開院時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休み:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

~鍼灸業界の参入障壁を下げる~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 鍼灸業界の参入障壁を下げる
防波堤に見立てた参入障壁

 

 

5フォース(分析)というものをご存知でしょうか。

経営学や経済学、マーケティングなどを学んでいると一度は耳にするであろうマイケル・ポーター氏が提唱する、経営の競争状態を左右する5つの要因のことです。ポーター氏は35歳という若さで最年少ハーバード・ビジネス・スクール教授となった人物。とても有名な人物です。

 

経営者はこの5フォースを自社に当てはめて状況を分析する5フォース分析をよく用いられると言われています。少なくとも経営コンサルタントをしている人はよく知る知識でしょう。

 

経営を左右する5つの要因(5フォース)とは

売り手の交渉力

買い手の交渉力

競争企業間の敵対関係

新規参入業者の脅威

代替品の脅威

となります。

 

よく競争企業間の敵対関係を中心に残りの4つが四方から矢印が向かっている図で表されます。

今回5フォース分析について詳しく書くのではなく、要因の一つである「新規参入業者の脅威」に注目し、鍼灸業界における新規参入業者の脅威から、参入障壁が下がることについて考えてみます。

 

落ち着いて考えてみれば当然なのですが、何か商売をしていて売上が落ちる要因の一つに新しく別の競合が入ってくることが挙げられます。例えば地元の駄菓子屋が近所にコンビニエンスストアができたことでお客さんを取られてしまう。個人経営の八百屋が近くに大規模スーパーマーケットの出現で経営が悪化する。強敵が新規参入することは経営危機を招くであろうことは想像に難くないはず。

 

もちろん強みを活かす、差別化をする、といった工夫で小規模個人店が勝つこともままあります。話によると東京都北区十条は衣類を扱う個人商店が強すぎてUNIQLOが出店できないという噂があります。いくらUNIQLOが安価で高品質といっても、十条ではワンピース10円という信じられない価格が本当にあります。全身100円コーデなんてことが可能なのです。そのような価格帯であれば天下のUNIQLOでも参入が厳しくなるでしょう。

 

新規参入業者の脅威だけに注目するとブルーオーシャン戦略も同じことを言っています。ブルーオーシャン戦略とは競合ひしめく苛烈な生存競争を強いられる市場をレッドオーシャン(血みどろの海)とし、競合がいない快適な市場をブルーオーシャン(レッドオーシャンの対比)と定義しブルーオーシャンな市場を開拓するという経営戦略です。ブルーオーシャン戦略は敵(競合)のいない、あるいは敵が入ってこられない市場を構築する、見つけることを目的とします。新規参入業者の脅威がないことも必要条件です。

 

競合の新規参入が無い市場。それを業種に当てはめると鍼灸業界は割と新規参入が厳しい、参入障壁が高い業種でありました

 

まず資格免許の仕事ですから厚生労働省認可のはり師、きゅう師国家資格を持っていない人には鍼灸施術を行うことができません。法的な縛りです(専門用語でいうと身分法、業務独占といったもの)。またネガティブな話になりますが、鍼は痛そう、灸は熱そう、東洋医学は何か怪しそう、病気になったら病院にいけばいいじゃないか、しょせん民間療法でしょ、といったイメージが一部ついていて(全国民についているとは言いません)、場合によっては患者さんを集めるのに苦労します。それと同時に新しく鍼灸業を始めるのも(例えば鍼灸院の開業)簡単ではありませんでした。

 

どういうことかと言うと

・鍼灸師になるには最低3年間の勉強と国家試験合格というハードルがある

・世間的に誰もが気軽に受けるものという印象が薄い

・鍼灸師として軌道に乗るのは大変である

・その代わり他者が参入するのも簡単ではない

という感じです。

 

ただ、参入障壁が高かった、イメージが悪かった、新しく始めるのは簡単ではなかった、と“過去形”で書いています。そう過去はそうでありましたが今は状況が違います。色々な点で参入障壁は下がってきていると言えるのです。

 

