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~鍼灸とプロレス業界~

百戦錬磨 ハロルド・ジョージ・メイ 時事通信社
百戦錬磨 ハロルド・ジョージ・メイ 時事通信社

 

鍼灸とプロレス

この両者はとても似ていると思っています。現役の鍼灸師であり、四半世紀にわたりプロレスを見てきた者の私見です。

 

一体に何に共通項があるのだろうか?と疑問だらけの人がほとんどでしょう。しかしプロレスが好きな鍼灸師にこの話題をふると、大体頷きます。それは両者の特殊な状況が似ていると考えるからです。


一言でいえば知名度があるのに世間的にマイナー。認知されているのに人気が(あまり)無い。この意見はプロレスファンからも鍼灸業界の関係者からも異論反論があるかもしれませんが敢えて書いてみます。

 

まず日本人で鍼灸というものを聞いたことも見たことも無い人もまずいないかと想像できます。

小学校低学年より下の年齢だと知らない可能性はありますが、成人であればどこかで目にする耳にすると思います。最近ではNHKの東洋医学特集、大河ドラマでお灸のシーンが出た、などの国営放送に出てきました。サンリオの人気キャラ「ポムポムプリン」がお灸を受けているイラストがありました。

 

ポムポムプリン【公式】Twitterより サンリオ著作
ポムポムプリン【公式】Twitterより サンリオ著作

 

 

いまや美容界隈で鍼を受けることは常識的なことになっています。大ヒットマンガ「キングダム」にも鍼のシーンが出てきますし、古くは故手塚治虫氏の「ブラックジャック」にも盲目の鍼師が登場します。少し前の韓流ドラマブームのときは「チャングムの誓い」で鍼灸シーンが出てきました。
存在自体を知らない人はとても珍しいと推測しています。

 

しかし鍼灸を受けたことがあるという受診率はデータによって数値が変わりますがだいたい国民の4%程度と言われています。この数値をそのまま受け取れば日本人の大多数は鍼灸を受けたことがなく、とてもマイナーなものということになります。ただし有訴者、つまり体に何かしら不調を感じている人が鍼灸を選択する割合はここまで低くはないであろうと予想できます。過半数とはいかないまでも。

 

前に同じようなことを書いたのですが、鍼灸は「世間で認知されているが人気が無い」と言えるでしょう。しかし鍼灸は熱烈なファンがいるのも確かです。これだけ鍼灸師がいて、私も含めて、少なくない鍼灸師が生活できています。ピークは過ぎたと言えるでしょうが新規の(免許を取得する)鍼灸師は毎年3,000名以上います。それだけの市場があるというのは鍼灸にはリピートするファンが多いと言えます。好きな人は大好き、といいますか。

 

同じようなことがプロレスにも言えるでしょう。

 

日本人でプロレス自体を知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。四角いリングにロープを張り、戦う。認識の程度の差はあれ、プロレスって全く想像もできません、という人は少ないはず。芸能人、特に芸人さんは熱烈なプロレスファンが多く、テレビ番組で特集が組まれることもしばし。


現在アメリカで最も知られる日本人はWWE(アメリカの世界最大プロレス団体)に所属する中邑真輔選手と言われています。中邑真輔選手はテレビCMにもバラエティ番組にも出演していますから、プロレス及びプロレスラーは広く認知されていると考えられます。

 

とはいうものの実際にプロレスを生観戦したことがある人がどれだけいるでしょうか。それこそ鍼灸受診率と同様5%未満くらいなのでは。100名いて5名いればいいくらいの感触です。テレビやネットで画像を見たことがある人はかなりいると思いますが、1試合を最初から最後まで視聴したことがあるという人は相当少なくなると思います。

そしてプロレスにも熱烈なファンがいます。それこそ伝道師のようにプロレスを広めようと熱心に周囲を誘う人々がいるのです。

 

鍼灸もプロレスも曖昧ではっきりしないところがあります。
鍼灸師は真顔で「気の流れが」とか「脈から体調がわかる」と言います。世間の常識からすると奇異にうつるでしょう。
純粋に疾患を治すという点では医師の方が上ですが、現代医療が苦手な部分には鍼灸師の方が得意なことがありますし鍼灸師だからできることがあるので大宝律令の時代から我が国に残っていることでしょう。

 

プロレスも既に多くの媒体でカミングアウトしていますが勝敗が決まった状態で試合をするのが通常です。ただしどのように試合を組み立てるかはレスラーの力量によるため、ダメなレスラーでは試合が盛り上がりません。肉体を使ったエンターテインメントという意味でレスラーはリングに立っています。総合格闘技のようにルールの中で相手に勝てばそれでいいということではない分、困難であるともいえるのです。(※関係者の証言によれば勝敗を決めないで行う試合があったそうです。そして真剣勝負のために裏で鍛錬を積んできたという過去が厳然とあり、プロレスラーから総合格闘技に転向して大成功した選手が何名かいます。)

 

