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~就職先の違いと考察~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 スライド資料
スライド資料 あはき技術が活かせる職種の区分

 

 

先日、鍼灸マッサージ専門学校1年生を招いて就職先や卒業後の進路について話をしました。きっかけは当院に来ている学生さんから「個人院とグループ院の違いやポイントを教えてください」という要望からでした。1年生ですが卒業後の就職やどのようなキャリアを進めるのか考えていて素晴らしいです。

 

今回はその時に話をした、私が考える就職先の違いとそれぞれの考察を述べていきます。結局、入ってみなければ分からないのですが、私の経験と周囲の話を総合してここら辺が一般論として学生さんに話しても間違っていないだろうという最大公約数の項目にしてみました。

 

まず鍼灸マッサージ専門学校を卒業したらどうするでしょうか。もちろん国家試験を合格して、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の免許を取得しているという前提です。私が考える卒業後の進路は大きく分けて4つだと考えていて、

『臨床』

『教育』

『研究』

『その他』

です。繰り返しになるのでざっと書きます。

 

『臨床』は術者として相手(患者さん、お客さん、利用者さん、クライアントなどなど)に施術行為を行うこと。多くの卒業生がこの道に進むと思いますし、原則そのために専門学校に行き学び国家試験を通過するのです。

『教育』は専門知識を活かして誰かに教えること。教員養成科に進学して専門学校の教員になるのが大きな流れですが、就職先での後輩指導や、予備校講師になって国家試験対策をする、ブログや動画などのコンテンツを作成する、セミナー講師、コンサルタントなどもここに入ると考えています。

『研究』は鍼灸マッサージの技術を学術的に研究すること。これも教員養成科や大学院などに進学するのが近道だと思いますが、臨床現場で症例報告を集積して学会で発表することも研究になります。また教育分野で教員をしながら研究発表することも珍しくありません。東洋医学関連の研究所もありますからそこに入職するという場合も。

『その他』は上記3つに当てはまらないもの。例えば経営者。臨床をしないで経営に専念する。あるいはイベント企画を中心にする。あるいは他業種に就職するとか。鍼灸用品のメーカーには鍼灸師免許を持つ営業担当者がいて、同じプロとして現場の先生の声をよく理解してくれるということがあります。また敢えて全く関係の無い業種に就職してしまうとか。

 

これら4つはモザイクのように重なる部分があり、どれか一つだけではなくどれがメインになるか、ということ。開業すれば患者さんへの施術(『臨床』)だけでなく経営業務(『その他』)が関わりますし、スタッフを雇えば技術指導をする(『教育』)こともあります。かつ症例報告をまとめて論文発表する(『研究』)ことも。

 

さて、この中からさらに一番多い進路となる『臨床』について掘り下げていきます

 

臨床の現場。もう少し解像度を上げて<あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の技術(あはき技術)が活かせる職種>を区分してみましょう。個人の意見ですが、主だったものはこの4種類になるかと考えています。

 

施術

リラクゼーション

医療現場

介護分野

 

個々にみていきましょう。

 

施術積極的に身体に介入し改善を求める

患者さんの心身の不調を鍼灸マッサージの技術によって改善を試みる職種。保健所に開設届を出す「施術所」で行うことがほとんどでしょう。今の世間的ない意味としてリラクゼーションも施術に入ると思いますが、それとは別にしています。また同じ内容でも医療現場、介護現場とは働く場所が異なるだけでなく、少々意味合いも異なるので別にしています。柔道整復師を含めて、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師は開業権が認められて、医師の指示の下ではなく独自判断で施術行為が行えます。その範疇ということ。

 

リラクゼーション主に慰安、疲労回復を目的とする

上記の施術との違いは改善を求めるよりも慰安や気分転換などを主にしているということです。リラクゼーションでも自律神経が整うだろという意見もありますが、それは副次的な扱いでお客さんにリラックスしてくれることを第一目的にしている職種という意味合いです。保健所に開設届を出していないリラクゼーション店が多くなります。

 

医療現場現代医療(標準治療)に準じた環境での施術行為

病院、クリニックなど医師がいる職場で働くもの。ここでは原則医師の指示の下、業務を行います。他の医療スタッフとの連携が求められます。きちんと現代医療の知識があることが必須で、東洋医学でアプローチするにしても説明できないと業務に支障をきたすでしょう。

