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~整形外科学会の医業類似行為に対する文書~

医師のための保険資料基礎知識(2019年改訂)医業類似行為関連Q&A 日本整形外科学会
医師のための保険資料基礎知識(2019年改訂)医業類似行為関連Q&A 日本整形外科学会

 

 

私は医療系国家資格免許を4つ持っています。それは

・あん摩マッサージ指圧師

・はり師

・きゅう師

・柔道整復師

です。はり師ときゅう師は多くの人が両方持っているため「鍼灸師」とまとめることが多く、一方免許としては一つにまとめている「あん摩マッサージ指圧師」は按摩・マッサージ・指圧の元々異なる3つの技法から成り立っています。この4つの免許による施術は医業類似行為に分類されます

 

鍼灸師の一部には、鍼灸は医業類似行為ではない、と主張される方もいるのですが、国の文書もこれから紹介する日本整形外科学会が出す文書にも医業類似行為にあたるとしているのであん摩マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復は医業類似行為にあたるとして話を進めます。

 

さて「公益社団法人日本整形外科学会」から以下の文書が出されています。

 

医師のための保険診療基礎知識(2019年改訂)医業類似行為関連Q&A 公益社団法人 日本整形外科学会

 

タイトルから分かる通り、医師に向けた文書であります。それも保険診療に関わる内容。さらに保険診療の中でも医業類似行為関連に限定しています。

本文にも説明がありますが、医業類似行為の範疇には厚生労働省認可の国家資格であるあん摩マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復の4種類と国家資格免許が無いものの2つがあります。そのうち保険診療に関係するもの(正確には療養費に関するもの)が国家資格にあたる4種類の資格免許者(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師)による施術となります。

 

つまり“保険診療”かつ“医業類似行為関連”というタイトルは私の持つ資格免許に関するものとなるのです。整形外科学会という医師団体が、医師に向けてどのような考えを示しているのかが分かるわけです。なかなか興味深い内容で、一部を抜粋しながら紹介してみましょう。

 

まず序文で柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が取り扱う受領委任払い制度に対して嫌悪感を抱いていることが見てとれます。以下に全文を抜粋しました。

 

序文

 

医業類似行為のなかでも柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ師に関しては、運動器疾患の一部を対象としており、我々整形外科医は国民の健康を守る立場から、その動向に注目してきた。

柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ師が扱う疾患には、健康保険の療養費支給の対象になるものがあるが、整形外科医のみならず、内科をはじめとした多くの医師にとって、療養費の制度や同意書に関して十分理解されているとは言い難い現状がある。健康保険制度は医療の現物給付を原則とし、現物給付ができないものに対して保険者が認めた場合に療養費を支給することになっている。本来は療養装具と同じく償還払いで患者が全額を立て替えた後に、医療保険に療養費を請求すべきものであるが、柔道整復師には外傷を扱う特殊性から、「受領委任」という医療機関における窓口一部負担金と同率を支払えば、療養の給付を受けることができる仕組みがある。患者にとって便利なようであるが、外傷が軽微であるか否か、あるいは疼痛性疾患の鑑別のためには医療機関の受診が望ましいことも多いはずである。

日本整形外科学会は過去4回にわたり時の厚生労働大臣宛に柔道整復師に関する要望書を提出してきた。主たる要望は「受領委任」の廃止であったが、今回、行政が監督することを理由にして「あはき」(あんま・はり・きゅう)にまで「受領委任」が認められることになった。今後、行政の監督が十分働くのか見極める必要がある。

療養費の制度を理解しないままに施術同意を求められている医師も多いと思われる。今回、平成26年に作成した小冊子「医業類似行為関連Q&A」を改訂し、医業類似行為と療養費を理解しやすいようにしたいと考えた。我々は、より多くの医師の理解が進むことで、療養費が適正に支出され、国民が適切な医療を受ける機会を失うことのないようにしたいと願っている。

 

令和元年9月

 

あとから詳しい説明が出てきますが保険診療における療養費取り扱いにおいて、患者さんが一度全額を支払い後で保険負担分を返金される「償還払い」を推奨し、患者さんが窓口で自己負担分しか支払わない「受領委任払い」を医業類似行為に認めたくない意向が示されています。特に柔道整復師に対して従来から行われてきた「受領委任払い」を廃止する要望書を提供してきたと述べています。廃止されるどころか按摩・指圧、鍼、灸にまで「受領委任払い」が実施されることに警戒していることが伺えます。

 

先に挙げた国家資格免許のある医業類似行為が保険適応となる療養費に該当するには医師による施術同意が原則必要になっています。その点について紹介していますが文章の最後に意見が付け加えられています。

 

本文抜粋

1.柔道整復師(接骨院)の施術同意について

 

柔道整復師が扱える疾患は、打撲・捻挫に対する施術と骨折・脱臼に対する応急処置のみに限られています。骨折・脱臼に関しては医師の同意がなければ後療(引き続きの施術)を行うことはできません。この同意は国の通知により口頭でも可能となっていますが、骨折・脱臼が柔道整復師によって管理可能なものか否かについては慎重な判断が必要です。施術結果が思わしくない場合、医師が過失によって同意を与えたとして責任を問われた判例があります(昭和57年長野地裁判決)。

