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~患者さんを長く診られる力~

月23日の関東鍼灸専門学校で行われた通称カテンセミナー


事前に一番聴きたかったのは、カリスタ前田真也社長の講演でした。


私が開業するにあたって一番苦労したのは経営全般でした。

治療や施術といった、対患者さんのへ活動は10年以上行ってきているわけで、ある意味一番慣れているというか、誤解を招くかもしれませんが楽なことです。資金面、戦略面、広報、広告、新規患者獲得などの従業員ではあまり責任を持たなかったことが大変でした。過去形ではなく、開業して6年、治療院を構えて4年が経過しましたが未だに道半ばといったところ。


そこで経営者として有名な前田社長の考えを直に聴いてみたいという気持ちがありました。

 

活躍する鍼灸師には何が必要でしょうか。
患者さんを長く診られる力
これが全てだと前田社長はセミナーでおっしゃりました。

 

私にとっては至極当たり前のことだとその時は思いましたが、深く考えてみると多くの気づきがあります。
患者さんを長く診られる力。どのような意味があるのか考えなおしてみました。

 

まず鍼灸師ではない経営者である前田社長には、経営が先にあると予想します。
私のように鍼灸マッサージ師であり、臨床から開業して経営をすることになった人間とは違います。私は、ある意味優先順位が2番目のアマ経営者かもしれません。

 

プロ経営者たる前田社長の視点で考えたときに、
患者さんのLTV(LIFE Time Value)
新規患者獲得は既存患者の再来院よりもずっとコストがかかる
この2点を踏まえての事ではないでしょうか。

 

まずLTVとは簡単に言うと、一人の患者さんが生涯どれだけお金を払ってくれるか、ということ。

1回10,000円払って二度と来ない患者さんよりも、1回3,000円で週1回は来てくださる患者さんの方がひと月の支払い総額が上になります(4週間として)。リピーターとして1年、2年、3年と継続してくれれば単発で10,000円支払う患者さんよりも額はずっと大きくなります。

鍼灸院に限りませんが、顧客のLTVを考えて低単価でも長期にリピートしてくれる人を大事にするのはセオリーでしょう。

 

そして新規の顧客を獲得するコストは既存の顧客を再来店させるコストよりも高くつく、というのも一般的に言われることです。
一度も利用したことがない人をお客にするのはハードルが高く、宣伝広告費をかけないといけません。対して一度利用したお客はある程度勝手が分かっているので再来店させるのは比較的簡単です。そのため多くの業種で常連さんを大切にして定期的にお便りや情報を送るようにしています。

 

講演で2回出てきた画像がありました。左半分は蛇口から出る水。右半分は穴が空いて水がこぼれて落ちているバケツ。

どれだけ蛇口を捻って水を勢いよく流してもバケツの穴を塞がない限り水が溜まっていかないという意味です。

新規患者獲得に力を入れるよりも、その院のファンを増やして継続的に来院してもらう方が経営は安定するということ。このことは多くの経営に関わる書籍に書いてある内容でもあります。

 

前田社長は「しんきゅうコンパス」という鍼灸院の口コミサイトも運営しています。「しんきゅうコンパス」は新規患者獲得の手助けが主な役割だと私は思うのですが、この話を聴いたときに、逆説的に
新規患者獲得の手助けはこちらがしますよ、ただし、長く付き合えるようにするのは各鍼灸師の力ですよ
と言われたような気がしました。集客力は外注できても臨床で患者さんをリピートさせるのは鍼灸師しかいないわけです。

 

そして「患者さん長く診られる力」の”長く”というのは、どのような意味があるのでしょうか。

 

これは臨床の治療家のジレンマとも言えますが、患者さんが長く来院されるのは実力が無いからというジレンマに陥ることがあります。全然治らないからずっと来るのでしょう、と。
究極の理想は、1回の治療で劇的に完治してもう来ない。そうとも言えるのです。

急性疾患ではこれが無いわけではありません。例えばぎっくり腰で動けない人が1回の鍼治療ですたすた歩いて帰宅する、もしくは短時間で劇的に良くなる。このようなことが実際にありますし、私も経験があります。

はっきり言えば、急激に悪くなったものは急激に良くなる可能性が高いわけですから、全ての症状にこのような結果を求めるのは無理があります。
それでも<一回の治療で完治させる>は臨床に出るものの理想であり追い求める姿です(幻想かもしれませんが。)

 

よって長く診るというのは怠慢であり、症状が出たときに頼りにされるのが理想、長く患者を引き留めるのは悪であるという考えもあります。

特に保険診療をしていると、ダラダラと長引かせてなるべく保険請求額を取りたいというケースが確かにあります。私も整骨院時代に良くなっていても散々「まだ来てね」と声をかけ続けた日々がありました。それが適している場合もありましたが、完全にこちらの都合ということも少なくありませんでした。これは悪いTLVの考慮ですね。

 

しかしながら、予防医学の一面を持つ鍼灸であればやはり「長く診られる力」が正しいと私は思います。

鍼灸というか東洋医学の良さに「病気をみないで、人をみる」というものがあるからです。病気を症状に置き換えてもいいでしょう。病気が治ったら、症状が良くなったら、お終いではなく、患者さんその人をみることが東洋医学の良いところ。そこに「長く診られる力」と関係すると考えます。

例えば腰が痛い。腰痛が無くなりました。そこから何故腰痛が出たのか?を考える。日常生活動作は、精神的ストレスは、食生活は、体型は、などその人全体を診て予防策を考える、提案する。
それができるのが東洋医学であり鍼灸師の強みのはず。そういった判断、治療の能力を含めて「長く診られる力」なのではないでしょうか。

 

私の妻は元々患者さんです

腰痛で当時勤めていた鍼灸整骨院に来て、私が担当したのが出会いのきっかけでした。その後、交際→結婚→出産と今に至ります。その過程で腰痛治療→美容→逆子治療→安産治療→出産の鍼→母乳が出やすくする灸→肩こり治療→腱鞘炎対策→また腰痛治療→めまいなど、と内容は変わっていきました。


このようなことができるのも総合的に診られる鍼灸(それにあん摩マッサージ指圧も)の力だからでしょう。私は柔道整復師免許も持っていますが、柔道整復師だと外傷が強くいのですが範囲が狭くなります。理学療法士や作業療法士でも婦人科疾患まではカバーできないでしょう。
患者さんを「長く診られる技術体系」がそもそも備わっているのが鍼灸。それを発揮することが活躍する鍼灸師ということを考えたときに、奥が深い言葉だと感じました。

 

更に今の立場(開業鍼灸師)になって理解できることがあります。患者さんを長く診るためには経営力が必要ということ。
どれだけ優秀な鍼灸師でも1年で職場が潰れてしまっては長く診ることはできません。何年も患者さんを診るためには、何年もそこに院がなければ、そこにいなければいけないのです。華々しく開業して1年足らずで撤退という現実を目の当たりにしたこともあります。
開業しているならば継続していける経営力。従業員を雇うならばやりがいがあって簡単に離職しない現場を作る経営力。そこも含めて「患者さんを長く診られる力」なのだと思います。

 

私にとっては当たり前の事だった「患者さんを長く診られる力」。それを鍼灸師ではない人間が話すことで改めて考えさせられ、気付いたことがありました。

 

甲野 功

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