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~演劇鑑賞『マニラ瑞穂記』~

文学座公演 マニラ瑞穂記 リーフレット
文学座公演 マニラ瑞穂記 リーフレット

 

 

昨日は患者さんが出演する舞台を観劇しました。6月に続いて2作品連続です。前回の観劇でとても感性を刺激されて。しかも場所が新宿区と自宅から近い。また患者さんにチケットをお願いして観てきました。作品は『マニラ瑞穂記』。

 

文学座公演 『 マニラ瑞穂記 』

 

作中の時代は明治31年(1898年)8月。フィリピンのマニラにある日本領事館が舞台です。この時代のフィリピンは独立のため内乱、戦争が起きていました。日本領事館へ暴徒化した民衆から逃げてきた在留邦人が避難してきます。駐在軍人、領事などの登場人物が混乱のフィリピンで生きていくという内容です。

 

公演するのは前回観劇した『田園1968』と同様、文学座です。2回目なので少し文学座のことが分かってきました。ホームページによれば1937(昭和12)年9月に久保田万太郎氏、岸田國士氏、岩田豊雄氏(=獅子文六)の文学者の発起によって創立されました。

「真に魅力ある現代人の演劇をつくりたい」

「現代人の生活感情にもっとも密接な演劇の魅力を創造しよう」

という創設理念でした。

文学、演劇の知識が無いので創設者がどのような人物なのか定かではないのですが戦前からある劇団です。少し創設したお三方を検索すると新宿区、港区に地縁がある方でした。

 

さて今回の『マニラ瑞穂記』は文学座アトリエでの公演でした。前作は新宿のサザンシアター。今作品は文学座の本拠地といえる場所での公演です。

まずこの文学座アトリエという建物が凄かったのです。

 

文学座アトリエ

 

場所は東京都新宿区信濃町。JR総武線信濃町駅と東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅の間にあります。近くに慶応大学病院があります。実はこの近辺は散々歩いてきたのです。私の高校は國學院高校で高校生の頃は毎日信濃町駅の横から神宮外苑を抜けて高校に通学していました。子どもが大きくなると神宮外苑にあるにこにこパークへ連れて行くため外苑東通りを電動自転車で走っていました。文学座アトリエは外苑東通りから少し入ったところにあります。こんなに近く、そして縁のある場所にこのような施設があるとは全く知りませんでした。

 

中に入ると年季の入った舞台設備でタイムスリップしたかのような気分になりました。歴史を調べると昭和25年(1950年)に竣工。今から70年も前にできたのです。伊藤義次氏の設計でイギリスの建築様式であるチューダー様式が採用されているそうです。建築の知識は特にないのですが、私の祖父、父、姉が建築に携わっているので建築物に対して感じるものがあります。一目で普通ではないと分かりました。この文学座アトリエは文学座の稽古場であり文学座の拠点となります。このような歴史的建築物が新宿区に残っていることが驚きです。個人的に新宿区のことを調べている私には、まだ知らない凄い場所があったのかと興奮しました。

なお平成31年(2019年)3月15日に新宿区地域文化財に登録されています。ちなみに新宿区地域文化財は2022年9月現在47件が登録されており、有形・無形を問わず価値が認められたもの。そう簡単に登録されるものではありません。

 

アトリエ内の舞台は独特な造りでした。通常の舞台は1方面に客席を置いてありますが、ここはほぼ正方形の舞台に2面に客席があります。2面に加えて対角線にも客席があるので、正確には8角面で3面が客席という作り。よって通常の舞台である上手、下手という概念がありません。私は対角線の座席でしから舞台を斜めから観る状況でした。俳優が出入りする場所が複数あり、私の座席横の階段通路も俳優が通ります。そこまで観劇経験があるわけではありませんが、このような舞台は経験がありません。3面が客席でしかもどの席からも舞台がかなり近いのです。前回のサザンシアターもそうですが客席が後ろに広がっていることがほとんどなのに、この文学座アトリエの舞台は半分を客席が囲んでいるのです。私はプロレスが好きで若いときはかなり観戦したのですが、プロレス会場に近い造りだと感じました。そして劇団の本拠地ということで様々な設備があるのでした。それは劇が進むにつれて判明していきます。

 

時代背景が日露戦争前のフィリピン。私は詳しくない時代です。そのため時代背景がピンとこなかったのが感想です。登場人物は前作『田園1968』よりもずっと多く、登場人物を含めて物語を理解するのに少々苦労しました。患者さんに聞いたのですが、文学座はしっかりとした会話劇をする劇団なのだとか。そのためセリフの量がとても多く、登場人物同士の会話を中心に劇が進んでいくように感じました(そこはあまり観劇経験がないので比較が難しい)。それは前作『田園1968』も同様。

 

