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~アイスマンの謎~

Wikipedia アイスマン より
Wikipedia アイスマン より

 

 

アイスマンをご存知でしょうか。アメコミのキャラクターや映画トップガンの登場人物にもありますが、鍼灸師にはアルプス山脈で見つかったミイラのことを想像することが多いと思います。そのアイスマンとはどのようなものでしょうか。Wikipediaにまとめています。

 

Wikipedia アイスマン

 

アイスマンとは1991年にアルプス山脈にあるイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷の氷河で見つかった、約5300年前(紀元前3300年頃)の男性のミイラのことをいいます。5200年前という説もあります。貴重な発見で現在もイタリアで研究されています。なお2005年4月には「アイスマン展」と題した展示会が名古屋ボストン美術館と豊橋の自然史博物館で催されており、世界的にも重要な研究対象となっています。2012年には初めて解凍、そして解剖され脳や内臓、骨、血管など149点ものサンプルが採取されました。その模様と研究成果の一部が2013年3月24日、NHKの番組「NHKスペシャル 完全解凍!アイスマン 〜5000年前の男は語る〜」にてテレビ放送されたので世間一般にも知られているかもしれません。

 

アイスマンの研究をするにあたって、大きな注目を集めたのが体に施されたタトゥー(刺青)です。民族的にタトゥーを入れることは珍しくありませんが、その位置及び様相が、鍼灸師にはお馴染みの経絡・経穴と一致するものではないか?ということです。経絡とは気の流れのようなもので東洋医学の基本的な概念(?)です。概念と定義してよいのか議論の余地がありますが、中国で生まれて全身に12種類の経絡があるとするのが現在の鍼灸師が持つ基本となる考えです。その経絡上に反応点として経穴が体表上に点在しています。経穴は世間ではツボと呼ばれています。専門的には経絡上にある位置と名称が定まっている経穴を正穴といいます。経絡上にない経穴もあるということです(奇穴とか阿是穴とか新穴など)。

 

アイスマンの体を画像診断にかけた結果、腰椎すべり症の所見がみられ、すなわち腰痛があったことがうかがえるのです。アイスマンの体表に施されたタトゥーは腰痛治療に用いる経穴にかなりの割合で一致するというのです。このことからアイスマンは生前腰痛を患っており、その治療のためにポイントなる位置に目印としてタトゥーを入れていたと推測され、それは中国発祥の経絡・経穴の概念によるものではないか、という仮説が生まれます。そしてもしもその仮説が正しいとするならば、経絡・経穴の概念は中国よりも前の時代にヨーロッパにあったこととなり、経絡・経穴の概念の発祥は中国ではなくヨーロッパであると考えられるということです

 

以下のページに概要が記載されています。

鍼治療の起源は中国ではなく古代ヨーロッパにあった?

 

 

これによればサイエンス誌に掲載された記事において、中国よりも約1000年も前に経絡・経穴(ツボ)の概念がヨーロッパに存在し、鍼治療の起源が地埋的に見て東アジアではなくユーラシアであった可能性を示唆しているとあります。この仮説が本当だとするとまさにパラダイムシフト。中国は鍼灸を含めて中国伝統医療をユネスコ世界文化遺産に登録しています。鍼治療の起源が中国でないとするなら大事(おおごと)でしょう。

 

この意見について鍼灸の大学である森ノ宮医療大学は以下のページで見解を示しています。

森ノ宮医療大学ホームページ>鍼灸学術情報一覧>アイスマンの刺青と鍼治療

 

大学という教育研究機関であるので、より学術的に述べています。要点をまとめてみます。

 

①アイスマンの腰部、膝内側、外果周辺などに幾つかのタトゥーが施されている。それらは服に隠れるような部位に存在しており、模様も飾り気のないシンプルな直線や十字の形をしている。(文化的な意味合いが乏しい)

 

②オーストリアの医師はアイスマンにある15のタトゥーと経穴の位置を比較検討。その結果、9つが6mm以内、3つが6mmから13mmの間の距離に位置し、さらに2つが経穴ではないが経絡上、そして1つが「丘墟」と「解渓」の中間にあった。左腰部の3つはそれぞれ「胃兪」、「三焦兪」、「腎兪」とほぼ一致し、左外果の後方のものは「崑崙」、右膝内側は「曲泉」、右下腿外側は「陽輔」の位置に対応。

※「」付きは全て東洋医学の経穴。すなわち「丘墟」、「解渓」、「胃兪」、「三焦兪」、「腎兪」、「崑崙」、「曲泉」、「陽輔」が鍼灸師の用いる経穴の名前。

 

③画像診断によりアイスマンの頚部・腰部・仙腸関節・股関節などに変形性関節症が存在。そのため各タトゥーの位置は、それらの症状の局所または関連痛を感じる部位に一致しているのではないかと推察する研究者たちもいる。

 

④よって中国で経絡経穴が認識される前にすでにユーラシアで鍼のような治療が発祥していたのではないか、という大胆な仮説がある

 

このように書いています。

 

続いてシベリアのパジリク(アルタイ山中)で出土した紀元前400年頃と思われる男性ミイラを引き合いにだしています。このミイラにもタトゥーが複数ありました(腰左側に11個、右側に3個、右足かかと付近には弓形に6個の点)。これらは2種類のタトゥーで装飾的でと非装飾的なもので双方の違いは明らか。それゆえに非装飾的な入れ墨は治療目的であったと考えられていると紹介しています。

