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~第35回鍼灸マッサージ教員養成科卒業論文発表会~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 発表会場入り口
発表会場入り口

 

昨日は毎年恒例となりました母校、東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科の卒業論文発表会に参加してきました。

 

私は30期卒で、今年は36期の発表です。教員養成科は2年制で、最高学年にあたる2年生が1年間かけて研究してきた内容を論文にまとめパワーポイントの発表資料にして、教員と生徒の前で発表します。


あじさい鍼灸マッサージ治療院 会場代々木校舎入り口
会場である代々木校舎入り口


必修科目であり、この卒論発表が教員養成科最後の授業となります(まだ課外授業は残っているようですが)。1年生も参加することが必修であり、ここで先輩の発表を聴いてこれから自分たちがどのような研究をしていくのか決めていくのです。

 

そのため、研究発表は点ではなく線となる場合が多いのです。先輩が行った研究を新しい観点、手法で継続していく。テーマによっては2年越しで完結するというものもありました。反対に新しい視点でテーマを作り、それが起点となって次の世代に継承されるものもあります。

 

毎年参加して思うのは研究テーマに流れ、いわば流行りがありその年の傾向が見えます。今年は美容鍼に関わるテーマが4例ととても多かったです。そして症例報告も例年よりも多かった気がしますし、医療機関と連携した発表も多かった気がします。
色々多かったというのは、今年は個人での研究発表が多かったので演題数が多いのです。この卒業研究は最大3名までグループになって発表できます。一人で行うのも複数名で行うのもありです。今年は特に一人で研究発表するものが多い年でした。


事前に抄録集を入手して読み込み、ある程度調べた上で参加します。そうすることでたくさんの学びと気付きを得ることができます。演題数が多いので少々大変でしたが、その分実りあるものになります。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 卒業論文抄録
卒業論文発表抄録集


 

昨年同様、各演題のタイトルを列記して軽く説明や所感を書いていきます。

 

1.スポーツウエルネス吹矢の特性調査とあはき施術効果の検討

 

毎年、この発表会で初めて知る知識があります。初っ端から初耳の単語が出てきました。「スポーツウエルネス吹矢」。高齢者を中心に展開している競技だそう。長い柄の吹矢で10m先の的を狙っていくもの。7万人の競技人口があるとのこと。
競技者に対して質問用紙によるアンケート調査を行い、活動の目的、体の不調、鍼灸マッサージへの期待などを調べました。そして一人の競技者に鍼灸マッサージなどの治療を行い、経過を発表しました。

 

この発表会は鍼灸師が活躍できる新しい分野を開拓する意味合いもあると思っています。スポーツウエルネス吹矢という、世間的には知られていないジャンル。そこにアプローチした報告です。間違いなく超高齢化社会を迎える日本で、これから鍼灸師の活躍が期待できるかもしれない提案がなされたと言えるでしょう。何事にも先行利益というものがあり、ニッチな他が目をつけていないところに入ることで有利になることがあります。

 

 

2.後頭下筋群への刺鍼による動体視力の変化

 

昨年NHKで放送された東洋医学特集。そこで東京大学附属病院の粕谷先生が後頭下筋群への鍼を紹介して、世間的な知名度があがりました。その後頭下筋群に鍼を刺して動体視力が向上するかを実験、検証しました。実験結果は、動体視力が向上するとはいかない結果になりましたがとても面白い発表でした。

 

鍼を刺入した状態で被験者に目を動かしてもらい、鍼が動くことで期待する後頭下筋群に到達したかが客観的に分かるという。これは臨床でも使えるやり方で勉強になりました。
これまで鍼刺激が視力に対する影響を研究発表した演題はありましたが、動体視力に注目したのは初めてで着眼点が素晴らしいです。発表者と会話をしたのですが、今後eスポーツ(テレビゲームを競技化したもの)への参入を視野に入れた研究だと言います。新しいジャンルに鍼灸師が進出する提案であります。ここに注目したことは興味深いです。


