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~鍼灸は医業だという証拠?~

厚生労働省ホームページ 〇脱臼骨折等に対する手当について
厚生労働省ホームページより 〇脱臼骨折等に対する手当について

 

 

鍼灸は医業なのか?という内容のブログを投稿をしたところ、いやいや鍼灸ははっきりと医業の一部だと明記されている文書があるのですという意見がありました。それが昭和25年(1950年)に出された山形県知事あて厚生省医務課長回答「脱臼骨折等に対する手当について」です。

 

厚生労働省ホームページ

○脱臼骨折等に対する手当について

 

全文を掲載します。

(昭和二五年二月一六日)

(医収第九七号)

(山形県知事あて厚生省医務課長回答)

 

照会

右について山形地方検察庁より別紙の通り照会があったから貴局の見解を御指示煩わしたい。

 

(別紙)

脱臼骨折等に対する手当に関する照会について

 

(昭和二五年一月三一日)

(山形県衛生部長あて山形地方検察庁照会)

捜査の必要がありますから至急左記事項につき御回答を煩わしたい。

 

1 按摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第五条によれば按摩師及び柔道整復師は原則として医師の同意を得た場合の外脱臼又は骨折の患部に施術さしてはならないとあるが右患部に対する施術は医師法第十七条に所謂「医業」と看做されるのであるかどうか。

 

2 若し看做されるとせば免許を受けずして柔道整復を業としている者が業として右患部に対して施術する行為は医師法第十七条違反として処罰すべきであるか、それとも概括的にあん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第一条違反として処罰すべきであるか。

 

回答

二月七日付医第六五号で貴県衛生部長から照会の標記の件については左記のとおり回答する。

 

1 あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第五条に「施術」とあるのは、当然「あん摩術又は柔道整復術」を意味するが、これらの施術を業として行うことは理論上医師法第十七条に所謂「医業」の一部と看做される。

2 然しながらあん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第一条の規定は、医師法第十七条に対する特別法的規定であり、従って免許を受けないで、あん摩、はり、きゅう又は柔道整復を業として行った場合は脱臼又は骨折の患部に行ったと否とを問わず同法第一条違反として同法第十四条第一号により処罰されるべきであり、医師法第十七条違反として処罰さるべきではない。

 

この回答文章1の

これらの施術を業として行うことは理論上医師法第十七条に所謂「医業」の一部と看做される。

と、回答文章2の

あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第一条の規定は、医師法第十七条に対する特別法的規定

という文面をもって、鍼灸は医業であると厚生省が見解を出しているのだという意見です。

 

改めて法律の部分を説明していきます。

医師法第十七条』は“医師法第17条:医師でなければ、医業をなしてはならない。”というもの。

あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第一条の規定』というのは、この当時は柔道整復師も一緒になっていますが、現在の「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」、通称あはき法(以後、この法律をあはき法と表記)の“あはき法第1条:医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。”を言っています。

 

抜き出した文章だけを読むと、これらの施術(鍼灸を含む)を業として行うことは理論上、医師法第17条にいわゆる「医業」の一部とみなされる。だから医業の一部である

次の文章を読むとあはき法第1条の医師以外の者で、と注釈をつけているのは医師法第17条(医師でなければ、医業をなしてはならない)に対する特別法的規定であるので、本来医師でなければできない医業に分類される鍼灸を特別にできるにしているのだ、という解釈になるのだと。

この意見には納得できないところがあるので説明していきます。

 

まずこの質問書は

按摩師、柔道整復師が脱臼・骨折の患部を施術する(具体的には整復操作であろうと推測します)としたら、この行為は医師法第17条にある医業にあたるのか?

そして、もしそれが医業の一部だというならば無免許で柔道整復をしている者がその施術(脱臼・骨折している患部への施術)していたら処罰するのは医師法第17条違反としてなのかあるいはあはき法第1条なのか?

という質問なのです。率直にいうと鍼灸については触れられていない質問内容です。

 

まず質問1の主語を抜き出すと、『按摩師及び柔道整復師は原則として医師の同意を得た場合の外脱臼又は骨折の患部に施術さしてはならないとあるが右患部に対する施術は』です。つまり主語は、「按摩師、柔道整復師は医師の同意なしに脱臼・骨折の患部を施術することは」となります。続いて述語にあたるのが『医師法第十七条に所謂「医業」と看做されるのであるかどうか』になります。つまり按摩師、柔道整復師は医師の同意なしに脱臼・骨折の施術することは医師法17条で定められている医業に看做されるのかを問いています。

 

ちょっと補足情報を入れますと、現行の法律では柔道整復師は応急処置において、脱臼・骨折の患部を医師の同意なしに施術することができます。どういうことかというと目の前に脱臼あるいは骨折をしている人がいたら、独自判断でその幹部を施術(骨の位置を戻す整復操作を含めて)できます。脱臼・骨折という状態は重篤な症状でありますから、医師以外が手をだしてはいけません。しかし柔道整復師は対応できる知識と技術があるとして医師の同意なし、独自判断で施術できるのです。反面、按摩師(現在はあん摩マッサージ指圧師)は医師の同意なしに脱臼・骨折の施術をすることは許されていません(あはき法第5条に規定)。これは人体を触れるあん摩マッサージ指圧師では脱臼・骨折の整復操作ができる技術があるかもしれないので法律で禁止しています。

