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~父親の骨折~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 膝蓋骨縦骨折のイラスト
膝蓋骨縦骨折のイラスト

 

 

私の父親が骨折をしました。

 

身内ということである程度状況を説明しつつ、息子が柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師として対応したことを時系列に書いていこうと思います。症例報告に近い形になるかもしれません。なかなかできない機会なので文章に残しておこうと考えました。

 

私の父は80代後半の完全な高齢者。

若い頃から登山をしてきて、日本百名山を全て踏破した登山家並に山登りをしてきました。若い頃は冬山で遭難して救助隊に助けられたり、山頂で盲腸(急性虫垂炎)にかかり命からがら自力で出山したり、反対に冬山救助を手伝ったり、と一般登山愛好家のレベルをかなり超えた生活をしてきました。その影響で私も物心つく前から山登りをして小学校を卒業するまで国内の様々な山を登りました(登らされました)。この経験が高校で山岳部に入部する理由になります。

 

そのような父も年老いて足腰が相当弱ってきました。杖は持ちませんがかつてのように早くあることができません。もう何年も前から週2回、治療と筋力維持を兼ねてあん摩指圧、お灸、筋トレ(下肢の抵抗運動)を私が行っています。

 

いつもように父の元にいった11月末の事。

父の口から「昨日道端で転んで膝が痛いからみてくれ」という言葉が。道路を渡ろうとして足元にチェーンがあったことに気付かず足が引っ掛かり前に転倒。主に両膝を地面に強打したとのこと。顔にも擦り傷があり顔から転倒したことが伺えました。転んだ直後は特に痛みを感じず起き上がってそのまま買い物をしたと言います。その晩になると左膝が痛くなって夜中寝づらかったというのです。

 

両膝を見てみると右膝は擦過傷で出血した跡がありました。痛いという左膝には表面的な傷は見当たりません。ただし膝周りが腫れています。右膝に比べて明らかに腫れています。膝関節だけでなく大腿部(太もも)の膝から少し上まで膨らんでいます。内出血は視認できませんでした。当の本人である父には自分の膝が腫れていることが分からないよう。私がかなり腫れていると指摘しても、そうなのかな、と納得していない様子。

 

私はこの腫れ方はちょっと普通ではないと思いました。骨折を疑いました

 

父は転倒直後から翌日の今日まで痛みを感じながらも歩いています。日常生活にあまり支障がない状態。そして私には水が溜まったような腫れ方とちょっと違う感じがしました。

 

膝関節はたくさんの組織が関係していて複雑です。骨は大腿骨(太ももの骨)、脛骨(スネの骨)、膝蓋骨(お皿)で構成されています。関節部分には軟骨半月板が存在します。関節包で囲まれていてその中に前十字靭帯後十字靭帯があります。外側は内側側副靭帯外側側副靭帯があり、前面は大腿四頭筋から膝蓋骨、膝蓋靭帯となります。腸脛靭帯鵞足腓腹筋なども関節を守っている状態。膝関節はスポーツでも日常の転倒でも傷めやすい個所でどの部分が傷むか鑑別が難しいのです。

 

転倒状況を聞く限り捻る動作はなく、ダイレクトに膝を地面に打ち衝けた様子。腫れ方から靭帯や半月板といった軟部組織(骨ではない膝の構成組織)を損傷したようではないと思いました。父もスキーをしていた時にひどい捻挫(靭帯損傷)を経験しておりその時は内出血がひどかったのでそれではないと思っていました。何よりそうだとするとまともに歩けないでしょう。

 

私は整骨院での勤務経験があり、変形性膝関節症による膝に水が溜まった症例を多数みてきました。そのような感じと違う様子でした。もっと広範囲に膨れていると。腫れ方から骨折を疑わないといけません。一般的に骨折すると内出血が強く腫れがひどくなるからです。ただそうすると割と問題なく歩けることに合点がいきません。大腿骨末端や脛骨上面が骨折したとすると体重を掛けたときにもっと強い痛みが出ることでしょう。

 

考えられたのは膝蓋骨骨折。膝のお皿が骨折しているのではないかと。

 

人体には種子骨といって筋肉が腱に変化して骨に付着する際に、動きを効率よくするために腱や靭帯の中に小さな骨があるのです。通常はとても小さな骨で一般的な骨として数に入れません。種子骨の中で人体最大のものが膝蓋骨であり、特別に膝蓋骨だけは通常の骨としてカウントします。膝蓋骨の役割は膝関節を動かすサポートの役目をします。ですから膝蓋骨骨折だったとしたら強い腫れと歩行可能という状況が説明できます。

 

