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~最期に鍼灸師が求められるもの~

臨床に出る治療家は覚悟を決めなくてはならない

 

これは鍼灸マッサージ教員養成科時代に経絡治療の授業を担当した経絡治療学会の相澤良先生の言葉です。
授業中にぽつりと言った一言ですが、私にとってはとても重いものでした。相澤先生の授業ノートの一番初めのページに赤ペンで書いたものです。
また私個人のFacebookプロフィール欄にも載せております。

 

先週、鍼灸学生向け施術見学会を引き受けたことをお伝えしてきました。
鍼の技術を披露するのと同時に、純金の特殊な鍉鍼(ていしん。刺さない擦る鍼)「ごしんじょう」を紹介しました。こらは値段が値段ですから、来場者の興味を大いにひきました。ただあの場で語ったとおり、話のネタとして用意するには高価すぎる品物です。なぜ「ごしんじょう」を持っているのかということと、相澤先生の言葉「臨床に出る治療家は覚悟を決めなくてはならない」はリンクしています。


これから鍼灸師になる学生さんに向けて、覚悟を決める場面が訪れるかもしれないということを知ってもらいたかったのです。

 

私は国家資格だけで、鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の4つを取得しています。民間資格だと整体、リフレクソロジー、タイ古式マッサージ、スポーツマッサージなどもあります。資格としてはありませんが競技ダンスフィジカルトレーナーの一面もあります(自称ですが)。

 

そのなかで鍼師と灸師、合わせて鍼灸師だけは特別な存在であると考えています

 

未だにはっきりと東洋思想を残しており、現存する国が認める(厚生労働省認可国家資格という意味で)伝統療法だと思うのです。

現代医学に基づいた西洋医学(現代医療)とは、半分は同じことを勉強しつつも半分は独自の理論(思想と言っても良いでしょう)を残しています。未だに痛い、怖い、熱い、そして胡散臭いというネガティブなイメージが一部残る鍼灸ですが、その代わり幻想もあるのではないでしょうか。

 

鍼灸ならば、東洋医学ならば、難病にも立ち向かえるのではという幻想。

 

幻想と表現するのは失礼かもしれません。期待とか願望とするべきかもしれません。とにかく最後の最期にすがる手段の一つに鍼灸が選択肢に入っている気がしています。

 

もしも医者がもう助かりませんという疾患があります。患者さんはどうするのでしょうか。
死を受け入れて静かに待つのでしょうか。
多くの場合、本人もしくはその家族が何とかならないか他の方法を模索するのではないでしょうか。例え無駄だと分かっていても。
そのときに対応できるものはもう非科学的なものしか残っていないでしょう。霊媒師、魔法の水、現代医学から異端とされている医療、祈祷、などなど。
鍼灸はその中に入る可能性が高く、一番歴史と実績がある分野です。あん摩マッサージ指圧師にも柔道整復師にも、おそらくこのような幻想・期待・願望はほとんど持たれないと思います。自称“ゴッドハンド”とか宣伝している場合を除いては。

 

鍼灸師が患者さんにとって最後の砦になる

 

このようなシチュエーションがあり得る。そのために相澤先生は「覚悟」と言う言葉を使っていると考えいます。

 

これから鍼灸師になる学生さんに、末期の癌患者さんを受け持つことを考えてみてほしいのです。医師がもう打つ手がなく、積極治療は諦めている患者さんを。
僕はスポーツトレーナーの道に進むから関係ない。
私は美容分野で活躍するからそのようなことにはならない。
そう考えるかもしれません。

将来、鍼灸師として免許を持ち患者さんなりクライアントなりお客さんなりに施術をするようになります。経験を積み技術が向上し効果も出せるようになり、信頼と実績を積むようになります。そうすると段々と求められる要求が高くなってきます。
生理痛も鍼灸効くのでしょう。不妊症にも。鬱にもいいって記事でみた。線維筋痛症に鍼がいいらしいね。
鍼灸師として活躍すれば信頼によって新しいオファーがきっときます。こういった主訴に対して期待されるのはやはり鍼灸が多い。正確に言えば東洋医学が。

 

いやいやそういう疾患はうちの範疇では無いから他の鍼灸院にいけばいいでしょう。うちは○○専門でやっているから。と考えるかもしれませんね。
では患者さんが、実の親ならば、配偶者ならば、自分の子どもだったら、大切な人だったら、どうでしょうか
自分が受け持つにするにせよ、誰かにお願いするにせよ、真剣に考えませんか。本当にどうにかならないのか、と。
親に進行癌が見つかり余命1年と言われたとしたら。もう症状を和らげることしかできません、年を越せるかはわかりません、と宣告されたら。周囲は少なからず鍼灸師であるあなたに期待しないでしょうか。鍼灸師として何かできないかと模索しないでしょうか。

 

私自身がこのような状況になりました。

 

