成科34期の発表になります。私は30期でしたから自ら発表したのは4年前。早いものです。

 

毎年、事前に抄録を学校に行って入手し読み込んでから会場に行きます。内容を確認したうえで疑問点や問題点を洗い出し、当日その答え合わせをする。新しい発見を得る良い機会になっています。去年卒業した33期の卒業生も何人か出席していました。

 

今回もいくつも新たな発見や視点が見つかりました。ここ数年卒論発表の事を書いています。
今年は演題名とそこで気になったポイントを私の視点で書いていきます。演題名は書きますが実験プロトコルや結果、考察については詳しく書きません。ネタバレ禁止ということで。
これを読んでいる養成科OBの方で、気になったら学校に行って論文を読んでみてください。

 

 

潜在的なシミに対するパイオネックス刺激の効果
美容系の研究です。今年の初めにテレビ番組で美容鍼が取り上げられてちょっとしてブームになりました。大量の鍼を顔に刺すハリネズミ美容鍼やパルス通電を行う方法などがネット上にあがってきました。しかし、パイオネックス(円皮鍼のことで貼り付ける鍼)を用いたやり方はほとんど見受けられませんでした。東京医療専門学校ではパイオネックスを使った方法を習う機会があるので普通の鍼(毫鍼)ではなくパイオネックスを使った研究に独自性を感じました。

 

パイオネックス鍼貼付によるドローインへの影響
ドローイン。主に腹横筋を収縮させてインナーマッスルを活性化させる手段。スポーツトレーナーの分野ではお馴染みの用語ですが、まだまだ一般的とは言えないでしょう。私がドローインを知ったのは鍼灸専門学校を卒業してから卒後講習で習った時でした。
ドローインという動作に対してパイオネックスを使って向上できるかという実験研究。ドローインそのものはやってみるのも教えるのも少し難しいかと思います。私の実感としては被験者のスキルが影響する実験だったように感じました。


ドローインについて知らなかった知識を得ることができ、臨床で、特に競技ダンス選手を指導するときに、また取り入れてみようと考えています。

 

太衝穴と握力の関係 ―遠隔部刺激による握力の変化―
太衝」。足の甲にある経穴(ツボ)で鍼灸師にはとても使いやすく重要な経穴。この卒業論文発表会においても太衝穴を刺激して生体反応を測定する実験が幾つか行われてきました。身体的に特徴ある部位であり、東洋医学的に重要な意味を持つこの経穴。臨床効果も高いので注目されやすい経穴なのです。その分現代医学的(西洋医学、解剖学、生理学)検証と東洋医学的(経絡、中医学)検証の両方をすることができてしまい、研究の難しさが出たと思います。


学校教員側のコメントがとても勉強になりました。指導教員の「実験はやれば(研究の)形にあるので、そのプロセスが大切」、外部専門学校教員の「健康体に鍼を刺すと少なからず副作用があると考える。事前に負荷をかけた状況で行ったらどうか。」という意見が心にしみました。

 

漢方薬がじゃがいもの発育変化に与える影響
今回、一番感銘を受けた発表でした。養成科卒業論で続く野菜シリーズ。私の1期上のお灸(温熱刺激)を据えたニンジン(だったはず)、同期の円皮鍼を貼ったトマト、に続く、今年の漢方薬を使ったじゃがいも。「漢方農法」なるものがあること自体初耳で、それを知ることができただけでも聴いた価値がありました。じゃがいも生育に「気血水」の気(気剤を用いる)と血(血剤を用いる)に注目して、漢方薬を希釈してじゃがいもに与えてその発育状況をみるというもの。


発表後に演者である先生方と少し話しましたが、農業分野に鍼灸師が進出する可能性を秘めた研究だと私は思いました。新しい視点を得ることができました。

 

精油のにおいによる効能と五臓の関係性について
アロマテラピーと東洋医学の基本となる五臓(肝心脾肺腎)との関係を研究した発表。アロマテラピーは看護師が研究することが多く、医療現場でも導入されるケースがあるそうです。アロマ検定があるように世間一般にも浸透している民間療法といった感じです。そこに東洋医学を絡めたものでした。


私は民間の整体学校で少しアロマテラピーの勉強をし、今はほとんど使いませんが臨床で精油を使うことがあります。この発表を聴いてアロマの存在を再認識しました。もう10数年前に習ったことですが、改めて奥にしまってあった技術の引き出しを出してみようと思いました。

 

後渓、外関穴刺激による肩関節可動域の変化について -肩関節内・外旋可動域に着目して-
肩関節可動域に着目した研究は多数あります。局所(肩関節腱板を構成する筋)に刺鍼して可動域変化をみる実験を私の1期上の先生が発表していました。また後渓外関という鍼灸師には割とメジャーな経穴を使って(この2つは肩から離れた手の場所にあります)遠隔で影響を及ぼすかという観点でした。私はほとんど臨床で使わない経穴ですが、今後は使ってみようと思いました。

 

吸角が及ぼす局所筋血流量の影響 -NIRSを用いた研究-
吸角。吸玉、カッピングとも言われる。カップの中を陰圧にして皮膚を吸い上げる器具。この吸角も卒論で実験研究する人が多い分野です。私は昨年の吸角を用いたボルタリングの研究に感銘を受けて治療院に吸角(吸玉)療法を導入してしまいました。


