開院時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休み:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

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~鍼灸施術体験記~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 患者さんからのコメント
体験した患者さんから送られてきたコメント

 

以前、ピラティスインストラクターのRYOさんに協力して頂いて~美容施術の記録~を投稿しました。

 

この投稿を読んだある患者さんから、自分もやってもらいたいという要望がありました。受けている鍼灸施術を時系列でまとめてもらい、術者が何を考えてどのような判断で施術をしているのかを知りたい、というものです。


治療の最中に説明をしても細かくは伝えきれません。臨床はライブなので状況によって変わっていきます。患者さんを目の前にして症状をどのように解釈をして、どんなやり方を選択するかは変化します。前回と全く一緒というわけにはいきません。

美容のレポートを見て受け手と術者の考えが載っていることが画期的だと、その患者さんは感じました。

 

患者さんの要望で、ある日の治療を画像とともに振り返ります。

 

・前提として患者さんの要望で行っております。


・写真撮影は患者さんのスマートフォンを用いて私が行いました。鍼灸を受けている状態では手が動かせないためです。


・鍼が細く見えづらいので明るさを調整しています。


・コメントはこちらが良いように解釈しないように患者さんから送られたメッセージより引用しています。


・料金を頂いた通常治療の一環として行っています。


・撮影時間があるため若干時間は長くなっております。


・患者さんは匿名で個人を特定できる情報を明かしませんが治療方針において必要と思われる内容(性別、年代など)は一部公開しています。


・●は患者さんである被験者のコメント、◆は術者である私の主観です。

 

それでは今回もなるべく症例報告に近い記載で記し、専門用語にはなるべく解説をつけて記載していきます。

 

日時:2019年7月3日 10:00~10:55
場所:あじさい鍼灸マッサージ治療院
被験者:40代女性、自営業

 

●被験者コメント
7/3
昨夜からふくらはぎが張って、痛くて立ち上がったり歩いたりするのが辛かったでした。2日前に立ち姿勢の仕事で緊張が続いていたからだと思います。
前回太ももがだるくて治療をお願いしたところ、とても良かったので、今回もお願いしました

 

◆検査所見:
自身で事務所を構えて仕事を始めている。新しい挑戦の最中で気苦労があることが伺える。

 

元々更年期に関わるホットフラッシュ(頭が熱くなって汗が出る)があり、反面足が冷えている実感がある。典型的な上実下虚の状態。上実下虚(じょうじつかきょ)とは東洋医学の用語で熱が上(上半身、特に頭)に停滞し反対に下半身に熱が行きわたらず冷えている状態。

 

脈に触れて観察すると(脈診といいます)沈んでいてゆっくり。全体的に年齢の割に弱い印象。五臓でみると腎が特に弱い。

 

お腹を触ると(腹診)少ししっとりとして弾力がある。弱い感じはない。


主訴(一番症状を訴えている部位)のふくらはぎは浮腫んでいる感じ。触った感じはそこまで冷たくない。※これまでに何度か感触を確認しており、ひどいときはもっと冷たい。

湿度が堪えている印象。

 

見立てとして、疲労が溜まっているが性格的に頑張ってしまいエネルギーが足りないのに(虚証)無理して熱を出してそれが上の方で滞っている。東洋医学的に気虚、虚熱状態。また足先は熱が行きわたらず水はけも悪いことで痛みがでているものと考えられる。

 

治療方針
①仰向け(背臥位)で全体の気血を整える全身調整を行う(本治法)。それには経絡治療のやり方を選択する。


②本治法と同時にふくらはぎにお灸をして熱を与え、頭部を鍉鍼で熱をさばくようにして下に熱を与えつつ、上の滞った熱を取るようにする。


③うつ伏せ(伏臥位)で主訴であるふくらはぎを緩めるようにする(票治法)。方法としては硬結(固くなっている部分)を中心に鍼を刺入する。またお灸で裏側からも熱を加えて血流を良くするように試みる。


④上半身も熱がこもらないようにアプローチをする。

 

施術その1:仰向け
仰向け(背臥位)にて手足、お腹を触って身体の状態を触知(切経)しつつ筋肉を刺激して緊張を緩める(按摩・指圧)。

 

お腹(中脘、天枢、関元)と手首(内関)に経絡治療で基本穴とされる経穴(ツボ)に鍼を刺す。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 腹部の鍼
腹部の鍼の様子
あじさい鍼灸マッサージ治療院 手首の鍼の様子
手首の鍼の様子