鍼灸もプロレスも懐が深いとも、守備範囲が広いとも、奥深いとも表現できるように思います。
有名なプロレス記者の言葉に「プロレスは底が丸見えの底なし沼だ」という表現があります。これは傍目には底が見えていて単純なようで、いざ入ってみると底が無くどんどんと深みハマっていくというようなニュアンスです。同じことが鍼灸にも言えると思います。臨床鍼灸師の立場から特に。

プロレス同様に鍼灸は胡散臭い、嘘くさい、カルト宗教のようだ、など偏見や嫌な見られ方をすることがしばしあります。これはあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師では感じないもの。悪評をたたかれることはあっても、怪しい感じがすると言われることは二つの資格からはまずありません。他に2つの資格を持っているから、より鍼灸の独特さ加減を体感します。

 

このようなことは以前から考えていたのです。そして現新日本プロレスリング社長兼CEOのハロルド・メイ氏の著書を読んで更に考えるようになりました。

ハロルド・メイ氏はハイネケン、日本リーバ、サンスターを渡り歩き、日本コカ・コーラ副社長、タカラトミー社長を経てヘッドハンティングされて新日本プロレスにやってきました。これほどの経歴を持つ人材がプロレス団体の社長になるとは。新日本プロレスはここ数年業績が大いに上がり、第三期黄金期と言われています。

 

ハロルド・メイ社長は著書でこのように書いています。

 

そしてプロレスへの偏見や誤解を無くすには内部の改革だけでなく、世の中に向けて新たなイメージ戦略やブランディングも必要です。
プロレスを少し見下すような人がいるのは、プロレスを中途半端に知っている人が多いこと、知名度があることが要因だと思います。人は見たことも聞いたこともないものを見下すことはありません。子どもの頃に家族が見ていた、昔テレビで見たことがあるなどの限られた古い知識だけで、今のプロレスをジャッジしないでほしいです。

 

この文章を読んだときにとても腑に落ちました。プロレスは知名度があることが偏見や誤解を生むという見立て。人は見たことも聞いたこともないものを見下さない。まさにその通りです。このことが鍼灸にも当てはまるのでは。むしろ鍼灸には知名度があることが問題の一つなのではないか。そう思いました。
中途半端に知っている人が多いこと限られた古い知識だけで今のプロレスをジャッジしないでほしい、という言葉は深く心に刺さりました。ハロルド・メイ社長は団体の社長という当事者。私はプロレスをみるだけのファン。当事者側の意見が、鍼灸を行う鍼灸師の私に「これはまさに鍼灸も同じだ!」と痛感したのでした。

 

このことについてハロルド・メイ社長は対応策を述べています。

 

今のプロレスを再認識してもらうためにできることはたくさんあります。タカラトミーで定番商品のリカちゃんを見直し、新しいラインアップの発売やSNSなどさまざまな対策を講じて再び人気が復活したように、知名度があるならどんなものでも復活させる自信があります。また10代や20代の若い世代は昔のイメージにとらわれることなく今のプロレスに新たに出会うことを頭に置いて、さまざまなプロモーション活動を展開しています。さらに海外の人が新日本プロレスを見た時に彼らの目にはどんなふうに映るのか、今何が海外向けに足りていないのかという点についても常に意識しています。外国人経営者だからこそ見えることはたくさんあります。

 

知名度があるならどんなものでも復活させる自信があります

どれだけ頼もしいセリフでしょう。他業種、それも一流企業で成果を残してきたプロ経営者の言葉だけに真実味があります。このことは鍼灸にも言えて、若い世代が昔の鍼灸のイメージ(果たしてそのようなものがあるのかは定かではないのですが)にとらわれることなく今の鍼灸に出会うようにすれば変わるように思います。


そしてプロレスラーではない、日本人でもないハロルド・メイ社長だからこそ見えること、できることがあるのです。氏は熱烈なプロレスファンであるという前提条件がありますが。同じように鍼灸師ではない経営のプロが、愛情を持って鍼灸院(あるいは団体)を経営・運営したらブレイクスルーに繋がるのではないかと夢想してしまいます。

 

ハロルド・メイ社長は企業をよくするために具体的な方法として「お客様相談室を充実させる」としています。これは新日本プロレスに限らず他の業種でもそうだったようです。クレームを受けるというネガティブなイメージではなく、エンドユーザーの生の声を聞くことができる貴重な存在と受け止めているのです。鍼灸業界に「お客様相談室」のような存在は知りません。おそらく世間の方はどこに相談していいのかも判断できないことでしょう。ハロルド・メイ社長の着眼点は鍼灸にも応用できるのではないでしょうか。

 

今や新日本プロレスは創業以来最高益をたたき出し、アメリカにある世界最大プロレス団体WWEを追いかける世界2位の規模に成長しています。長らく独り勝ち状態だったWWEに対抗できそうな唯一の団体になりました(現時点ではまだまだ差が大きいですが)。長らくプロレスを見続けているからこそこの躍進に心を動かされます。鍼灸師も参考にできる好例だと考えています。

 

甲野 功

 

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