開院時間

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~勉強と臨床のピラミッド~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 勉強と臨床のピラミッド
勉強と臨床のピラミッド

 

当院、というより甲野個人で鍼灸マッサージ専門学校に通う学生向けに幾つか施策を行っています

学生時代の過ごし方で卒業後の在り方が左右されると。自身の経験や教員になった同期の声、SNSで観察してきたことから考えるようになりました。


そのきっかけは卒業後に鍼灸師の資格を取っても鍼灸師として職業をすることなく業界を去る人がとても多いという事実を知ったからです

本当にそんなことあるのか?

それが本音でした。


その時は既に鍼灸師になって8年が経過しており、鍼灸マッサージ専門学校時代の同期のうち、9割は業界に残って臨床をしていたと聞いていたのです(約60名の同期、全員の現状を全て把握していたわけではありませんが)。やっていないのは出産育児をしている女性、専任教員となり教育がメインの方々、古巣の仕事に戻った人とかそれくらいでした。


なお同じ時期に資格を取った別の鍼灸師さんに聞いたら、いまも鍼灸をしている同級生は5名程度だと言われました。他にも専門学校で教員をしている人からの卒業後の現状を聞くと驚くばかり。
(最低)3年間も勉強して、数百万の学費を払って、国家試験をパスしたのに、得た能力を活かさないのか一体なぜなのか。当時の私には理解に苦しんだものでした。

 

追々知ることになりますが、どうも専門学校時代に左右されるのではないかと予測するようになります。ちょこちょこ専門学校で「鍼灸師は食えない」「この中で鍼灸師としてやっていけるのは一握り」と先生に言われているケースがあるようです。ある伝統鍼灸のセミナーに参加した際にその講師が「学生の呪いをかける」と表現していました。
専門学校で学生に呪いをかける先生がいる?なんだそれはと思いました。


あじさい鍼灸マッサージ治療院を開業してから全国の鍼灸師さんと交流ができると、確かに学生時代に呪いをかけられたという鍼灸師に出会いました。学生に呪いをかけるというのは都市伝説では無かったのでした。

 

そして鍼灸師になったものの「鍼灸師は儲からない」「鍼灸に需要はない」という趣旨の発言をされる人もいることを知りました。確かに専門職であり簡単な仕事では無いと思います。ただそれはどのような職業でも同じで、一般企業に就職した経験がある私にとってサラリーマンの方が遥かに大変な仕事だと感じます。今の時代、終身雇用は非現実的ですし安泰の職業などほぼ無いと思っていますので。

 

考えを変えて、鍼灸師として通用しない人間が学校に入ってきてしまう、あるいは鍼灸師としてやっていくだけのことを習得しないで国家試験を合格しただけ、なのではと推測するようになりました。
前者は専門学校が爆発的に増加して供給過剰になっている状況が関係するでしょう。
後者は何をもって“鍼灸師としてやっていくだけのこと”なのかがポイントだろうと思考を進めました。


専門学校では最低限、国家試験を受験するための知識と技術を教えて、筆記試験のみの国家試験に合格するための勉強を教えます。これらが最低限です。その先は学校の環境によりますし、学ぶ学生の気持ちの持ち方によるのだろうと考えました。

 

そうこう考えて、鍼灸専門学校に進学予定の人と交流が生まれて、専門学校で学ぶことと臨床に使えることはどのような関連があるのかを話す機会を作りました


あじさい鍼灸マッサージ治療院 アジサイ塾スライド
話をした内容

 

今聞こえてくる話は、専門学校に入ったものの考えていたこととは違うと退学してしまう生徒がいる、ということ。早めに気付いて進路を修正できたとすれば良いことですが、入学金や一部学費を支払っているでしょうから色々ともったいないと思います。本当にマッチングのミス。学校側と生徒、お互いに良くないと思います。

退学といかないまでも授業について行くことに必死で卒業後のことを深く考える、あるいは調査する暇がなく国家試験が終わった時点で燃え尽きてしまう、先行き不透明、ということになってしまうのかとも思っています。


医療系国家資格である以上、簡単ではありません。人様の体に影響を及ぼすのですから。その大変な勉強がどこに向かっていくものかを知ることで、学校の授業が実りあるものになればと願うのです。これは<国家試験に出るか出ないか>という基準だけで過去問題を解いているだけでは身に付くことが足りないのではないかという懸念です。

 

私は教員養成科を出て鍼灸専門学校の教員免許も持っています。教える側のことも踏まえつつ開業鍼灸マッサージ師の立場から、学校の勉強がどのように臨床に繋がっていくかを考えてきました。
今のところこのような階層になっていると考えています。便宜上、「(主に専門学校での)勉強と臨床のピラミッド」と名付けています。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 勉強と臨床のピラミッド
勉強と臨床のピラミッド

 

 

1層:基礎的学習 教科書を読み、授業を受けて入力する 
2層:試験対策 試験が解ける
3層:理解 本質を理解できて説明できる
4層:応用 応用した技術
5層:独自の技術 他人に真似できない技術

 

上に行くほど実務に活用できる度合いが強くなると考えています。

 

土台となる1層は基礎的学習です。教科書、参考書を読む。YouTubeの解説動画を見て学ぶ。学校の授業を受ける、セミナーを受講する。など。受動的に知識を取り入れる段階です。専門学校での勉強に限らず、どのような学びでも同じでしょう。
今はインターネットで大概の情報が手に入ります。教科書もメルカリで安く買ったり図書館に行き参考書を読んだりして専門学校に通わずとも、一般の方でも、独学で学ぶことが可能です。私が話をした皆さんも鍼灸専門学校入学前から経穴や筋肉のことを独学で勉強しています。
この基礎的学習はとても範囲が広く、面倒で、辟易としてくるものです。できれは少なく、手軽に済ませておきたいのが人の感情というもの。それをさせないために試験があるのが一般的です。