 

ふくらはぎの外側(足三里:胃経のツボ)と内側(陰陵泉:婦人科系疾患に効果あり)、足首(解渓:胃経のツボ)、足の甲(衝陽:胃経のツボ)に台座灸(長正灸)を置く。足に熱を与える。生理痛を考慮して婦人三穴の一つ陰陵泉を選択。熱を与えるのに胃経を選択。
※画像では足三里の灸は既に外しているため写っていません。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 足の鍼の様子
足の鍼の様子
あじさい鍼灸マッサージ治療院 足の鍼とお灸の様子
足の鍼とお灸の様子

 

頭部にステンレス製鍉鍼(ていしん:刺さない鍼)を当てて刺激。特に頭頂部の百会はストレスを鎮める効果を期待。頭部全体を擦って熱を取り除くようにする。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 頭部の鍉鍼の様子
頭部の鍉鍼の様子

 

★甲野主観
お灸は思ったよりも早く熱いと感じて取り除いた。湿度が高いせいか以前よりも熱く感じる時間が早い。触覚として冷えが比較的感じられなかったので納得できる。
患者さんの足が冷えているという話と対照的に上半身は汗ばんでいて暑そう。

 

施術その2:うつ伏せ
お灸を取り除き、鍼を抜いた上でうつ伏せ(伏臥位)になってもらう。肩、背中、腰、足を触って状態を確認しつつ筋肉を緩めるように刺激をする(切経と按摩・指圧)。ふくらはぎの浮腫みを感じつつ筋肉の固さを調べる。

 

膝の裏(委中)、ふくらはぎで固い・触って反応がある部分にやや深めに鍼を刺して置鍼。使用する鍼は山正社製で寸3-3番(長さ40㎜太さ0.20㎜)のディスポーザル(使い捨て鍼)。

 

置鍼と同時に外くるぶしの後ろ(崑崙:膀胱経のツボ、腰痛にも効果ありとされる)、足の裏(湧泉:腎経のツボ)、踵(失眠)に台座灸(長正灸)をする。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 ふくらはぎの鍼の様子
ふくらはぎの鍼の様子
あじさい鍼灸マッサージ治療院 足のお灸の様子
足のお灸の様子

 

肩や背中を全体的に鍼先で触れる(接触鍼)と鍼先で突っつく(散鍼)を行う。後頭部をまんべんなくステンレス鍉鍼で軽く刺激を与える。

 

★甲野主観
ふくらはぎの固さとともに浮腫みがあることが気になりました。鍼と灸を終えた後に足首を回したりリンパの流れが良くなるように求心性(下から上にむけて)でマッサージを行ったりしました。終えた後は少し浮腫みが解消されてアキレス腱が浮き出るようになったと思います。

 

施術その3:仰向け
最後にもう一度仰向けになってもらい、目の周りをホットタオルで押してリラックスするようにしました。


腹部を緩める手技(按腹)を行いつつ腹診もして状態を確認。少し柔らかくなっていました。


脈をみると(検脈)治療前より強く、浮いてきていました。

 

★甲野主観
あくまでこちらの感想ですが気の巡り、熱の分配が良くなったと思います。脈診で整った印象を受けました。

 

●術後の被験者コメント

足だけでなく、全身を治療してもらえました。質問にもわかりやすく教えてくださいました。
歩くのも辛かったのに、帰りは体全体が温かく、本当に楽になりました。ありがとうございます。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 施術後のふくらはぎ
施術後のふくらはぎ

  

全体を通して、いつもより説明を丁寧に細かくしたこと、画像を残すためにスマートフォンの撮影が入ったため時間に追われました。このあと患者さんは仕事があるのであまりのんびりもできませんでしたし。その条件でもっと手際よく施術全体を進められるようにしたいです。また同じ自営業で子育て世代であるため共通する部分があり、共感できることで話がしやすいことが助かります。

 

 

今回、患者さんからやってみたいという要望で行いましたが、術者側からすると普段通りのやり慣れたことでも受け手側の患者さんには「これは一体何の意味があるのだろう?」という疑問や、こちらの頭の中をもっと可視化してもらいたい、という希望があるのだなと思いました。

限られた時間での説明では腑に落ちない部分もあるのでしょう。

文字にしてまとめてもらうことで受けた施術を深く理解してもらい満足度が上がるのかもしれない。そのような新たな気づきがありました。

 

このようなチャンスを頂き、ありがとうございました。感謝申し上げます。

 

甲野 功

 

 

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