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~進学前にきちんと考える~

NumberWebより
NumberWebより

 

 

このようなネット記事を目にしました。

 

NumberWeb

昨年戦力外→今はガソリンスタンドで…元ホークス山田大樹が“フリーター生活”の理由「お客様から『ナゴヤドーム観に行ってました』って」

 

Numberは有名なスポーツ雑誌。この記事では元プロ野球選手山田大樹氏について書かれています。

 

私は野球を全く見ていないので山田大樹氏という方を存じ上げませんでした。ではなぜこの記事に注目するかというと、山田氏が鍼灸マッサージ専門学校に今年入学するという内容だったから。つまり同じ業界関係者になるからですね。

少し調べると山田氏は茨城県出身、つくば秀英高校から2006年育成ドラフト1位で福岡ソフトバンクホークスに入団しました。そして色々とあり戦力外通告を受けて引退。名を成したプロ野球選手がガソリンスタンドでバイトをしている、いったい何故?ということが“引き”となっている記事です。(※この記事が公開されたのは2021年12月。)

 

内容はというと、2人の子どもがいて無理して野球を続けるよりもセカンドキャリアとして鍼灸師の資格を取りトレーナーの立場から野球に関りたいと考えた山田氏。プロ野球選手は他のプロスポーツにより比較的選手寿命が長い方かもしれませんが、成績を残せなければ居場所はありません。プロ引退後の生活を考えるのは誰もが通る道。監督、野球解説者、コーチ、タレントなど華々しい世界に残れるのはほんの一握りであることは私でも知っています。山田氏はセカンドキャリアに鍼灸師を選択したというのは同じ職業として嬉しく思います。

 

ただし注目しているのはそこではなく、あん摩マッサージ指圧師の資格も同時に取るために1年間進学を先延ばしにする判断をしたこと、なのです。

 

ここの事情は一般の人からすると理解に苦しむかもしれません。鍼灸師になるためには最低3年間定められた養成機関(専門学校、大学)に通い勉強して技術を積み、国家試験受験資格を得ないといけません。その上で毎年2月末の(はり師、きゅう師)国家試験に合格しないと鍼灸師にはなれないのです。同様にあん摩マッサージ指圧師も3年間の勉強が必要なのです。鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師を個別に取ると3年間ずつ、通算6年間かかります(ただし同時に学校に通うダブルスクールをしたとしたら期間は短縮できます)。

ところが古くからある伝統校と言われる専門学校には鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師の両方を同時に学んで3年間で全資格(はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の3つ)が取得できる鍼灸マッサージ科(通称、本科)を設置するところがあるのです。なお私自身も本科出身であり、3年間でこれらの資格を取得しました。

 

山田氏は1月に引退。行こうと思えば願書を出して同年4月から鍼灸専門学校に入学できたのでした。ところが鍼灸師だけなくあん摩マッサージ指圧師も必要だと考えて、進学志望する(本科のある)学校が既に願書提出時期が終了していたため1年間進学を先延ばししたのです。プロ野球選手を引退し、元プロ野球選手という知名度と肩書はあるものの、何者でもなくなった(大きな組織に属することがなくなった)妻子のいる成人男性にとって、1年間は決して短い時間ではないはずです。

それを

“妻から『自分のやりたいことを目指すならば、たった数日の決断で焦って決めることはないんじゃないの』と言われて、考えを改めました”

というのです。

奥様の素晴らしい助言だと私は思います。人によるでしょうが、さっさとセカンドキャリアの準備に入って、と急かすことだって考えられるわけで。山田氏は知り合いの伝手もありガソリンスタンドで働くことになります。そして希望の鍼灸マッサージ専門学校に今年入学したというわけです。

 

進学までの空いた1年間にガソリンスタンドで働くことになり、あの元プロ野球選手の山田大樹が今はガソリンスタンドで働いている!、という耳目を集めることになり記事になった。野球ファンや世間の人からするとガソリンスタンドで働くという状況がセンセーショナルでどこか“落ちぶれたものだ”という目で見られるのかもしれません。(そしてそのような目があるからこそ記事になったともうかがえるのですが。)

 

私は同じ業界にいる者として山田氏と奥様の判断が素晴らしいと思うのです。私自身も会社を辞めてリラクゼーション店で働き、あん摩マッサージ指圧師免許を取ろうと考えた時期がありました。そのときも急げばその年の4月から専門学校に進学することはできたのですが、焦りは禁物だと考え敢えて進学を1年間先延ばししました。その間に業界研究をしました。納得できる形にしたかったので複数の専門学校を見学し情報収集をしました。そして受験科目になる可能性がある生物や古典、論文といったそれまであまり学んでこなかった科目も自主勉強しました。幸い第一志望である東京医療専門学校Ⅰ部鍼灸マッサージ科(当時)の受験が10月にあり、そこで進学を決めることができました。山田氏とは境遇が違いすぎますが同じように1年あけて進学したことに共感します。

 