そしてパフォーマンス向上系の実験研究でした。私も教員養成科の卒業研究は低周波鍼通電刺激でジャンプ力が向上するかどうかをテーマにしたものです。マイナスをゼロに戻す治療ではなく、ゼロをよりプラスにしていくことをテーマにした研究に個人的に思い入れがあるのです。今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。パフォーマンス向上を狙う実験研究は重要だと考えています。

 

 

3.てい鍼による咬筋への接触刺激が美容に与える効果

 

今年4題ある美容鍼の研究の最初です。顔に鍼を刺すことへの恐怖、内出血のリスクがない「てい鍼(鍉鍼;刺さない種類の鍼、棒状のもの)」。それを用いた研究発表は以前もありましたが、今回は咬筋という筋肉に絞って着目した内容です。使用したのはステンレス製のもの。あとで発表する他の鍼との比較になります。顔の定点で筋硬度、水分量、油分量を測定しています。これらの指標は他の美容鍼の研究発表でも共通するものでありました。

 

刺激方法は顔の経穴(いわゆるツボ)10か所を押すものと、流すように擦るもの。鍼灸師らしい経穴刺激とエステのような流す刺激をミックスしました。刺激方法を考慮したことはあとで紹介する別の美容鍼演題と比較できるものです。


質疑応答ではてい鍼を使うことの是非、身体に刺す毫鍼(ごうしん)を使わないことの資格範囲のことが挙げられました。手軽にできる分、エステ等の非鍼灸師でも行えてしまうということです。他の発表でも出ましたが私が懸念している美容鍼の弊害と言えるものです。また別の機会で触れたいと思います。

 

 

4.円皮鍼刺激による顔のほうれい線へのアプローチの検証

 

円皮鍼という、短いトゲのようなものが着いたシール状の鍼を用いた研究です。これも美容鍼の一種です。貼る鍼ということで簡便で刺激量が少なく、セルフで使うことが可能です。この円皮鍼を練る前に顔に貼り、起床して外し、ほうれい線にどのような影響があるかを検証しました。

 

円皮鍼は誰でもいつでも同一刺激を入れることができるため、鍼刺激の実験研究に適しています。普段、臨床でよく用いる毫鍼(体に刺す鍼)ですと、必ず毎回同じように刺すことができるかという疑問が生じます。“十分な練習を重ねた”という前提で実験を行うのですが、均一な刺激を追求するならば円皮鍼を用いた方がいいのです。また円皮鍼はトゲが付いていない偽物(プラセボ鍼と言います)を作ることが可能で、これはつける側もつけられた側も本物かどうか区別がつきません。鍼灸用品メーカーのセイリン社が実験用にプラセボ鍼を用意してくれます。
こちらを用いることで、被験者も、術者も本当の鍼か偽物かが分からない“ダブルブラインド”という状況を作ることができます。鍼をしているから効果が出るはず、という心理的要因を排除することができるため実験精度が高くなるのです。毫鍼では流石に鍼が刺さっているかどうかは分かりますし、刺す側も明確に分かります。


円皮鍼でほうれい線を薄くするというのは東京医療専門学校(呉竹)でよく使われる方法です。円皮鍼で、かつほうれい線に注目するという実験デザインはシンプルでかつユニークと言えるでしょう。見事にプラセボ鍼では効果が認められず(有意差が出ない)、円皮鍼で効果が出たという結果に。実験内容も結果も理想的な研究だったと思います。

 

 

5.脂溶性皮膚炎による頭皮の落屑に対する鍼治療の効果

 

難治性疾患である成人の脂溶性皮膚炎。頭皮があたかもふけのように落屑するため精神的苦痛が大きいものです。脂溶性皮膚炎と診断されて他の対処方法を4年間試みるも効果の無かった患者さんに中医学的アプローチで鍼灸治療を行った症例報告です。3月~8月の6カ月に渡り症状を追いながら記録をつけています。また介入期(鍼灸を施す)→非介入期(鍼灸を行わない)→介入期(再び鍼灸を施す)ということ行うABA方式の研究デザインを採用しています。
鍼灸手法では中医学を選択し、弁証論治により陽明実熱証として、治則を清熱生津安神寧心と決めて行っております。通導利水清熱、泄湿熱、疏肝理気、安神寧心を目的とした配穴(経穴、つまりツボを選ぶこと)をしています。評価方法として夜間就寝時に生じた落屑の量を計測しています。介入期は症状が改善し、非介入期にはまた症状が戻り、次の介入期で再度症状が改善し、最終的に成果が出たという結果でした。

