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~青春の1ページ、えぞ松の思い出~

開店閉店サイトより
開店閉店サイトより

 

新型コロナウィルス流行により、ビフォーコロナ&アフターコロナという概念ができてきたと考えています。コロナ前とコロナ後。私も仕事や家庭環境が今年の2月~3月辺りから変化していき、4月に入ってがらっと変わったと思っています。これは大事になっているという実感。4月から身の振り方を真剣に考えるようになりました。

 

7月に入り、3~5月時期の負担が表面化してきて倒産、閉店、撤退、規模縮小という企業や店舗、個人が目立ってきたと思います。4月からその兆候はありましたが、ここ最近より顕著になってきたなというか。理由の一つは私が意図的に情報を取りにいっているからでしょう。誰もが知るような大企業の報道もそうですし、その地域の人しか知らないローカルな小さなお店まで、社会環境の変化を読み取るために情報収集をしています。そうすると自然とネガティブなニュースが目につくようになるわけです。

 

特に近隣地域の動向には注目していて、新宿区牛込地区や神楽坂、飯田橋近辺のお店や施設がどうなっているのかをよく観察しています。前から変わらないのか、お客さんが減っているのか増えているのか、撤退したのか、などなど。

 

その過程で全国の開店と閉店について情報を集めたサイトを見つけました。ここで近隣の閉店したお店をチェックしていたところ、目に留まったのが


<【閉店】えぞ松 神楽坂店>


の文字でした。

 

開店閉店 【閉店】えぞ松 神楽坂店

えぞ松。私が東京理科大学に通っていた時期に繰り返し入った中華料理店です。
大学時代の思い出と言える思い入れの強いお店。そのえぞ松が知らぬ間に閉店していたのです。これには少なからず落ち込みました。


情報からも閉店時期からも新型コロナウィルスの影響によるものでは無いと思われます。建物が古くて建て直しのための閉店。確かに私が大学の頃から古い建物だったので致し方ないことでしょう。私の大学時代はもう20年も前のことですから。

 

これも時代の流れと言えばそれまでですが、やはり悲しいものがあります。閉店を知っていればその前に足を運んだのに、と悔いがあります。このような気持ちにならないように近所のお気に入りは確認しておき、行けるところは行っておこうと考えるようになっています。

 

えぞ松とはどのようなところだったのか。

 

外堀通りに面した路面店でカウンター席しかない小さなお店でした。隣が神楽坂飯店という同業の中華料理屋で反対隣はステーキ店だったと思います。飲食店が並ぶエリアでしたが大学当時の私はえぞ松だけに足が向いていました。

 

18歳で飯田橋にある東京理科大学に入学しました。入学ガイダンスでまだ知り合いや友人もいない頃、たまたま隣に座っていた同じクラスの人と昼飯に入ったのがえぞ松との出会い。一緒に入った人はそれから関りが無くなって名前も覚えていないくらいで、本当にあのときの彼は同じクラスだったのか?と思い返すほど印象がないのですが、えぞ松に初めて入ったことはよく覚えています。味噌ラーメンを頼んだところ大量にもやしが入っていて驚いた記憶が未だに鮮明にあります。ここが最初でした。1996年の春のこと。

 

そして私は舞踏研究部という社交ダンスを競技として行う部活に入部します。新しい環境に慣れ始めた頃、1学年上の女性の先輩に
えぞ松の麻婆丼は量が多いからリーダー(この部では男性をこう呼びます)にはちょうどいいよ
と言われます。

 

私は幼少期から食べていた近所の中華料理屋「宝竜」の麻婆丼が大好きで、いまだにその幻影を追いかけているところがあり、麻婆豆腐にこだわりがあります(宝竜は10数年前に閉店)。麻婆丼があるなら食べてみるか、とえぞ松に行き注文しました。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 えぞ松麻婆丼
えぞ松の麻婆丼

 

 

 

その量!