対して、アイスマンのタトゥーは何本かの平行線であったり十字であったりしますが、いずれも装飾的とは思えない。

よってアイスマンのものは装飾のためではなく治療目的で入れたタトゥーではないかと考えられるわけです。

 

具体的に出てきた「胃兪」、「三焦兪」、「腎兪」の3つは腰部にあり、腰痛治療に用いられる腰の経穴です。そして外くるぶし後ろにある「崑崙」も割と鍼灸師腰痛に用いる経穴です。他にも膝の「曲泉」、下腿外側の「陽輔」。腰痛には下腿や下肢に鍼をすることが珍しくなく、ピンとくる経穴です。腰痛があった時に局所(患部)である腰部の経穴を使用するのは分かりやすいのですが、足、特に外くるぶしの「崑崙」を思いつくことは鍼灸師でないと難しいのではないでしょうか。また経穴に一致しないまでも経絡上に2か所のタトゥーが存在するといいます。そうなると経絡・経穴の概念がアイスマンの時代に存在したことをうかがわせます。

 

しかし森ノ宮医療大学の記事では、アイスマンのタトゥーが治療目的であったして、それは単純に痛いところに刺激をするために皮膚に傷をつけて煤を擦り込んだに過ぎないと考えられないか、としています。それが人間の本能に近い疼痛緩和手段であったという解釈ならば納得できるとし、鍼治療や経絡・経穴の起源がヨーロッパにあることは無理があると述べています。最後を『疾患・症状に対応する治療点として経穴を「認識」したこと、それと前後して経脈を「認識」していたこと、そしてそれらを最初に体系化および文献化したこと、それらが中国であったことに今のところ異論はないと思われます。』と締めくくっています。

少し整理すると、海外の医師はアイスマンのタトゥーから鍼治療、経絡・経穴の概念が見受けられてその起源は中国より早く、ヨーロッパの方が先ではないかと主張し、日本の森ノ宮医療大学では、それはたまたまであり、中国が起源であることに間違いはない、という見解、となるようです。

 

具体的なアイスマンのタトゥー画像を以下のサイトで確認することができます。

http://iceman.eurac.edu/

 

ここで私個人の見解を書いていきます。結論を先に述べると、判明していないことであり今後の研究を待つのが妥当、というものです。結局推論に推論を重ねている部分が多いと思うからです。私が疑問に思うことを挙げます。

 

①本当に年代測定は正しいのか

②そもそもアイスマンは生前腰痛を患っていたのか

③腰痛を患っていたとしてその対処法としてタトゥーを入れたのか

 

年代測定は古くなれば古くなるほど精度が落ちることが知られています。歴史でいえば5000年前というのは比較的新しい年代になりますが、文献が残っていないのであれば成分や内容物などで判断されます。詳しいことは省きますが、太古も今も大気組成や諸条件が同じ(あるいは変化してもそれば微々たるもの)という条件下で測定するのです。そこに大きな矛盾が生じるケースを知っているので年代測定が完全に正しいのか少々疑問を持っています。もしも年代測定が異なった場合、中国の経絡・経穴の概念が伝わったと言えて論争自体が無くなります。

 

腰痛を患っていたというのは画像診断ですべり症や変形があったからそう推測しています。しかしMRIで腰部ヘルニアの所見が出ていても無症状の人もいますし、画像診断で強い所見がみられなくても強い腰痛を訴える人がいます。画像診断と所見が一致しないことがあることを知っているので、果たしてアイスマンは本当に腰痛だったのか?、と疑問があるのです。腰痛が無かったとしたらタトゥーは腰痛と関係の無い意図で施されたことになります。

 

そして腰痛があったとして治療目的でタトゥーを入れたのか(入れてもらったのか)ということ。状況証拠(非装飾的で文化的意図を感じない、経穴の位置とかなり一致している、それも経絡の概念も示唆される)で腰痛治療とタトゥーを結び付けているのに過ぎなないのでは、という疑問というか懸念です。最近完結した人気マンガ「ゴールデンカムイ」では大量の金塊を隠した場所を示す暗号として入れ墨を用いるという話があります。そのように全く関係の無い(想像できない)理由でタトゥーを入れた可能性はないのかという考え。

 

このような純粋な疑問がアイスマンについて幾つか記事を読んで浮かびました。

 

確かに鍼灸師としてタトゥーの位置は非常に経絡・経穴に近いものを感じます。腰痛があったと仮定するならばなおさらです。また細かくタトゥーをみると十字や易のマークにも見える気がして東洋的な印象を受けます。

ただし他に5000年前のヨーロッパで我々が今も用いる経絡・経穴の概念を示す資料が見つかっていないことも確かです。本当は見つかっているのかも、と疑えばそれまでですが。アイスマン以外に無いからこそ、話題になったわけですし。

このように個人的に疑問と感想を述べているだけで何の建設的なことはありません。今後の研究で新たな可能性が出ればそれをまた専門家が検証し新たな歴史を作っていくことになるのです。今後に期待という感じです。

 

甲野 功

 

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