 

2層は試験対策の勉強です。基礎的学習で得たことを確認するためのチェック段階が試験です。習得できたと勘違いしている場合も多々あるので試験を行って確認します。また試験があるから、つまらない地道な基礎的学習を何とか続けてられることでしょう。
以前も書きましたが、試験とは試験を出題する相手との”対話”に近いです。共通の学習内容を介して出題者の意図をくみ取り、定められた回答を答えるものです。専門学校の定期試験も、厚生労働省の国家試験も、セミナーの認定試験も本質は変わりません。知識を持っていることが前提でそれを使って試験を通して対話するコミュニケーションが取れるか。そこだと考えています。
鍼灸専門学校が担当するのは最低限2層までと言えるでしょう。ここまでの勉強は面倒をみてくれます。それより上になると学習環境(学生本人も周囲も)が影響すると思っています。

 

試験が解ける段階の上に3層の理解がきます。これは勉強の内容を本質から理解して他人に説明できる段階です。試験対策というのはある程度テクニックがあれば対応できるものもあります。過去問題を見て出題傾向を知る。暗黙のルールがあります。試験を出題する人が分かればその人の癖も。公的な試験では試験出題者が明かされないことが普通で、出題者が分かるだけで試験の傾向が予想できるものです。
本質を理解するというのは用語の羅列ではなく順序だてて複数の用語を組み合わせて解説できるということです

例えば大腿四頭筋は大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋からなりますが大腿直筋のみが2関節筋であります。4択問題ならば仲間はずれなので問題ができます。「大腿直筋は骨盤に起始があるので股関節と膝関節をまたいでいる」ということが理解できて「そのため他の3筋と異なり股関節屈曲の動きにも関わる」と理解し、「股関節屈曲位では大腿直筋の動きは弱まる」と考え「それは起始と停止が近づくため筋力が発揮しづらいから」と説明できます。
理解がしっかりできると問題の出題者にもなれるということ。問題を出して解説までできるからです。優秀な学生さんは仲間内で問題を出し合い、回答の解説までします。敢えて引っ掛けを仕掛けてみたり相手のレベルに合わせたり。自らの言葉で説明するということは本質を理解して咀嚼できていることです。専門学校で優秀なクラスメイトがいるとその周囲のメンバーも学習能力が上がることがよくあります。

 

3層までに学んだ内容を4層では応用します。応用した技術に昇華させるのです。徒手検査方法はまさに応用した技術の表れであり、筋肉の走行や起始・停止、関節の構造、神経がどこを通るのか、などを理解した上で現象を引き出すものです。徒手検査法のやり方ができても、理屈がわからなければ検査結果を理解することができません。徒手検査に限らず鍼灸術でもそうで、経絡・経穴・東洋医学概論を学ぶことにより臨床に使えるやり方ができるのです。ここまでの勉強をすっ飛ばして「腰痛にはここに鍼を刺す」とマニュアル化しても応用が利かないので臨床現場ではすぐに手詰まりになるでしょう。
4層まで勉強した学生は「あ、前に習ったことはここで活きるのか!」と納得し、そこまで勉強しない学生は何事も「これ覚えるのに何の役に立つの?国家試験に出るの?」と疑っているものです。ここまで勉強するのは大変ですがここまでできると勉強そのものが楽しくなりどんどんできるようになるものです

 

最高層の5層は独自の技術です。これは他人に真似できない技術であり、個人の特性やこれまでの経験、たゆまない努力の先にあるものでしょう。
同じ内容を同じ期間勉強しても臨床能力には個人差が出るものです。それは力を入れるジャンルが違ったり、その人のキャリアが関係したりするからです。もしも甲子園出場経験がある学生であれば高校野球関連の疾患に猛烈に強くなることでしょう。自身の経験もありますし同級生の状況も分かっています。高校野球が嫌いで甲子園出場はできないでしょうから強い思い入れがあるはずです。情熱を持ってその分野の勉強をするのではないでしょうか。
私の場合、社交ダンス・競技ダンスを軸に勉強してきました。私より鍼灸ができる鍼灸師はごまんといますし、私より社交ダンスが上手な選手は山ほどいます。しかし社交ダンスを理解して鍼灸に応用できる人がどれだけいるでしょうか。20年以上研究をしてきているのでそこはそう簡単に真似できない領域になっていると思っています。


5層の独自の技術は臨床において個性であり武器です。誰にでもできることは、文字通り替えが効くので、より安い価格・より便利な立地の方に流れていきます(経済用語ではコモディティ化と言います)。その人でなければならないものは希少性が上がり高価でも不便なところにあっても人が集まります(差別化というやつです)。独自の技術をどれだけ持って高くできるかが臨床現場では一つの価値になることでしょう。

 

ピラミッドは土台が広く大きければそれだけてっぺんが高く大きくなります。尖って塔のようなものを作ってもある高さまでいくと自重で倒れてしまうものです。高さだけでなく広さも考えて引き出しをたくさん作る意味でも、土台は広く頑丈にしておくことに越したことはないのです。
そのために1層の基礎的学習は大切です。膨大な量の基礎的学習からわずかな独自の技術が生まれると経験上考えています。そこをいかに薄く効率よく少なくするかに腐心していると独自の武器となるものが小さく低くなるのではないでしょうか。

 

将来の自分を専門学校の勉強が作る。その当たり前のことをこれからの学生さん達に知ってもらいたかったです。

 

甲野 功

 

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