 

私は中医学がそこまで得意ではないので患者さんへの治療方針、配穴と素直に勉強になりました。そういう風に考えて経穴(ツボ)を使うのかと。臨床がメインである私には実戦で使えるやり方を紹介してもらった感覚です。卒論発表会は知らなかったことを、特に臨床で使える内容を知る良い機会です。

 

 

6.審美六鍼による施術前後の客観的及び主観的変化

 

審美六鍼という古代九鍼を現代美容向けに改良した刺さない鍼を用いて美容効果を測定した研究発表です。他の美容鍼の研究発表同様、肌の状態を客観的に測定し被験者の主観的な感想を調査しています。肌の水分量、油分量、弾力など全ての客観的数値が改善される(統計処理を行い、有意水準を満たす結果)という望ましい結果に。被験者の満足度も高いという報告でした。

 

審美六鍼というものを知らなかったので事前に調べたのと発表を聞いてどのようなものかある程度理解し、今度使ってみようかと思っています。卒論発表会で新しい器材を導入することはあり、吸玉は数年前に卒論発表会の報告から自院で扱うようになりました
質疑応答で私は質問したのですが、技術的な特徴はあまりなく器材の特性に頼るところが大きいため、誰が使っても効果が出るであろうという予測。こうなると非鍼灸師でも良いわけで今後心配だなと思いました。

 

 

7.刺鍼本数による美容鍼効果の違いの検討 ― 肌年齢、水分量、油分量を指標として ―

 

4例目の美容鍼に関する研究です。他の3例と異なり、しっかりと肌に鍼を刺す毫鍼の研究で、しかも本数が多い場合(40本)と少ない場合(10本)で違いがあるのかを検証しています。器材を用いて肌年齢、水分量、油分量を測定し質問紙調査で被験者による効果の違いを聴取しています。

 

個人的な感想ですがとても秀逸な研究だと思いました。果たして顔に刺す鍼が多い方が効果があるのか否か。おそらく美容鍼を受ける利用者の素朴な疑問を検証しています。術者である私も気になっています。とても有用でこれから必要な視点だと考えます。この発表に大きな刺激を受けました。改めて美容鍼について後日まとめようと考えています。

 

 

8.コメディカルに対しての鍼灸の意識調査 ― 一病院のリハビリテーション科における鍼灸のイメージ ―

 

理学療法士でもある発表者が、あるリハビリテーション病院のコメディカル(具体的には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)に鍼灸に対するイメージをアンケートで調査を行った報告です。67名から回答が得られました。鍼灸治療の経験、鍼灸は国家資格であるか、鍼灸を行っている医療機関を知っているか、海外の鍼灸治療について知っているか、鍼灸のイメージ、チーム医療における鍼灸師の必要性、患者に鍼灸治療を勧めるのか、鍼灸治療の効果や適応、鍼灸治療の保険診療の有無について、を選択式で質問してそれぞれの回答に自由記載で理由を書いてもらっています。
結果は予想できたものですが、厳しい結果でした。

 

事前に抄録集を読んで一番興味があった内容でした。私はクリニックと大学病院の2つの医療機関で勤務した経験があり、医師やコメディカル(この場合は看護師など)と接して考えることが多かったのです。それは悩むもので。会場にいた斎藤校長(東京医療専門学校東京校の校長)も質疑応答で真っ先に質問していました。私も休憩時間に発表者の先生と意見交換をして、互いの病院勤務の経験や他の職種から見た鍼灸師像について話ました(発表者は理学療法士、私は柔道整復師の肩書を持ちます)。

とても重要なテーマでこの情報を得ただけでも会場に行った価値があるものだと思います。

 

