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~鍼の話 鎮静させる~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 鍼を刺すところ
うつ伏せで腰に鍼を刺す様子。

 

昨日の夕方、長女が足を捻った!と従妹におんぶされて私の近くまでやってきました。家の中ではしゃいで遊んでいて足首を挫いたといいます。
柔道整復師免許を持つ私は各種検査などをして軽い捻挫(足関節Ⅰ度捻挫)だろうと判断し、アイシングをしてから綿包帯で固定しました。その後経過観察をしていますが、自力で歩いているのでそこまで重傷ではないとみています。

 

私のもとに来てからも包帯を巻いた後も長女は、こうすると痛い、少し痛みが和らいだ、こんな経験は初めてだ、骨折だとこれくらい痛いのかな、など延々と喋っています。そんなに喋ってそれで治るか?と内心思いながら聞いてあげました。

 

臨床現場ではこのようなことが割とあります。

患者さんがずっと喋っているのです

 

最初の問診で一つ質問をすると切れ目なく話を続けて、どんどん関係のないところに話題が移っていきます。こちらが知りたい回答が出てこないので何とか話を切り上げて内容を変えていきます。あまりに話が止まらない方はベッドに移動してもらって触診を兼ねた按摩指圧を始めるようにしています。問診は取り調べのような雰囲気になるので、ベッドに寝てもらって体を触ることで物理的距離をゼロにしつつ気持ちを落ち着かせるように試み、大事なポイントを聴くようにします。

 

話が止まらない、という状態は大切な観察ポイントです

 

何か不安や不信感があると言葉が溢れでてくることがあります。詐欺師はよくしゃべる、後ろ暗いことがあると人はたくさん話す、互いの関係性がぜい弱だと沈黙が怖くて話をしてしまう、など一般的に言われることです。臨床においては特に精神的な不安、恐怖、不安定さがあると話が止まらないことがあるので注意して観察します

うつ病や不安症の方はしゃべり続ける傾向があるように感じます。また私に対してや、初めて訪れるあじさい鍼灸マッサージ治療院に不安がある新規患者さんも話が止まらないように感じます。


東洋医学的には、気がうっ滞している人は話をすることで、息を吐き感情を外に出すことができて楽になるので喋ってしまうという考えが成り立つかもしれません。これに近いのですが、日常のストレスを発散させるために喋ってしまう方も少なくありません。内容は重要ではなく、雑談する行為自体が楽しい、という感じです。

 

話が止まらない方はなるべく話を聴くようにしています。

 

按摩指圧に入ってしまえば話をし続けてもさほど問題がないので様子を見ながら施術を進めていきます。
反対に問診時にあまり話をしてくれない新規の患者さん。不安や不信があるのかもしれませんので、按摩指圧をしながら物理的にも精神的にも距離を縮めて会話を引き出すようにします。話をしてくれないのも注意が必要ではあります。

 

話が止まらないの場合でも、あることをするとだいたい話が止まります。それは鍼を刺すことです

鍼と言っても色々な種類があるのですが、毫鍼という体の中に刺す鍼をするとき、この時に話が止まることが多いです。

特にうつ伏せの状態で腰や背中、肩、足の裏面などに割と深めに刺す鍼を刺すとき。このときはずっと話をしていた方も無口になり、ときに寝てしまうことがあるのです。なお経絡治療でよくやる、仰向けの状態でとても浅く刺す鍼や接触鍼といって鍼先を皮膚に当てるだけで刺さないやり方や、鍉鍼という刺すのではなく擦る・押すものではそこまで静かにならないように思います。そのときの状況によりますが。

 

これまでの経験で筋肉に効かせる深めに刺す鍼をすると落ち着く、言葉が少なくなる、といった鎮静させる効果があるように感じています

 

これはいったいどういうことでしょう。学校で習う教科書にはそのような作用は書かれていません。
リラックスするという意味で副交感神経が優位になるという仮説が立つかもしれません。それならば按摩指圧であっても同じ効果が予想できるので、按摩指圧時は話が止まらず鍼を刺しだしたら静かになる、という現象は説明できません。鍼を刺されるという、人体にとってはより危険な行為ではリラックスより緊張する方が一般的な反応だと思うのです。

 

鍼灸師は結構認めませんが、人体の本能で考えれば鍼が体に刺さることは侵害刺激で緊張するのが当たり前です。画鋲を踏んだ、予防接種の際の注射、安全ピンを誤って皮膚に突き立ててしまったこと、これらの経験から鍼が体に刺さったら痛いということを知っています。相当鍼を受けることに慣れていれば別ですが、通常は恐怖心が出て当然だと考えます。

それにも関わらず鍼が体に刺さった状態で落ち着くのは何故なのか。元来、鍼を受けるのが嫌いでここ数年で体験することに抵抗が無くなった臨床歴10年以上の鍼灸師である私が想像してみます。

 

理由は、患者さん自身が身体に意識を向けて集中するようになるから、ではないかと推測しています。

 

鍼が身体に刺入する。指で押される、揉まれるのとは違った緊張感があると思います。身体の中に鍼が入っていくことで意識がそちらに向いて何か異常がないかをチェックするようにしているのではないかと考えます。感覚が研ぎ澄まされるといいますか。繰り返しますが鍼が体内に刺さって進入してくることは人体にとっては異常事態。そのため意識を集中して備えるのではないかと。その結果、気持ちが落ち着くのではないでしょうか。

 

うつ伏せになっていて視界が遮られている状況も関係すると思います。視覚から入る情報は膨大なので、それが無いぶん体の感覚が鋭くなるのではないでしょうか。ただ按摩指圧で指で押される場合でもうつ伏せでは視覚情報は無いので、やはり鍼が体内に入っていく方が感覚を集中するように思えます。


意識が内側に向いて会話が止まる。それから眠ってしまう、あるいは軽い睡眠状況になる、という感じです。

 

ここまでの話はあくまで私の経験による仮説です。機序(どのようにそうなるかのシステム)を実験で調べたわけではありません。ただ繰り返しますが患者さんとの会話は臨床上とても重要で、話し方、内容、話す時間などをしっかりと観察しています。ときにちょっと精神的に不安定だなと思う時に、鍼をすることで落ち着いてくれたと助かることがよくあるのです。

鍼灸師の先生によっては、鍼には深いリラックス効果があると述べる人もいます。確かにあると思います。ただそれは指で押される按摩指圧とはまた違ったことが要因になっているのではないかと考えています。

 

機序が証明されていないですが、刺鍼(鍼を刺すこと)には鎮静させる作用があるように思います。

 

甲野 功

 

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