今作の大きな違いは3方向から観客が観る舞台であるため、明確な正面がないということ。そのため俳優の横顔、正面、そして後ろ姿もみえるのです。正面1面の舞台ではセリフを話す劇の中心にいる人が背中を向けていることはあまり無いと思うのですが、作中ちらほら背中越しのセリフが入ってくるのです。登場人物は一人ではないので誰が話しているのか分からなくなりそうなものですが、セリフでキャラクターを際立たせるのと背中の動きで判別させていました。背中で語る、などの表現がありますがまさに背中の演技。声の出し方、語り口(方言など)で分からせることに感心します。

今作『マニラ瑞穂記』は途中15分の休憩を挟んで2時間半あります。そのうちほとんどはセリフが飛び交います。登場人物が多いとはいえセリフの量はとてつもないものだと思います。ミュージカルで歌や踊りを挟むこともありません。アクションシーンが多いわけでもありません。立ち振る舞いとセリフでほぼ全編紡いでいます。単純に凄い記憶力だと思います。かなり速いテンポで会話の応酬があるのです。

 

それと前作との大きな違いは服装やメイクの変化があったこと。着替えからメイクチェンジを相当なスピードでやっているのです。凄く汚い恰好から綺麗な着物と化粧へ。裏にはけてから再登場まで十分な時間があるとは思えない短さ。途中、あまりに容貌が変わったので同一人物か判別するのに迷ったこともありました。そういう点も含めてプロの舞台俳優の力量がみえました。もちろん裏方も優秀なのでしょう。

 

そして今回特にプロの技術を感じたのが照明です。ライティング技術。常設の劇場あるため舞台横の床にもライトが設置しています。舞台の斜め下からライトを当てることができ、天井や壁にあるものと組み合わせて様々な表現を可能としていました。どう見ても夕方の西日に見える演出。俳優の顔に角度をつけて当てることで表情に深みが出てシリアスさが増す。当然、舞台に立つ俳優はライトの当たり方も考慮して演技しているであろうし、照明を操作している裏方もそれに合わせていることでしょう。照明技術で舞台がこれだけ変わるのかと驚くばかり。

 

会話の多い劇ですが、相応の実力がある俳優がセリフの応酬をしていることがよく分かった場面がありました。本当に僅かな出番の役がありました。おそらくキャリアが浅いのでしょう。出てきて少ないセリフを放ったときに明確に主要登場人物と差がありました。存在感や熱量が周りに比べて格段に低い。この方は最後の挨拶に舞台に立っていなかったので修業中というところなのでしょうか。その登場によって他の登場人物はハイレベルな演技をしていることが明確になりました。素人目にもはっきり分かるのですから舞台は実力が如実に出る残酷なものでもあると感じます。

 

ここまでセリフが多い、会話がほとんど、と書いてきましたが、唯一ほとんどセリフの無い登場人物がいました。日本語を忘れてしまったという設定なのですが、わずかなセリフと動きで演じます。登場する時間は非常に短いのですが、存在感があります。

物語の最後になると無言の時間が出てきました。感情をかみしめるように間があきます。セリフではなく無言の間で演じる場面が出てきました。素人目にも無言の演技は相当難しいと思います。最後の方に表情、目くばせ、姿勢などで物語を締めくくる俳優たち。

その最後の最後に、ほとんどセリフの無い登場人物が現れます。うめき声と表情。照明と効果音が装飾します。それまでほとんど下を向いている演技ばかりだったのが、最後に表情がはっきりわかるように顔を上げて。とてつもないインパクトがありました。年齢からしても大ベテランなのだと推測できます。長い演劇キャリアと培った人生があの表情を創っているのだと思いました。何か”別格”という存在感でした。ストーリーとしてはいなくても構わない人物だと思うですが、敢えて入れてそして最後のシーンを任せた。よく分からないのですが脚本家や演出家の示した謎かけなのかと思いました。

 

そして劇が終わり、演者が舞台に並びました。やはり今回も俳優が素に戻った瞬間に恐怖のような感情が芽生えます。憑りついた悪魔が消えさったような。表情も姿勢も別人のよう。いや別人を演じていたのが素の自分に戻したのですが。人が変わる、という表現がありますが、文字通り人・人格が変わったように見えます。心身に凄い負担ではないのかと仕事柄心配になるのです。

 

今回は歴史的建築物で、文学座の本拠地で、舞台をみました。色々と驚きの連続で同じ新宿区にあのような空間があることが大きな発見でした。私の仕事は、根幹に「人をみる」ことがあります。舞台上の俳優というかなり特殊な人をみることで勉強になりますし刺激をもらいました。

 

甲野 功

 

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コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    中原 三桜里 (土曜日, 17 9月 2022 05:19)

    甲野先生、文学座の舞台を観ていただいたようでありがとうございました☺️
    また施術よろしくお願いします!

  • #2

    あじさい鍼灸マッサージ治療院 (土曜日, 17 9月 2022 10:36)

    中原三桜里さん
    コメントありがとうございます。文学座公演の観劇、刺激になりました。
    またご来院お待ちしております。