・介護分野:疾病や加齢により失った身体機能の改善や低下予防を目的とする

訪問マッサージ、訪問鍼灸、介護施設などで働くもの。リハビリテーション施設はどちらかというと医療現場の方で、利用者さんに対して改善することよりも機能低下防止の方に注目するところだと言えます。

 

各分野で求められる技術、知識、接遇が変わります。働く環境も、相手の層も異なるので就職先を選ぶのに大きなポイントになると思われます。対象者は誰に、どのような内容の、どんな職場環境か。

 

職種の区分に対して次は職場の区分をしてみましょう。これも私個人の分類になります。この比較が学生さんから求められた内容になります。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 スライド資料 臨床を行う職場の主な区分
臨床を行う職場の主な区分

 

 

①個人単独院術者がオーナーでもあり、個人で運営する単独院

②個人グループ院術者がオーナーでもあり、個人で複数の院を経営

③雇われ単独院オーナーが術者とは別にいて、術者が雇われ院長の単独院

④雇われグループ院オーナーが術者とは別にいて、術者が雇われ院長の多店舗

⑤医療機関病院やクリニックなど医師の下で働くところ

⑥訪問・介護訪問マッサージ、訪問鍼灸、介護施設などで保険診療が主のところ

これらの主だった違いを述べます。

 

①個人単独院

個人事業主の術者が独りで、あるいはスタッフを雇って、運営する「施術所」。その院のみで分院展開をしていない業態です。当院を含めて、とても多いやり方です。

良くも悪くも“個人商店”であり院長(=オーナー)が全ての権限を持ちます。同時に臨床において“スター”であり、患者さんの多くは院長のファン。そのためオタク用語でいう“箱推し”になることはほとんどなく、院長が辞めたら例え店舗が残ったとしても患者さんは離れていくもの。

こういう職場に就職する場合は院長(=オーナー)との関係性がとても重要です。経営も臨床も院長が握っているので、いわば弟子入りに近い雇用形態になりがちです。就職する方も院長に憧れて入職することが多いと思われます。私が新卒で就職した鍼灸整骨院がこの業態でした。のちに多店舗展開をするので②個人グループ院に変わっていきました。

 

②個人グループ院

個人事業主の術者が複数の院を経営している業態です。本院、分院という区分があります。あまりあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師には多くなく、柔道整復師も持っている術者に多い業態です。整骨院で多店舗展開することが多かったです。

あくまで一般論ですが、一人の人間(オーナー)が管理するには3院が限界と言われており、院数が多くなるとオーナーが現場(術者の立場)から離れ、経営及びマネージメント能力が必要になってきます。このとき一流の術者が一流経営者とは限らないので、そこにハードルができることがあります。術者としていつまでも一線で活躍したいという欲求を捨てきれない、人を使うのが下手、といったことで。グループ院内のシステム(ルール)構築が必要となるため、現場で働く人間の自由度が下がる傾向があります。例えばマニュアルが徹底している。技術の流派はこれ、このやり方をしなさい、接遇はこうしなさい、など。

新卒だとマニュアルがしっかりしていて言われた通りにすれば一通りできるようになる、という点ではとても有効です。反面、鍼灸の流派にこだわる人には窮屈に感じることがままあるでしょう。複数のスタッフがいるので多くの人のやり方や考え方を学べる利点があります。

 

③雇われ単独院

資本を持つオーナーが別にいて、臨床現場が免許を持つ術者が任されている場合。かつ単独で分院を持たない業態です。オーナーは別業種で資金調達をしている場合や、同業者であるが資金に余裕があり現場を誰かに任せているということもあります。

この業態では資金面の苦労が少ないことが大きな特徴です。個人事業主として自己資本で開業しているのとは違うので給与待遇がしっかりしていることが多いです。反面、あくまでも院はオーナーの持ち物でありますから、テナントの立地や内装、コンセプトなどオーナーの意向には逆らえないことが多いです。

