～続・森岡毅～

 

森岡毅氏を一躍有名にしたのは、当時低迷していた大阪のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン（ＵＳＪ）を再生させたことでした。一人勝ちだった東京ディズニーリゾートに並び、現在の東のディズニー・西のＵＳＪというテーマパーク２強時代を築いた立役者です。

 

最初に知ったのはテレビの経済番組に出演していたこと。そこから興味が湧いて著書を購入していきました。

 

まず最初に「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」。
続いて戻る形で「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? 」。
数学的アプローチで書いた「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」（今西聖貴氏との共著）。
そして今年に入って「マーケティングとは「組織革命」である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド」。
毎回購入して読んでいます。

 

森岡毅氏はマーケティングを専門にするマーケター。Ｐ＆Ｇからユニバーサルスタジオジャパンを経て現在は独立して起業しています。一貫して企業のマーケティングを担当しています。最初に手に取った本「ＵＳＪを劇的に変えた、たった１つの考え方」ではマーケティングの具体的な内容を知ることができ、特に戦略と戦術の違いをはっきりすることができました。２年前にこのことを私は書いています。ブログ～森岡毅～。

 

しかし直近の２冊はどちらも企業向けの内容であり、特に最新作「マーケティングとは「組織革命」である。」は具体的な企業内組織を変える手法が書かれており、個人事業主で個人治療院を経営する私には直接役に立つものではありません。「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」は良質なマーケティングの本で大いに勉強になりましたが。

ではなぜ毎回本を買って読むのかといえば、私が森岡毅氏のファンだからでしょう。ＵＳＪを再建した森岡毅氏がその後どこに行って何をするのか知りたい、見てみたいという気持ちがあります。

 

最近の日本におけるテーマパークの復活劇はいくつかありますが、ハウステンボスとＵＳＪのケースは双璧だと思います。外部の人間がやってきて新しい手法を取り入れて魅力ある施設に変貌させる。製造業や小売業ではない、サービス業（エンターテインメント）の分野で成し遂げることに、同じモノを売るわけではない治療院をしている私には、近いものを感じるのです。

遠い大阪のことですが、かつてＵＳＪが不祥事などもあり人気が無いというのは何となく知っていました。それを細かい施策から社運を掛けた大勝負まで、幾多のアイデアを実行して現在の人気ある状態の礎を築いたことに夢を感じます。

 

また森岡毅氏は、本人もはっきりと言っていますが、相当な数学オタクです。文系が多いと思われる経営分野でここまでしっかりと数学を駆使する人は珍しいのではないでしょうか。私は理系出身なので、数学を駆使するやり方に憧れを感じます。特に私は専攻が物理だったので、数学は物理学を解くための道具、というスタンスがありますが、森岡毅氏は純粋に数学が好きということが分かります。

著書の「確率思考の戦略論」では数式が多々出てくるのですが、大学を卒業して１０数年経過した今では恥ずかしながらいまいち理解できませんでした。神戸大学を出ていますが学部は理数系ではありません。それでこれだけ数学に強いのは素晴らしいことです。

 

このように森岡毅氏が成し遂げたことに興味があり、かつ凄いことだと感心しています。特にそれまでＵＳＪが「映画だけのテーマパーク」だったところから「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」にブランドを大きく変えたことは驚愕です。

私は東洋医学を学んだ鍼灸師なので東洋思想で物事を視るところがあります。
ディズニーランドは当たり前ですがディズニー以外のキャラクターがテーマパークに存在することはあり得ません。提携先が増えたとは言えディズニー映画のキャラクターだけ。世界感が一本に絞られており、それ以外に広げません。東洋思想の基礎となる陰陽論で言えば「陰」です。
ＵＳＪも当初は「ハリウッド映画に絞った」テーマパークでしたが、そこから「セレクトショップ、すなわち映画にこだわらない」ものに変換しました。ですから今では進撃の巨人もモンスターハンターもワンピースも取り入れています。広がりがあるＵＳＪは「陽」と言えるでしょう。

ディズニーの路線は強力な「陰」であったのに対して、同じように映画のみの「陰」で勝負しても低迷していることを踏まえて、多様性のある「陽」の路線に大きく転換したことは慧眼だと感じます。このような変な見方をするのは鍼灸師くらいでしょうが。

 

現在、森岡毅氏は株式会社「刀」のＣＥＯに就いています。一従業員から起業して一国一城の主になりました。それまでできなかったことができるようになっているでしょう。これから閉塞感漂う日本をどのように変えて行くのか楽しみです。

 

甲野　功