 

9.睡眠時無呼吸症候群における鍼灸治療の効果 ― CPAP療法の質問紙調査と経絡治療の2症例 ―

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対して鍼灸を用いて治療した症例報告と、SASの主な(標準的な)治療方法であるCPAP(経鼻的持続陽圧療法)の使用感についてアンケート調査を行っています。症例報告は経絡治療を用いた2症例であり、それぞれ脾虚証、肝虚証と証立てをして行っています。無呼吸低呼吸指数(AHI)と経時的酸素飽和度(SpO₂)を指標にしています。

 

当然医師の診断によりSASと診断されていること、AHI、SpO₂測定には専用機材が必要であり、医療連携をした症例報告といえるでしょう。そこに経絡治療という伝統的な鍼灸手法を介入させています。本発表も経絡治療を具体的に行っている事例を知ることができて実践的な参考になりました。SASは症候群というくらいで原因がはっきりしないものであります。肥満により物理的に気道が圧迫されているというのは別として。そのような疾患には経絡治療が有効だろうと感覚的に思いますが、数値による(つまり現代医学的に)効果を測定したデザインは重要だと思います。

 

 

10.耳鍼刺激による手掌部の精神性発汗に対する変化

 

手掌部の精神的発汗耳鍼によって抑えられるのか、という実験研究です。2点の耳のツボ(交感神門)に円皮鍼を貼ったうえで計算問題を解くという心理的ストレス負荷をかけて手掌部での汗の量を測定しました。耳鍼をしない無刺激群と比較しています。無刺激群では汗の量に有意な変化は見られず、刺激群つまり耳鍼をした方は優位に減少したという結果でした

 

耳鍼については最近NHKの番組でアメリカ軍が開発したという耳鍼が紹介されました。日常的に露出している部位でやり方も比較的簡便であり、今後注目させるものかもしれません。私は鍼灸マッサージ専門学校時代にダイエットの研究で耳鍼を扱っており、親しみがあります。目の付け所、先行研究の調査、研究デザイン、実験プロトコル、結果、考察と綺麗にまとまっている研究発表でした。

 

 

11.背部または殿部の筋に対する鍼通電が腰部の筋緊張へ及ぼす影響

 

腰痛に対して鍼を行う際に、局所の腰部以外に殿部や背部にも鍼を用いることがままあります。では殿部と背部、どちらの鍼の方が効果はあるのでしょうか。その疑問を検証した研究です。大殿筋広背筋にそれぞれ低周波鍼通電(パルス)を10分行い、腎愈という定点の筋硬度を比較しました。殿部の鍼刺激は有意に筋硬度が低下し(筋肉が緩み)、広背筋の方は変化がなかったという結果に。

 

この実験研究も着眼点が秀逸だと思いました。ありそうでなかったというか。鍼灸には遠隔治療という患部とは別の部分に刺激を与えて治療を行うことが日常茶飯事なのですが、どこの部位がより有効なのか。あまり考えることなく使っていると思います。少なくとも私は効果が出ればいいと思って深く考えていませんでした。

 

 

12.鍼治療における視覚的フィードバックの効果 ― 鍼治療を「見ない」・「見る」の比較 ―

 

鍼を刺されるところを見た方が痛くないのではないか。その疑問を検証する実験研究でした。天宗穴という肩甲骨にある自分では見えない個所に刺鍼し、それをカメラで撮影しモニターにリアルタイムで写します。被験者はモニター越しに鍼が刺さる瞬間を見ます。その時の痛みを主観的に数値化して、モニターを見ない時と比較します。また肩関節の動きに変化があるのかを測定しています。
刺入痛という鍼を刺すときに感じる痛みはモニターを見た方が有意に低下し痛くないという結果に。肩関節内旋という動作においては見る方がより効果があったという結果でした。

 