まず義理の母に悪性腫瘍がみつかったときのこと

悪性リンパ腫と白血病の混合に近い病気でした。抗がん剤と放射線治療で一度は寛解(腫瘍マーカー値が基準値内に戻る状態)しました。抗がん剤の副作用もありましたが退院しほぼ日常生活が戻ってきたという矢先に、定期健診で再発が見つかりました。
再発の場合予後は非常に悪く、当時かかりつけだった大学病院では緩和ケアに行くことを勧められました。もう一度抗がん剤・化学療法をしても効果はあまり期待できず苦しむだけだから、と。当時は私の二人目が妻のお腹にいた頃。主治医からは「お孫さんの顔がみたいでしょう。一緒に正月を迎えたいでしょう。」と言われました。

 

義母は当時60代前半。本人も妻を含めた家族もこのまま諦めることをよしとせず、積極治療ができないかと考えました。妻と義父は色々調査し足を使ってセカンドオピニオンをとり、結果として臍帯血移植の道を選択しました。
それと同時に私は東洋医学で効果があるものは無いか調査しました。その中で一番効果がありそうで現実的だったのが「ごしんじょう」だったわけです。値段が値段なので少し悩みましたが、もしも義母が亡くなったときに、鍼灸師として臨床家として後悔が残るだろうという結論で取り入れました。ですから通常の施術にこの道具を使うことはありませんし、宣伝することもしていません。


元の病院での抗がん剤、転院先の臍帯血移植、それに私の施術。幸いにも抗がん剤が効いて腫瘍マーカー値は移植可能値まで落ちました。臍帯血移植も成功しました。その後の副作用も少なく、かなり早く退院することができました。私の施術に効果があったのかは判断できません。何もしなくても簡単に退院できたかもしれません。
それでも鍼灸師として治療家として覚悟を持って立ち向かえたのは鍼灸を、東洋医学を、信じた結果です。

 

もう一つの経験です。
あじさい鍼灸マッサージ治療院を開業する前から週一回栃木県の大学病院麻酔科ペインクリニックで勤務していました。そこでは平日5日間毎日1名の鍼灸師が常駐して医師の指示のもと、まわってきた患者さんに主に鍼治療を行います。
麻酔科のベッドを一つ間借りしている格好でしたから灸を行うことはなかなかできませんでした。
大学病院ですからそこで受け持つ患者さんは重篤な症状ばかりになります。麻酔科だけでなく他の科からも、これは鍼灸で(正確には東洋医学でという意味でしょう)どうにかならないか、と患者さんがまわってくることもあります。他にも患者さん自ら鍼治療をしてみたいと主治医に申し出てくる場合もありました。

このような環境で私は3年間臨時職員として週一回でしたが大学病院で医師、看護師に囲まれて鍼師として働きました。そこでとても印象的だった症例は医原病患者さん緩和ケアのこと。


医原病とは、大雑把に言うとある疾患のために施した医療によって引き起こされて副作用としての疾患です。命を救うための処置が大きな後遺症を残してしまうようなものです。この患者さんは詳細を書くことができませんが(守秘義務)全く別の疾患を治療した際に他の機能に障害が起きてしまいました。教科書であれば間違いなく鍼灸禁忌、適応外の症状です。そして現代医学では対処法が特に無いものでした。

 

当たり前ですがまわしてくる医師も、そして患者さん本人も、鍼灸でどうにかなるものではないことは分かっています。目の前にした鍼灸師たる私もそうです。それでも一縷の望みをかけて鍼灸を受けてみたいとやってきました。覚悟を決めてできる限りの知識と技術を総動員して患者さんに向き合いました。結果は気休め程度で特に効果があったということは認められませんでした。

 

もう一つが緩和ケア病棟からの依頼です。
主に悪性新生物(いわゆるガン)の末期患者さんでもう積極治療が行えず病院で最期を迎える患者さんに鍼灸をしてあげてください、もしくは患者さんが希望しています、と麻酔科鍼灸師に依頼が来るのです。これも詳細を書くことはできませんが、もうどうにもならないという気持ちと、それでも鍼灸師として何かしてあげなければという気持ちが、入り混じった経験でした。

 

なおこの大学病院、研修が終われば指導鍼灸師はつきません。ずっと一人でいます。突然医師からオファーが来て、その場で治療方針と方法を自ら考え患者さんに説明し治療しオーダーを出し電子カルテに記入します。その場で誰かに助言を求めることも変わってもらうこともできません。


大学病院の経験は鍼灸師でなければあり得なかったことでしょう。他の資格(柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師)では絶対に無かったと思います。

 

最初に出した、臨床に出るには覚悟が必要、という言葉は鍼灸師を続けていればときに「とても大きな期待」(それは無理な要求)を受けることがあるかもしれません。そのときは断ることが困難な状況になっているでしょう。自身が実績を積んで周囲に期待せれるだけの段階にいると思うので。


鍼灸専門学校生の皆さんに知ってもらいたいことでした。

 

甲野 功

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