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~放置国家?~

週プレNEWSより
週プレNEWSより

 

7月にフリーアナウンサーでタレントの生島ヒロシさんがマッサージを受けて肋骨骨折をしたというニュースがありました。

 

サンスポ

生島ヒロシ、マッサージで人生初骨折「笑うと左の脇腹が痛い。トホホ」

 

普通ならば傷害事件になるところですが、当の生島ヒロシさんはあまり気にもとめていないため事件にもならず、行った施設の名前も出ませんでした。これが暴力で肋骨骨折をさせたら間違いなく傷害事件として逮捕立件されると思うのですがね。

 

生島ヒロシさん骨折の件を皮切りに現在の状況を追ったニュースが週プレNEWSに乗りました。

 

週プレNEWS

グレーすぎる施術でケガ人が急増中! 消費者庁も警告する「地獄マッサージ」の実態

 

週プレNEWSより
週プレNEWSより
週プレNEWSより
週プレNEWSより

 

 

地獄マッサージ」なる刺激的なタイトルとイラスト入りで記事が構成されています。


生島ヒロシさんという知名度のある方が骨折したということで世に知れ渡った事故。

生島ヒロシさんは温厚そうな見た目からは想像できない空手の猛者だそうで、芸能界ケンカ最強説が囁かれるほどの人らしいのです。空手の黒帯を取得しており、ベニー・ユキーデ(格闘技界では超有名人です)と対戦する話もでたとか。それほどの空手家生島ヒロシさんに起きた人生初の骨折がマッサージによる肋骨骨折だという。しかもあん摩マッサージ指圧師免許を持たない人間にされたマッサージによるというのです(週プレNEWSによれば)。

 

この週プレNEWSの記事は、生島ヒロシさんの件から日本のあん摩マッサージ指圧師免許を持たない無資格マッサージについて取材を進めています。

 

これまでに何度も書いており、改めてここでも書きますが、日本には通称「あはき法」と言われる法律が存在し、あん摩マッサージ指圧師免許を持たない人間のマッサージ行為を禁止しています(法律用語で業務独占といいます)。より正確には「業とする」ことを認めておらず、業とは<反復継続の意思を持って行うこと>と解説され、金銭の有無(営利目的かどうか)を問いません。このような複雑な表現をするのはあん摩マッサージ指圧師の専門学校生が練習を行うことまでは禁止していないという解釈にもなります。

 

このように厳然と法律があるのですが、「これはマッサージではないからね」という理屈で「整体」、「トリートメント」、「ほぐし」、「揉み」などと言葉を変えて資格免許を持たない人間がマッサージ行為を行っていますエステや風俗はどうなるのか?という話もありますが、管轄が異なります(この件はまた別の機会に)。これらと同じように医業ではありませんよ、という理屈で行っているのです。その選別はどこかとなると「圧を入れない、体重をかけない」という点になると言います(はっきりと法律で明文化されてはいませんが)。今回の生島ヒロシさんの場合、肋骨2本が骨折しているというので間違いなく圧を入れているのは確かでしょう。重度の骨粗鬆症を患っているという可能性もありますが、それならばなおのこと免許を持たない人間がやってはいけません

 

この手の話は前々からずっとあり、私は正直なところ飽きています。柔道整復師の逮捕もそうですが、あまりに多くてまたかという感じです。最近もサプリメントを密造していた容疑で柔道整復師7名が逮捕されましたが、ここまできたかと思うのと仕方ないかなという諦めが同居しています。

 

悪行や過失をしてしまうのは、やった当人の責任だと思います。しかし見方を変えるとやってしまう環境が原因とも言えるのです。違法行為を全く取り締まらない、注意もされない。その現状が不幸を招いているのではないでしょうか。

 

無資格、無免許者のマッサージも保険の不正請求も法で禁じられているのに野放しになっているから。

マッサージについては既に挙げた「あはき法」に規定されています。外傷でもないのに捻挫と称して保険請求をかけることもれっきとした詐欺行為です。それらを禁止しないからやり続けてしまう。誰も罰せられていないのならば法律の意味はなさないでしょう。

 

法律が統治するから法治国家です。そうでなければ独裁者の都合で全ての物事が決まってしまいます。そうならないように恣意的な人の判断よりも法律を上に持ってきたはず。しかし、私がいる業界では法律を無視する事柄がとても多いのです。この現状をある人は「放置国家」だと揶揄しました。なるほどと感心しました。

 

被害者もさることながら、加害者側にも同情してしまいます。法律があるわけで、それをきちんと取り締まっていれば余計な罪を追うことはなかったと思うからです


かつて多くの人々が平気で飲酒運転をしていました。おれは大丈夫だから、と酒を飲んで乗用車を運転していました。お店も頼まれれば無条件で酒を出していました。それがある大事故をきっかけに飲酒運転取り締まりが強化されて、飲酒運転はほとんどみられなくなりました。同乗者もお店側も処罰されることになったからです。

飲酒運転はもともと違法行為で、それを平気で破る人間が多かった。それを厳しく取り締まったから事故が減った。環境を変えたことで被害者も加害者も減ったのです。


私の業界も当たり前のことを当たり前にしてほしいものです。

 

このことは正義感でいっているわけではないのです。私も違法の側にいたからです。


あん摩マッサージ指圧師専門学校に入る前から整体と称してマッサージ行為をしていました。整体専門学校に入るまでは法律があることも知りませんでした。しかし勉強をして知識を得てからは、これではいけないと考えて国家資格を取る決意をしました。きちんと国家資格を取って堂々とできるようになると、いかにこの業界には無資格・無免許でマッサージをする人が多いか分かりました。


鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師になってからは整骨院で勤務していました。保険請求業務も全てやっていたので、内情をよく理解しています。グレーゾーンと柔道整復師にしか通用しない常識をかざして正当化して保険請求をしていました。医学知識に照らし合わせてみれば滅茶苦茶な理屈をつけて請求をしていました。私が柔道整復師でありながら整骨院を行わない理由の一つは保険請求を行わないと決めているからです。少なくとも嘘はつきたくありません。

 

結婚をして子どもも生まれて、余計なリスクを負うのは避けたいのです。少なくとも違法で儲けてそのお金で子どもに玩具を買っても、子ども達は大人になった時にどう思うのか。

 

大丈夫、大丈夫。みんなやっているから


赤信号みんなで渡れば怖くない、の精神で自己の観念がマヒしてしまっています。実際に摘発されるのはほんの一握り。不運な事故のようなもの。そういう感覚になっているのです。これも「違法ですから駄目ですよと言われない」環境によるもの。

たまたま発覚して捕まったら運が無かったと嘆くだけでしょうか。

 

やってはいけないことを放置していることで不幸が生まれます。法律を改正する気がないならばしっかりと取り締まれ。そのような気分です。

 

甲野 功

 

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