その吸角の効果を近赤外分光法(NIRS)という方法で測定する点が目を引きました。

 

先天的体質及び性格における罹りやすい病気との関連性について
これは実験ではなく膨大な調査研究でした。対象者は126名。一人の学生が扱うものとしては相当な数です。100名規模の調査は卒論発表会で見たことがありませんでした。それだけでも価値のある研究だと思いました。

体質、性格、疾患の3部門から構成し、五臓にて体質と性格を5種類に分け、疾患は18種類に分類し、その関係を統計処理してみたもの。臨床経験豊富な指導教員も経験的に納得できる結果だと述べていました。

 

糖質制限食による舌の変化
研究者自らが被験者となり食事制限をする実験。私の1期上も、そして同期も行った類の実験です。特に私の同期が強制的に血虚(平たく言うと貧血の一歩手前くらいの状態)に時間をかけて追い込んでいく様を見ているので、とても興味深いものでした。「先行研究により極端な食事制限から舌に変化が見られたことから」という箇所は、同期の実験を指しているのでしょうか?今回は糖質制限食ということで、糖質の割合を減らしてその分脂質、たんぱく質を摂るという食事でした。


私は舌診(舌の状態を診ること)をあまりしないので臨床でやるようにしようと思いました。

 

円皮鍼刺激が投手の投球速度に与える影響 -ダブルブラインドによる比較検討-
円皮鍼刺激で投球に影響があるのかを検証した実験研究。健常者のスポーツパフォーマンスを鍼灸で向上できないか、という私もずっと追い求めるテーマであります。

今回凄いと感じたのは被験者が現役高校球児であるということ。そのスポーツをきちんと行っている選手で実験することはとても大変です。私の卒業研究は幅広い年代の被験者で実験を行ったのですが、これがスポーツを常時行っている被験者のみであったら結果が変わったかもしれないと思ったものです。

また単純動作(例えば上腕三頭筋の筋出力といったような)ではなく、投球という全身複合運動で実験したことにも感心しました。結果に寄与する影響が多すぎて考察しづらくなるので大変なのです。東京オリンピックを見据えた実験研究でした。

 

頭部外傷後に発症した続発性瘢痕性脱毛症に対する鍼灸治療 -鍉鍼によるセルフケアで髪が生えてきた一症例-
これは実験でも調査でもない、症例報告のスタイルです。実際の症例を深く検証していくものです。

続発性瘢痕性脱毛症の画像を見たことが初めてであり、様々な治療をしたが効果が薄く、最終的に鍉鍼という擦る鍼を週5日行って髪が生えてきたという実例を知ることができました。画像があることで実感がある発表でした。

 

耳鍼が瘀血に与える影響
耳に刺激を与える耳鍼。もう10数年前ですが鍼灸専門学校時代に耳鍼ダイエットの研究をしたので興味深い研究でした。その耳鍼と東洋医学の病的概念である瘀血(おけつ)を繋げた新しい視点の研究でした。瘀血は月経と密接な関係があり、結果に男女で大きな差が出たことが興味深かったです。

 

鍼刺激が滑舌に及ぼす影響 -円皮鍼刺激による発話時の舌運動機能の変化-
この研究も驚かされ、そして非常に感心した研究でした。演劇、アナウンサーなどの「話すプロ」の滑舌向上を鍼灸分野で行えないかという取り組み。研究した先生した自身が演劇経験者で発語の訓練をしてきた経験があるそうです。

私の同期が発生に関する研究をしていましたが、今年のはより具体的なものでした。私は開業鍼灸師ですので、どうしても新しい患者が開拓できるかどうかという視点で発表を聴いてしまいます。この実験はターゲットが明確であり、実際に行うことを想定し円皮鍼を用いていることがとても興味深く、今まで無かった「話すプロ」に対して鍼灸が進出できるかもしれないと期待できるものでした。スポーツではないですが、身体パフォーマンスを向上させるというテーマであり、滑舌という能力に注目したことは驚きでした。

 

1つの筋に対する刺鍼本数の違いが筋硬度と疲労感に及ぼす影響 -前脛骨筋への1箇所刺激と2箇所刺激の違いについて-
とても臨床に即した研究ですぐに現場で応用できる内容でした。結果も予想通りという感じでしょうか。
この発表で面白いと思ったことは、考察に「ホーソン効果」を出したこと。「ホーソン効果」は業務改善のためにホーソンという人が行った実験から出されたもので経営戦略の本で知った内容です。医療分野でも用いられることがあるそうで目から鱗でした。また前脛骨筋は学生からの「単関節筋であるから二関節筋や多関節筋へのアプローチはどうなると考えますか?」という質問が鋭いと感心しました。

 

 

実験結果がどうだったのか、実験方法の詳細、などは書きません。数か月かけて完成させた発表を私が一度聞いて知ったかぶりで書くのは失礼かと考えます。あくまで私の感想と心に引っかかった「明日から使えそうな」ことを挙げていきました。

私も通った道ですが、発表した34期の先生方は大変だったことでしょう。緊張したはずです。その頑張りを少しでも外部の人にも知ってもられば幸いです。

 

甲野 功

 

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