またこの記事よれば山田氏は先輩に相談しているのです。それが同じく元プロ野球選手である馬原孝浩氏です。馬原氏は九州の専門学校に鍼灸科・柔道整復師科のダブルスクールで入学します。つまり昼間部と夜間部のように複数の科に同時入学し、各々3年間かかる鍼灸師(はり師、きゅう師免許)と柔道整復師(柔道整復師免許)を3年間の通学で成したのです。私は柔道整復師も取得していますが合計6年間かかっています。ダブルスクールという手段を取ればこのように期間を短縮して国家資格が得られるのです(もちろん勉強は非常に大変ですが)。

その馬原氏に相談した上で、あん摩マッサージ指圧師も必要だから進学を1年遅らせる、という決断をしたことが凄いのです。

 

馬原氏は柔道整復師免許を持っていますがあん摩マッサージ指圧師免許は持っていない鍼灸師です。馬原氏を真似て鍼灸師だけ(あん摩マッサージ指圧師は無し)、あるいはダブルスクールで鍼灸師&柔道整復師を目指すという選択肢も考えられたはずです。それを敢えて鍼灸師&あん摩マッサージ指圧師という組み合わせにするために入学を1年間延ばした。

当事者でないと実感がわかないかもしれませんが鍼灸師にあん摩マッサージ指圧師があるのとそうでないのは大きな違いがあります。鍼灸師と柔道整復師の組合せである先輩の馬原氏に相談した上でこの判断をしました。どうのように将来を考えているのか定かではありませんが素晴らしい決断だと私は思うのです。

 

山田氏があん摩マッサージ指圧師も取れる本科を選択したことが素晴らしいというのではないのです。進学前にきちんと業界研究をした上で専門学校入学を果たしたことが素晴らしいのです。

 

こう強調するのは鍼灸師や鍼灸学生さんと話すとあまり調べずに専門学校に入学している例を結構見受けるからです。

何となく鍼灸師が良さそう、学校は近いところでいいか、学校なんてどこも一生だろうし、、。

このような考えで入学する人が少なからずいます。特に鍼灸専門学校に入ってみてマッサージができない(学校で教えてくれない、法律であん摩マッサージ指圧師免許が無ければマッサージをしてはいけないと知る)と嘆く場合。平成10年(1998年)以前は鍼灸専門学校を作ることは制限されていて、その時点であった鍼灸専門学校の多くに本科があり、鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師を両方取ることが多かったのです。ところが通称『福岡裁判』と言われる裁判により鍼灸専門学校新設が解禁されて鍼灸科のみの専門学校、大学が激増します。今は専門学校の大多数が鍼灸のみの学校。あん摩マッサージ指圧師も取りたかったら数の少ない本科がある学校を選ばないといけないのです。その調査を怠る。そもそもあん摩マッサージ指圧師の存在を知らない。そうして入学してみてしばらくして現状に気付くという。

また学校はどこも同じというのも大きな勘違いで学校毎の特色はあります。学費、立地というはっきりと分かるものから、伝統、流派、教育方針、生徒数、教員といったソフト面の違いも大きなものになります。入った学校の環境が全てだと思っていて、他の学校のことを知ってから驚かれる学生さんがみられます。

 

鍼灸師になるには最低3年間の勉強が必要です。これは法律で定められているので短縮することはできません。そして学費は特例を除いて数百万円かかります。そこに生活費も加わります。3年間の時間と数百万の費用。医療系国家資格を取るのだから当然のこと。これだけのモノを掛けるのになぜ対して調べないのでしょう。まして学校を卒業することは簡単ではなく、週に数日出てレポートを提出すれば単位が貰えるようなことはなく、毎日学校に行って定期試験をこなして実技試験に受かって、卒業試験を経て卒業するのです。そして年に一度しかない国家試験に合格しないと鍼灸師にはなれません。これだけのハードルがあるのに学校選びを疎かにしてしまう。もちろん適当に選択しても納得できる学生生活を経て鍼灸師となり現場で活躍している人もたくさんいます。ただし誰もがうまくいくとは限らないということ。

 

元プロ野球選手の山田氏は事前に同じくプロ野球から鍼灸師(と柔道整復師)になった先輩馬原氏に相談し、必要な資格として鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師だと決め、行きたい学校に入るために1年間進学を先延ばしにするという決断をしたのです。家族のことや世間体を考えて、焦って鍼灸師のみと妥協して進学することをせず。

鍼灸師になるならあん摩マッサージ指圧師も取れる本科に入ることが正解と私は言いたのではなく、山田氏にとっての求める道が1年間空けても本科入学だったと判断したこと、に注目しているのです。

 

鍼灸専門学校に進学する前によく考える、調査をする。このような姿勢は卒業後にも大きく影響すると思います。私は全く知りませんでしたがプロ野球選手という知名度のある山田氏が鍼灸マッサージ専門学校に入学したこと、そして進学前に準備したこと。そこのことが知られると嬉しいです。

 

甲野 功

 

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