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~まず観察から始めよう~

以前、読んだビジネス書籍にまんがでわかるデザイン思考というものがあります。

 

イノベーションを起こすためにはどのようなことをすればよいのか、マンガのストーリーで説明するものです。

最近はマンガのビジネス書籍、自己啓発書籍が多数出版されています。
「デザイン思考」という用語は初めて目にしたので買って読んでみました。

 

内容はこの分野ではよくある、経営難のカフェを立て直すために新人社員が現場に派遣されて、都合よく現れたメンター(仕事の師匠、先生)から学びながら現場の人間と一緒に現場を改善して業績を上向かせるというもの。
だいたいが前任の責任者が色々な事を試してみたものの成功しなかったため、現場はモチベーションが低く主人公である新人社員には冷たくあたるのがパターンです。

最終的には業績が大いに回復し主人公である社員は昇進して終わるのが王道ですね。

 

この本で一番気になったのは
まず観察から始めよう
というテーマです。

 

舞台となるカフェはなぜ売上が悪いのか。なぜお客さんが来ないのか。このような課題に対して売上推移、競合となる他店の状況、立地条件、メニューの見直し、などなど数字や実情を客観視することをします。それでも上手くいきません。このようなことは既に前任者が散々行っております。やらなくても良いこととは言いませんが、大切なことは他にあると筆者はマンガの中で主張します。

 

まず、カフェを利用しているお客さんを先入観なしにきちんと観察すること。これが大切だというのです。

 

有名な話ですが、スティーブ・ジョブズは市場調査をほとんどあてにしていなかったと言います。本当に画期的商品はユーザーが見たことも考えたこともないものなのだから、彼ら彼女らにアンケートやインタビューをしても意味が無い、という考えです。


それと似ているように感じました。なぜお客さんはそのカフェを利用しているのか。もしかしたら当人も説明できない理由があるのかもしれない。反対に利用しない理由もお客さんの行動を観察することで分かるかもしれない。
カフェ側の理屈(願望、思いこみ)で見るのではなく、初めて見る感覚でお客さんをよく観ること。それがイノベーションを起こす第一歩だと、この本では打ち上げています。

 

ネタバレになりますからあまり細かいことは書きませんが、カフェを利用する人はサラリーマンが多く、フカフカのソファーだとスーツに皺ができてしまうので敬遠している、ストレス解消のためにカフェに入り氷をかじったり机を指で叩いたりしている、ハイカロリーのお菓子は他で食べられるから求めていない、などの事が観察とその後のインタビューで判明していきます。

 

重要な事は、当たり前と思わずお客さんの行動における些細な違和感を見逃さないこと
最初に挙げたサラリーマンの例では、多くの商談や個人の事務仕事を終えたあとに手でスーツを払っている仕草に主人公が何故だろうと感じるところがストーリーの肝になりました。そこから仮説を立てて検証し、ときに実際にお客さんに適切な質問を繰り返し、お客さん自身も認識していなかったことを明白にしていきます。それによって業績回復のための施策を生み出していくのです。

 

 

素直に観察する。これは鍼灸師にとっても重要な事だと感じました。

 

鍼灸師には望診という相手の様子をみることで症状を読み取ったり異変を感じ取ったりすることを学びます。医療従事者ならば自然と行うことではありますが、まず患者さんの様子をみて異変が無いかを読み取ろうとします。

 

患者さんは当然このように行動するであろうという予測(もしくはこちらの思い込み)を持って見てしまうと大切なことを見落とすことがあります。

 

何故かこちらが用意した目の前のカゴを使わないで遠くにあるカゴをわざわざ使う。
力を抜いてくださいねと言っているのにどんどん力を入れてくる。
うつ伏せにベッドに寝てもらうと何故か体が曲がっている。

 

例を挙げるといくらでも出てくるのですが、些細な事を注意深く観察していくことで潜在的な事まで気配りができるようになるものです。

 

私が良かれと思ってやっていることが患者さんにとってはあまり好ましいことではなかったことがありました。
時に医学的には大いに間違っていることを患者さんは良いことだと思っていることがありました。
患者さんはそうしているつもりは無いのに実際の行動は別の事を行っていることがありました。

 

本人が敢えて行っていることから無意識に行っていることまで、患者さんの言動や仕草をきちんと観察することはとても重要です。それは違うと指摘するのではなく、とにかく患者さんの行動を素直に見守る。見る、観る、診る、といった言葉が観察には内包しているのではないでしょうか。

 

まず観察から始めよう。

臨床現場でも重要なこと。新規患者さんでも常連さんでも気を付けて観察し、些細な違和感を大切にすることが治療に結びつきます。

 

甲野 功

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