 

初めて見た時、本当に目を疑いました。普通盛りでこの大きさ?と。直径30cmくらいのそこそこ深い皿に大量のご飯と麻婆豆腐。食べた人は誰もが言う、なかなかご飯にたどり着かない。食べきることが大変なものでした。味はとろみの強い自分の好みのもの。量のインパクトが強すぎましたがお腹いっぱいになるという点でも大学生には助かる一品でした。

 

そこから頻繁にえぞ松に通い麻婆丼を食べる大学生活が始まるのでした。

 

えぞ松には他にも看板メニューがありました。回鍋肉定食です。回鍋肉の方が麻婆丼よりも人気でした。私の周りは回鍋肉を頼む人が多かったです。麻婆丼ほど非常識と言えるくらいの量ではありませんでしたし(非常識って書いてしまった)。


とにかく回鍋肉は人気で、お昼時は大量に作り置きをしているせいか冗談ではなくオーダーしてから3秒で出てくるときもありました。狭いカウンター席しかないのと、常連の顔を覚えて回鍋肉を頼むことを想定して既に準備をしていると思われる早業でした。場所がら大学生とサラリーマンだらけになるので、いかに早く提供して回転率を上げるかも重要な要素だったはず。ファーストフードが太刀打ちできないほどのスピードでした。

 

周りの男子部員の行きつけになったえぞ松。だいたい麻婆丼を頼むか回鍋肉を頼むかの2派閥に分かれていました。量を重視するなら麻婆丼、食事を楽しみたいなら回鍋肉、という感じでした。


お金が無い部員は一日一食、えぞ松の麻婆丼で済ませるという人も。あれを食べるとお腹が苦しくてしばらく休まないといけないと言われるくらいの量がえぞ松の麻婆丼。今思い返しても、毎日練習に明け暮れた10代最後から20代前半の男子大学生が食べきるのが困難という量は異常な気がします。ある程度の覚悟や気合を入れて頼むメニュー

 

幻の麻婆丼大盛というものがあったのですが、私も含めて頼んだことがある人を知りません。恐ろしくて挑戦できないというのが本音。あれだけ通ったのに一度も頼まなかったのは身の危険を感じるものがあったと思い返します。

 

えぞ松はラーメンも売りだったようですが、私は専ら麻婆丼でした。ごくたまに回鍋肉にしてみたり、このコンディションでは麻婆丼が無理だと判断したときはチャーハンを選択してみたりしました(コンディションを加味して注文するというのも変な話ですが)。

 

大学卒業後も自宅から近いのでちょくちょくえぞ松に入って麻婆丼を食べていました。
しかしさすがに数年前から麻婆丼を食べきることが辛くなっていました。20代の頃とは違います。段々と足を運ばなくなっていきました。最後に行ったのは2年前くらいだったと思います。所用で飯田橋まで行ったついでに。もうそろそろ限界かなと食べ終わったときに思いました。

 

それから気付いたら閉店ということに

 

狭くてお世辞にも綺麗と言えない店内。量重視の男飯。店内に女性がいることはほぼ無い独特の雰囲気でした。えぞ松で食事をすると何か元気になるような気がしました

 

ここで連呼しているえぞ松は「えぞ松 神楽坂店」が正しく、実は近くに本店があるのです。一度本店に入ったことがあるのですが、味も店内の雰囲気も違って馴染めませんでした。今も本店は営業しているのですが、代わりにそこに行ってみようという気にはなりません。


あの狭く昭和の匂いを残した店内で、すぐに料理が出てガツガツ食べてさっさと店を後にする。あの感じが良かったのです。この量を平らげて食後も頑張ろうという活気。

えぞ松という小さなお店は確実に思い出の1ページでした。願わくは最後にもう一度あそこで麻婆丼を食べておきたかったです。

 

 

時代は止まらず流れていきます。いつまでも残っているというのは都合の良い話。コロナのこともありますが、何が幕を閉じても不思議では無くなりました。あのとしまえんも今月末に閉園です。思い入れのある場所を大切にしようと思います。

 

甲野 功

 

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