 

柔道整復師が骨折・脱臼において後療(応急処置を終えて引き続き行う施術)をしてもよいかは医師の同意が必要であることを説明しつつ、その判断は慎重にしなければならないとしています。医師の過失となった例もあるとしています。

 

本文抜粋

2.鍼灸の施術同意書(文書)について

 

鍼灸に対する療養費の支給は、対象となる疾患が、神経痛、リウマチ、五十肩、頸腕症候群、腰痛症、頚椎捻挫後遺症と限られており、かつ医師の同意書が必要です。この同意とは、医師による適当な治療手段がなく(医療機関において治療を行い、その結果、治療の効果が現れなかった場合等)、医師がはり・きゅうの施術を受けることを認めるということです。従って、初診で当該疾患に治療も行わずに同意することは、医師の判断としては不適切と思われます。また、上記疾患を扱い慣れていない内科系医師に同意書を求められることもあるようですが、健康保険の指導で、同意書は対象疾患の主たる診療を行う診療科にて発行するべきものとされています。

上記の条件を揃えて、鍼灸の療養費給付が始まった後に、同じ疾患で医療機関での治療を行うと療養費は不支給になります(併給禁止)。鍼灸の給付を受けるためには、同一疾患で医師の治療は受けられないことを理解しておいて下さい。

 

鍼灸の施術同意に関しては対象疾患が限られており、しかも医師による積雪な治療手段がない場合によると説明しています。そのため初診で同意書を出すことは不適切であり、また同じ疾患を医療機関で保険治療を受けると鍼灸の療養費は支給されない併給禁止を説明しています。これは制度を説明しているだけですが後の方で意見を出していきます。

 

本文抜粋

3.あん摩・マッサージの施術同意書(文書)について

 

これも療養費支給の対象となる疾患は、筋麻痺、関節拘縮と限られており、かつ医師の文書同意が必要です。

制限されている関節の可動域の拡大と筋力増強を促し、症状の改善を目的として、あん摩・マッサージの施術が必要と医師が同意している場合に限ります。従って、疲労回復や慰安目的などのマッサージは療養費支給の対象となりません

また、要介護の方は通院困難なこともあり、往療マッサージを求められることもあるかと思いますが、厚労省の見解は、往療料は、歩行困難等、真に安静を必要とするやむを得ない理由等により通所して治療を受けることが困難な場合とあり、医師が同意した場合であっても、当該医療機関や他の医療機関への通院の実態が確認できる場合は、通所して治療を受けることが困難な場合とは認められないとなっていますので、ご注意下さい。

 

*2.3に関しては、6か月毎に再度文書同意が必要です。

 

按摩、マッサージの施術同意についてです。ここに指圧が入っていない所があん摩マッサージ指圧師の私には興味深いです。同意には疲労回復、慰安行為の同意はできないこと。そして本当に医療機関に通所することができないのかを確認してくださいと念を押しています

 

第2章の医業類似行為Q&Aでは一問一答形式で回答しています。気になったものを抜粋して紹介します。

 

Q-3 接骨院では、なぜ医療機関と同じように健康保険が使えるのか?

A-3 接骨院での施術に対して保険者が支払うのは診療報酬ではなく療養費です。療養費制度により、施術にかかった費用が被保険者である患者に対して支払われます。本来、施術を受けたとき、その費用の全額を患者が施術者に支払い、施術した証明書(療養費支給申請書)と領収書を保険者に提出して保険者が療養費を支給するのが原則です。(償還払い)

しかし、利用者の利便性のため、保険者からの療養費の受け取る手続きを施術者に委任する方法が一般的になっています。(受領委任払い)

受領委任の取り扱いにより、患者は自己負担分だけの支払いで済むことになり、見かけ上保険医療機関との差がなくなります。患者にとっては保険者に書類を提出する手間が省けて便利な仕組みですが、混乱を生む原因にもなっています

 

療養費制度の説明で償還払いと受領委任払いについて説明しています。ただ接骨院の受領委任払いは混乱を生む原因になっていると付け加えています

 

Q-6 スポーツの怪我に対する施術は、柔道整復療養費として認められるのか?

A-6 急性外傷による靱帯損傷・肉離れなどは適応ですが、上腕骨上顆炎に代表されるいわゆるスポーツ障害は急性外傷ではなく適応外となります。

 

これは柔道整復師として驚きました。スポーツ障害は療養費に認められないという内容です。これはスポーツをしていて起きた急性外傷は認められるが、スポーツを継続的に行った結果起きた障害は適応外ということでしょう。スポーツ(急性)外傷は〇でスポーツ障害は✕という判断でしょうか。これまで深く考えたことが無かったことでした。

 

Q-7 柔道整復師は、脱臼骨折の施術に医師の同意を得なければならない理由は?