このことを踏まえて続きを読んでください。

 

改めて医師の同意なしに按摩師(現あん摩マッサージ指圧師)と柔道整復師が脱臼・骨折の施術をすることは医業とみなせるのかという質問です。

更に細かく文章をみると『医業に看做される』と原文にあります。看做は(みなす)と読みますが、看做の意味を調べてみると小学館デジタル大辞泉では<1 仮にそうと見る。そうでないものをそうとする。仮定する。2 判断してそうと決める。>、コトバンクでは<1 実際はそうではないことを承知の上で、あるものを別のあるものであると考えて扱う。見たてる。>、とあります。つまり、本当は医業でないけど医業としてみなしていいですかという意味になると考えられます。

 

続いて質問2の内容です。もし医師の同意なしに脱臼・骨折の施術を無免許で柔道整復術を行っている人がいたらその行為を処罰するのは(該当する法律は)医師法第17条なのかあはき法第1条なのですか、と問いています。

 

このように見ていくと、サイトページのタイトルが「脱臼骨折等に対する手当について」とあるように、質問はあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師が医師の同意なしに脱臼・骨折の施術をすることに関する内容です。

 

そして質問1に対する回答です。『あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第五条に「施術」とあるのは、当然「あん摩術又は柔道整復術」を意味するがとあります。第5条というのが<あはき法第5条:あん摩マツサージ指圧師は、医師の同意を得た場合の外、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。>という文言。この第5条にある施術はもちろん、あん摩術又は柔道整復術を意味すると回答する文面で確認しています。

(※この時代は柔道整復師もあはき法と一緒になっているので現在の文面には柔道整復師のことは載っていません。後に柔道整復師は独立して単独法になるのです。)

そしてこれらの施術(=按摩、柔道整復)を業とすることは“理論上”医師法第17条でいわゆる医業の一部だと看做されると回答しています。繰り返しになりますが、「看做される」という表現には実際はそうでないけどね、というニュアンスがあるのかもしれません。更にあえて”理論上”とついています。理論上は按摩、柔道整復術は医業の一部とみなされますということ。つまり理論上であって法的に医業の一部だということは無いのだ、と文面からうかがえるのです。そしてそもそも内容は按摩術と柔道整復術に関していて、鍼灸は関係ありません

 

続いて質問2に対する回答内容です。しかしながら(然しながら)と文章が回答1に続きます。あはき法(このときは柔整も含めて)第1条の規定は“師法第17条に対する特別法的規定であり”としながらも、無免許であん摩マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復術を業として行った場合は(脱臼・骨折の患部の施術云々関係なしに)違法行為として問われるのはあはき法第1条違反であり、具体的な罰則はあはき法第14条に規定されている内容で処罰されるべきものであり医師法第17条違反で処罰されるべきは無い、としています。

どういうことかというと、質問の趣旨は脱臼・骨折の施術について質問しているが、それとは関係なしに無免許であん摩マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復を業としている者がいたら、違法行為として該当する法律はあはき法第1条であって、医師法第17条ではありませんよ、ということ。あはき法第1条は医師法第17条に対する特別法的規定、というのは、処罰する法律を医師法ではなくあはき法にするため、にかかる表現だと思います。この部分『あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法第一条の規定は、医師法第十七条に対する特別法的規定』をもって鍼灸は医業の一部だと断定するのはいかがなものでしょうか。

推論すれば、本来あん摩マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復を業とすることは医業にあたるので、無免許でそれをしたとしたら(医師以外の者で医業をしてはならない、とある)医師法第17条違反で処罰するのが当然であるが、特別法的規定としてあはき法第1条があるので、違法行為として処罰するのはあはき法第1条である。だから鍼灸は医業に分類される。という理屈でしょうか。

 

ただ質問の流れとして按摩師、柔道整復師の脱臼・骨折の施術に関することが主にあるので鍼灸に関することではありませんでした。ついでに鍼灸も法律で一緒にしているから無免許で業とする者がいたら医師法ではなくあはき法で処罰をするようにと述べているように思います。回答1で按摩・柔道整復は医業の一部とみなされる。回答2で広い意味で違反した場合は医師法で処罰しないように。このような流れ。だから鍼灸も医業の一部とみなされるという結論に導き出すのが妥当なのでしょうか。

 

そして最も納得いかないのが、昭和25年(1950年)という70年前の厚生省が出した文章を引き合いに出すのに、現在進行形で厚生労働省が公式に出している「鍼灸は医業類似行為である」という見解を無視していること。70年も経てば社会状況は大きく変わります。昭和20年代は鍼灸は医業の一部として立法化し社会的にそういう扱いだったのかもしれませんが、途中で法解釈を変えて鍼灸は医業類似行為として扱い、行政も医師会もその認識で動いている。それは芦野氏も証言しているように厚生省が解釈を変えたのです。

70年前の厚生省の文書と現在の厚生労働省の公式見解。どちらを優先させるのでしょうか。

 

甲野 功

 

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