この着眼点も面白いです。私は鍼を受けるのがずっと苦手でなるべく受けたくないと避けてきました。注射も嫌で刺されるのを見ないようにしています。それが見た方が痛くないという可能性が示唆されました。意外です。ただほぼ被験者全員が鍼灸師であり、いわばプロ。刺す方も刺される方も十分になれています。鍼灸未経験者であればどうなっているのかは議題にあがっていました。しかし患者さんに話すネタとしては一般受けしそうで更なる研究が期待できます。

 

 

13.仙骨部へのローラー鍼が精液所見に及ぼす影響

 

NHKで放送された東洋医学特集番組で会陰ローラーが紹介されました。そのことを参考に仙骨部にローラー鍼で刺激をして精液の状態が変化するのかを実験しています。1回5分、週2回の頻度で計24回。刺激前後での精液を検査会社に依頼してデータをとっています。精液のpH、濃度、運動率、正常形態率の4項目をみて統計処理を行いました。
結果は正常形態率だけが有意に減少し、他の項目は変化がありませんでした

 

変化が無かったことも意外でしたが、正常形態率が減少したという結果は大変驚きました。端的に言えばローラー鍼刺激で悪影響が出たということですから。被験者が6名と少人数であること、生活習慣の指導を行わなかったこと、パートナーがローラー鍼をしたら結果が違うのでは、など考察は色々できますが結果は結果です。数学的統計処理を行っているのでたまたまというわけにはいきません。考えさせられる内容でした。

 

今年は2例、男性生殖器に関する発表がありました。これまでに女性の生理に対する研究がありましたが、男性の性に対する研究はほとんどありませんでした。とてもプライベートな内容でありますが、男性の方も向き合う時代になってきたと感じました。

 

 

14.低気圧による体調不調と東洋医学的体質の関連性 ― 改訂版五臓スコアを用いて ―

 

低気圧で体調が悪くなるという人に傾向はあるのでろうか。東洋医学で用いる五臓スコアでタイプを分類してみよう。低気圧を感じるセンサーは耳にあるので、東洋医学的には腎と関係するであろう。そのような着想から出たものです。383名もの回答が集まり、台風接近・通過中・通過後と全般的に体調が悪いと答えた人の五臓スコアは特に脾→腎→心の順にスコア値が高いという結果に

 

座長の中村先生も話していましたが383枚の回答というのはかなり良いサンプル数です。質問内容を絞って回答しやすくした結果だといいます。昨年もありましたが性質をタイプ別に分けて検証するというは実に東洋医学的です。陰陽という2種類に万物をわける。さらに5つに分ける五行。この研究から新たな研究が派生するように思います。

 

 

15.歯科治療後に発症した口腔内灼熱症候群に対する鍼治療 ― 光線治療と鍼治療の併用により効果があった1症例 ―

 

口腔内灼熱症候群を訴える患者さんに、舌そのものに鍼を刺すという局所治療を併用して結果を追いかけた症例報告です。歯科医にて診断を受けており、医療機関にて光線療法を受けてきた患者さん。段々とその効果を感じられなくなり、鍼治療を併用するようになりました。症状が改善されたと報告されました。

 

舌に鍼を刺入する。すぐに抜くとはいえ、かなり珍しいやり方です。私は考えたこともありませんでした。舌には経穴が定まっていません。専門学校でも習ったことがありません。この場合、鍼管という管で触知して反応した個所に刺してすぐに抜くという方法でした。未知の世界を知りました。そして口腔内灼熱症候群(別名バーニングマウスシンドローム、舌痛症)のことも初めて知りました。
この症例も難治性疾患であり、医療連携の上での鍼治療です。とても良いことだと思います。

 

 

16.首肩こりに対する経皮的電気刺激療法の効果 ― 申脈、陽交穴にける頸部可動域の変化 ―

 

遠隔治療の実験です。東洋医学的な観点から足の経穴を選択し、そこにスポットゴム電極を用いて刺激をします。刺激群と無刺激群に分けて首の関節可動域で比較します。使用する経穴(ツボ)は申脈陽交。申脈は外くるぶし辺りにあるツボで陽交はふくらはぎの外側で真ん中くらいの高さにあります。一見首の動きと関係がなさそうな部位に刺激を与えます。また刺激方法は鍼ではなくゴム電極を用いるところがポイント。無刺激群は結果に差がありませんでしたが、刺激群は有意に可動域が上がった結果になりました