骨折しているかどうかはレントゲン検査をしないと確定診断となりません。そのため父に整形外科の受診を勧めました。父は病院に行くのが好きではないのですが、私が状況を正確に把握するためにレントゲン撮影をしてもらって、と話しました。骨折していなければ不幸中の幸いだし、骨折していた場合はきちんとした処置が必要です。確認することが大切だと。

私の見立てだと、あって膝蓋骨の骨折でそこまでひどいものではないだろう、と。骨折でなければ軟部組織損傷で動作にそこまで大きな支障がないので私が対応できることが増える。これらのように考えていてそれを父に伝えました。

 

その日は、膝周りは触らず腰など他の部分を施術しました。その後父から電話があり、あの後整形外科を受診したところやはり膝のお皿の骨折だったと報告がありました。見立てが当たっていた気持ちとこの年での骨折はきついなという不安が入り交じりました。

 

その4日後にまた父の元へ。膝蓋骨骨折だというのにギプスも包帯も杖もなく左膝にサポーターをしているだけでした。それも二―ブレスという金具のものではなくスポーツ用品店で買えるようなゴム製のサポーター。骨折しているにしてはやけに簡素な処置だ、と思いました。

 

骨折と書きますが、医学的な骨折の定義は「骨組織の連続性が断たれた状態」という分かりにくいもの。ぽっきり折れていることだけが骨折ではなく、ちょっとでも傷ついたりヒビが入っていたりしているだけでも診断上は「骨折」となります。分類分けを例に挙げると「完全骨折」だけでなく「不全骨折」も骨折になるのです。

つまり父の左膝は膝蓋骨亀裂骨折なのかと私は思いました。完全に折れたのではなくヒビが入った程度なのかと。

 

ところが父に聞くと「皿が割れている」というのです。割れている?つまり完全に折れて離断しているということでしょうか。だとすると処置が軽すぎると思いました。そうだとしたら手術してワイヤーで固定したり、ギプスでがっちりと外から固めたり、松葉つえで体重がかからないようにしたりするのではないでしょうか。父に正確な診断名はどうだったのかと聞いてもよく分からないと言います。レントゲン画像を観たら素人目にも割れていると分かったともいうのです。

 

私は本当に?という気持ちになりました。多くの医者は専門用語をあまり使わず分かりやすい説明をします。その分、私からすると診断名や状況が正確に掴めなくて戸惑うことがままあります。一体父の左膝はどうなっているのだろうか。はっきりと認識できないと私もどう対処するのが良いのか迷ってしまいます。反対に言えば状況が正確に分かれば整形外科ではできないことができるわけです(柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師として。また家族として)。そこで父が整形外科を受診するときに私も同行することにしました。診断を直接医師の口から聞かないといけないと。

 

受傷してから3週間経過した3度目の受診時に同行しました。そこでレントゲン画像を観させてもらいました。

見事に割れていました。骨片がはっきりと確認できます。これは確かに素人目でも分かるでしょう。

レントゲン画像は3次元の骨を2次元に投影するので全て重なって写ります。奥行きが分かりません。そして骨折しているかどうかも映し出された線が不連続に途切れていないか注意深く観察する必要があります。そのため訓練を積んでいないとどこに異常があるか判別しにくいのです。観たレントゲン画像は見えやすいような角度から撮影していることもありましたが、はっきりと膝蓋骨が割れていることが確認できました。父の言った通りでした。

 

不幸中の幸いなことに、縦に割れた「膝蓋骨縦骨折」だったのです。骨折線が縦に入り左右に割れた状態です。これが上下に割れた横骨折ですと筋肉で離れる力が働くので治りが悪くなります。縦骨折だと基本的に左右に引っ張られる力がかかりません。左右外側からゴム製サポーターで圧迫していれば骨折面がくっつき骨の癒合が進みます。私は医師に「骨片転位は無かったのか」と確認したところ無かったと。転位とは骨が正常ではない位置にずれてしまうこと(癌の転移とは似ていますが字も意味も違います)。割れた骨(骨片)がずれてしまっていなかったかを聞いたわけです。

 

本当に運のよい折れ方(割れ方)をしていたよう。転位がなく折れたのが大腿骨、脛骨ではなく膝蓋骨。縦に割れたので悪化しづらい。その説明からサポーターのみという医師の判断にも納得できました。それが分かりましたからサポーターを付けることで圧迫され足先が浮腫むことへの対応、歩行に影響を受けることで生じる腰痛対策、筋肉が固くなることの予防ができると思いました。

 

臨床では事件を推理する探偵のような気持ちになることがあります。家族ということで普段ではできない情報収集ができました。なかなかできない経験で、怪我をした父には悪いのですが非常によい勉強になりました。この先は骨が繋がってから体に悪影響(間接的な後遺症)が起きないようにサポートしてお返ししていきます。

 

甲野 功

 

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