A-7 柔道整復師は医師ではないため、検査診断を行うことが出来ないので、医師の同意を得なければならないとされました。しかし、応急手当をする場合、医師の同意を得る時間がないとの考えから、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)17条条文「応急手当をする場合は、この限りでない」との但し書きが加えられています。

骨折、脱臼の整復は医師のみに許される医行為に相当し、正しい診断、的確な検査の上で加療しなければ後遺障害を生じる危険性があります。現在、柔整療養費の内訳は、99.5%が打撲・捻挫で、骨折・脱臼の施術は0.5%に過ぎず、ほぼ全ての骨折脱臼の整復は、医療機関で行われています。

 

柔道整復師における医行為の禁止という前提を示しつつ、脱臼・骨折の応急処置は認めるということを述べています。ですがほぼ柔道整復師は脱臼・骨折の整復(骨を正しい位置に戻す操作)はしていませんと言っているようです。

柔道整復師の立場からするとこれは意地悪な書き方で、現在の医療環境で考えれば速やかに医療機関に送った方が患者さんのためになります。山の頂上とか上空を飛行中の飛行機の中とか特殊な状況でない限り無理に整復することは避けた方がいいわけです。本当にやむ負えないときが応急処置として柔道整復師が整復をする場合ではないでしょうか。そもそもそのように整形外科側も指導してきたはずですし。

 

Q-13 「あ・は・き・」施術所と医療機関(整形外科)の両方に通院できるのか?

A-13 施術による療養費支給と、同意書を発行した医療機関の医療保険との併用は認められていないので、同日の通院はできません。施術期間中は、同意書を発行した医療機関には、同一疾病での診察のみは認められますが、薬物療法その他の治療は認められません。例えば、医療機関が関節リウマチで治療中の患者に施術同意をした場合、医療機関は、施術期間中においては、関節リウマチに関する治療薬は保険請求ができないのです。つまり「あはき」施術に同意書を書くことは、診察以外の治療法を放棄することになります。あくまでも同意書は『医師による適当な治療手段のないもの』が対象です。

 

これもちょっと悪意を感じます。医師に向けて、「あはき」施術に同意書を書くことは診察以外の治療法を放棄することになります、と書くのは暗に同意書を書くなと言っているように受け取れます。そもそも鍼灸施術の同意書は医師による適切な治療方法がない場合という前提があるのですから。

 

Q-14 マッサージ・あんま(按摩)の施術対象は?

A-14 適応は疾患名ではなく、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮等の症状が支給の対象になります。按摩は中国発祥の手技療法で、衣服の上から触れる手技、按は「手指で押さえる」、摩は「手指でなでる」の意味。マッサージは西洋発祥で、手指で肌を直接触れ、末梢から心臓に近い方へ求心性に手技を行う。按摩はこれに対して、遠心性に心臓に近い方から末梢に手技を行う。療養費として認められるためには筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮などの症状が認められ、理学療法などで改善されないもので主治医の同意書が必要です。単に疲労回復や慰安を目的としたもの、疾病予防のマッサージ等は支給の対象にはなりません。近年、医師の同意を得て、利用者の自宅や介護施設を訪問する往療マッサージが増加し、高額な往療料が問題視されており、安易な同意は慎むべきです

 

きちんと説明されていて、按摩とマッサージの違いを丁寧に説明しています。ここでも指圧が無いことが気になりますが。そして往療料が問題視されていることから安易な同意は慎むべきですとはっきり書いております

 

Q-15 はり・きゅうの施術対象は?

A-15 医師による適当な治療手段のない、神経痛・リウマチ・五十肩・頚腕症候群・腰痛症・頚椎捻挫後遺症となっています。この通知が出された当時は上記が適応でしたが、関節リウマチについては生物学的製剤の使用で寛解に至る症例が多くなっています。その他の疾患も、新しい疼痛治療薬の普及で、治療は可能となっており、五十肩は理学療法士による運動器リハビリテーションや、ステロイド注射などで、改善が見込まれます。従って、まずは専門医に紹介する方が望ましいでしょう

 

これも鍼灸に同意書を書かないで専門医に紹介してくださいと言っています。

 

これ以降にも、療養費制度の解説をした上で『したがって、療養費の支給は、療養の給付等の補完的な役割を果たすものであり、被保険者に、現物給付と現金給付の選択の自由を与えたものではありません。』と釘を刺しています。柔道整復師の受領委任払いが不正請求の温床となっており、その具体例(白紙委任、部位転がしなど)を述べています。

 

これまで見てきたように整形外科学会は医業類似行為の療養費支給をよく思っていないようです。それは表紙のイラストからも分かります。全ての整形外科医がそうだとは言いませんが学会としてはそうなのでしょう。

なぜこのような思考になったのかは文書内容から分かります。医業類似行為側から異論はあるでしょうが、概ね制度を悪用して不正請求を繰り返し、適切な医療を受ける機会を奪った結果だと考えているようです。本来、柔道整復師と整形外科医は手を組み関係にあります。もちろんあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師も。それが療養費取り扱いに関しては拒絶されるような状況が生まれているようです。そのことが垣間見えた文書でした。

 

甲野 功

 

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