 

低周波鍼通電(パルス)を用いた実験はよくみますし、私もパルスの実験を行いました。浅い部分の経筋へアプローチするためにゴム電極を採用したといいます。選択した経穴は足太陽膀胱経で陽蹻脈の申脈穴と足少陽胆経で陽維脈の郄穴でもある陽交を循行取穴理論に基づき選択したという点も興味深いものでした。私はほぼ臨床でこの2つの経穴を用いることがないためです。勉強になります。

 

 

17.ヘルスケア産業におけるホームページの現状と考察 ― リラクゼーション業とあはきのホームページの検証 ―

 

ホームページの研究です。教員養成科では臨床や古典、実態調査だけでなく、開業して食っていくために必要と思われる内容も研究対象にしています。今やネット環境は切っても切れない状況であるのでリラクゼーションのホームページと鍼灸マッサージのホームページを比較しています。

 

本校校長は広告検討員会や医療広告ガイドラインを挙げて、開業するのならば絶対にチェックをしておきなさいと仰っていました。座長である教員養成科中村科長も、どれだけ良いことをしていても外に発信しないといけないと述べました。私も全く同じ意見であり、更に景品表示法もチェックしておくものだと思います。学校がホームページや広告についてもしっかりと認識していることが伺えました。

 

 

18.根治的前立腺癌摘除術後の勃起障害に対する一症例

 

女性でありながらED(勃起障害)の鍼灸治療を行った症例報告です。ミカエリスの菱形と言われる第4腰椎棘突起、左右の上後腸骨棘、殿裂の上端を結んだ範囲を用いました。指標となるスタンプテストやエレクトメーターを紹介し、普段あまり知られないED治療の実態を報告しました。

 

とてもセンシティブな内容で、男性の性に対して女性術者が対応するという稀有な発表だったと思います。生理に対する鍼灸を研究した内容はこれまでにあり、昨年は男性研究者が生理をテーマに研究発表を行いました。今年は反対に女性が男性のEDについてです。良い意味でボーダレス化が進んでいると感じます。
なお発表した内容は男性の私でも知らないことだらけで、ED治療についていかに情報が出回っていないのかを痛感しました。

 

 

19.認知症の行動心理症状に対する鍼治療の一症例 ― ABC認知症スケールおよびNPI-Qを指標として ―

 

認知症患者の行動心理症状に対して鍼灸治療を用いて、それをABC認知症スケールNPI-Qを用いて検討した症例報告です。鍼灸治療は中国で生まれた三焦鍼法を用いています。ABC認知症スケールは新しい指標であり、介護者へのインタビューを行います。そのため患者本人が回答できない状況でも評価できます。更にガイダンス資料があり医療従事者という専門職でなくても扱えるというものです。本症例では入院している患者さんへの症例報告で評価をしたのが看護師でありました。別の医療職種と連携したものとなっています。一定の改善が見られたと報告しています。

 

ABC認知症スケールもNPI-Qも初めて知る言葉でした。別の認知症スケールは聞いたことがあったのですが。普段馴染みのない疾患に関する情報を得ることができるチャンスがこの卒論発表会だと実感しました。座長の中村先生は、学校外の医療従事者に鍼灸の効果を認めてもらう意義のある発表だった、と仰っておりました。納得です。

 

 

書き出して簡単に振り返るだけでも大変なくらいの量と内容でした。


繰り返しになりますが、本当に新しい知識、そして業界の流れを掴める場です。今回開催直前にTwitterで開催告知を東京医療専門学校が行い、かつ外部の人でも参加可能と出しました。このことだけでも画期的で、本当に人知れず行っていた卒論発表会を外にアピールしました。そして他の鍼灸専門学校夜間部の1年生が会場に訪れました。これまでだったら考えられないことです。このことも時代の変化だと思います。

 

この日得たことはたくさんあるので、何かに注目してもう少し書いていく予定です。

 

甲野 功

 

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