かつて鍼灸師を養成する専門学校は増やすことができませんでした。しかし平成8年(1996年)の裁判により専門学校新設が解禁され、学校数が増加。専門学校入学が容易となり鍼灸師の数が増えていきました。そしてここ10年ほどで美容分野の鍼灸が市民権を得て美容鍼に対する知名度が猛烈にあがりました。美容に興味ある人は鍼も選択肢に入れるという時代になりました。その結果、多くの美容鍼に対して需要が生まれ美容系鍼灸師として働く人、美容専門で開業する人が激増します。

 

鍼灸師になるための障壁は下がり(専門学校の増加)、美容に関しては鍼を受けるハードルが下がりました。とても鍼灸師になりやすく、鍼灸を受けやすい環境に変化していったのです。加えて新型コロナによる巣ごもり需要が生まれ、セルフケアとしてお灸を自分でつける、ツボを押すということが軽く流行りました。女性向けサイトにはツボ押しの記事が増えて“中医学”という専門用語を目にするように。鍼灸師になって十数年、専門学校時代から数えれば業界に入って15年以上経ちますが、最近は加速度的に世間に鍼灸が浸透してきていると感じています。

 

反面、あまりに鍼灸がカジュアルになっていないかと懸念しています。はり師、きゅう師免許が無ければ仕事として他人にすることが許されない鍼灸術。厚生労働省管轄の資格であり、医業類似行為あるいは医行為の限定解除と言われています。本来であれば体に鍼を刺すこと、火傷の恐れがあるお灸は危険を伴うことです。だからこそ最低3年間の勉強と練習を積んで年に一度しかない国家試験をパスする必要があるのです。

 

しかし鍼灸を身近な存在に手軽なものにしようとすることで、誰でもできる簡単なものという印象を与えているように感じています

 

具体例を挙げると雑誌やサイトのツボ押し特集。鍼灸術の根幹には東洋医学があり経穴、経絡という概念があります。経穴とはいわゆる体のツボ、反応点です。経絡とは体にあるとされる気の流れ。単純な話ではないのですが、簡略化して“この症状にはこのツボを押せばOK!”という感じで紹介している内容が見受けられます。

それ自体はいいのですが東洋医学が流行ることで表面的なことだけを知った気になる人が増える懸念があります。自分が効いたからと他人に勧めたり他人の体を押してみたり。自分の体にするのであれば鍼灸師免許が無くても違法行為にあたりません。簡易的なお灸を自分に据えることはよくあるそうです。そこから簡単にできるから他人にしても平気と勘違いしなければと思います。

 

以前この仕事と一切関係のない人と話したときに、

鍼灸をするのに国家資格がいるなんて知りませんでした。そんなこと誰も知らないでしょ。

という内容のことを言われたことがあります。

当たり前のように、ツボ押しだ、セルフケアでお灸をしましょう、という情報を見ていたらそうなるのは仕方ないことかもしれません。

 

鍼灸の参入障壁を下げることで鍼灸師にはチャンスが増える半面(受療されやすくなる)、非鍼灸師が入ってきて問題になること(無免許施術、健康被害)が考えられます。実際にそういう情報が入ってきています。

私は鍼灸には特に危険が伴う(健康被害が起きる恐れがある)ので誰でも彼でもできますよ、受けられますよ、という状況は怖いと思っています

自動車運転に例えればアクセルとブレーキ。これまではブレーキがよく効く(すぐに減速できる)、アクセルを踏んでもスピードが出ないように装置が組み込まれていた、という状況。それがアクセルを踏めば容易に高速運転が可能となり、ブレーキを強く踏まないと減速できなくなってきた。スピードが出るようになった反面、交通事故も起きやすいというか。それゆえ自動車運転免許が必要なのに理由を付けて自動車運転免許無しに自動車を乗り回す人が増えたような(例えるなら施設の敷地内なら、自宅の庭なら運転免許無くても問題ないでしょうと運転するする)。運転免許の有無は関係なしに自動車を動かせば交通事故が起きる可能性は高くなるのです。

 

鍼灸の参入障壁が裁判によって下がり、増加した鍼灸師が自ら参入障壁を下げている状況に見えます。このことでどのようなことが起きるのか。当事者としてよく観察しています。

 

甲野 功

 

★ご予約はこちらへ

電話   :070-6529-3668

メール  :kouno.teate@gmail.com

LINE :@qee9465q

 

ご連絡お待ちしております。

 

こちらもあわせて読みたい

治療院業界について書いたブログはこちら→詳しくはこちらへ