また経営者としてシビアに数字を見られるので術者とオーナーの間で軋轢が生じることがあります。特に全く異業種が資本提供をしていて、現場を知らない(考慮しない)職場だと現場の術者は苦労しやすくなります。細かい法律やリテラシーが分からないため、結果的に患者さんやお客さんの不利益になることを強いられてしまうなど。

 

④雇われグループ院

③雇われ単独院と同様に資本を持つオーナーが別にいて、臨床現場が免許を持つ術者が任されている場合。そして複数の院を経営しています。オーナーは別事業を展開する企業や起業家のことが多く、資本力があります。経営のプロが経営権を握っています。

単独院以上にオーナーと現場を繋ぐ中間管理職が必須となります。場合によってはエリアマネージャーのような複数の店舗を統括するような役職があります。複数の店舗を展開し経営規模が大きいため、ブランドやコンセプトの統一に苦慮する場合があります。鍼灸師は結構自分のやりたいようにやる人間が多いので、店舗ごとにやり方や雰囲気が変わってしまうことがあります。そのため別ブランド(一見同じグループだと分からない)にしてしまうやり方もあります。

経営規模が大きいので新卒術者の大量雇用をすることが多く、個人事業主が多いこの業界において、一般企業に近い感覚で就職活動や研修が受けられることがあるようです。

 

⑤医療機関

病院、クリニックなど医師の指示の下施術を行います。主に保険診療を扱う施設で、便宜上、⑥訪問・介護と別にしています。現実的な話であん摩マッサージ指圧師、鍼灸師が入職するのは簡単なことではありません。というのは、医師は当然の事として、他のコメディカルとやり取りできる能力が必須となります。現代医療の知識、カルテの描き方、医療機関の衛生管理、ルールに従えることなどが求められます。協調性が低いとされる鍼灸師(※過去に母校の教員養成科での鍼灸学生を対象にした研究発表でこのような報告がされました)はここの所が問題視されます。医療機関では臨床力よりも協調性の方が大切で、独自判断のスタンドプレーは禁止です。

画像診断など施設が施術所よりも充実していることが多く、医療現場を知るにはとてもいい職場です。また給料制度、待遇がしっかりしていることが多いです。

 

⑥訪問・介護

健康保険を用いた訪問施設、介護施設です。あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師が個人事業主として経営しているところも入れます。他業種の業者や企業が運営していることが比較的多い職場です。多くの事業所を展開しているところも少なくありません。

利用者さんは基本的に高齢者が多く、その対応が一番求められます。高齢者特有の事情を理解していかないといけません。また利用者さんだけでなくそのご家族らとの関係性も重要となります。ご家族、近親者からクレームが入ってしまうと業務に支障をきたします。

保険を用いて施術する所がほとんどであるため、保険制度に左右されるところがあります。また移動中の交通事故に注意しないといけません。就業時間がきっちりと決まっていることが多く、給料も安定しているところが特徴です。

 

職場形態も一長一短があるので就職する際には違いをある程度理解しておくことが必要でしょう

 

雇う側である雇用主の本音も考えてみるといいでしょう。雇用主からすると「勉強させてください」という態度の人は正直なところ要らないのです。日本の一般企業では何も知らない新卒学生を一から研修して育てる風土がありますが、この仕事は技術職です。セミナーを受けに来ているのではないのだから、利益を出してもらわないと雇う意味がありません。術者を育てるには膨大なリソース(時間、人手、資金など)を使います。新卒を雇ったところで最初はまず利益になりません。もちろんそのことは分かっていますが、なるべく早く戦力となってもらいたいし、そうでないと困ります。ですから「勉強させてください」という態度よりも、できなくても「力になりますので」という方が好まれます。

更に臨床で利益を出すまでは他の業務で仕事ができる人材が好ましいのが雇用主の本音です。臨床以外の業務として広報活動、経理、SNS運営など。事務的な業務ができるのであればとても雇いやすいです。反対に、「鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師なんでそういことやりたくないです」、という人は雇用したくないでしょう。

 

就職するにあたり各職場の特徴を理解し就職先を考慮することが望ましいでしょう。繰り返しますが実際に中に入ってみないと分からないことがありますが、無策で就職活動するよりはいいと思います。

 

甲野 功

 

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