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~医療としての「実質」を備えて生き残る~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 内原先生の授業風景
内原先生の授業風景

 

 

先週の金曜日。毎年恒例となっている東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科において、2年生を対象にした特別授業を関東鍼灸専門学校内原拓宗副校長担当しました。前半が内原先生が後半は私が担当し、各々の立場で鍼灸師がSNSとどう向き合ってきたのかを話す内容です。

 

2017年に初めて行ったときは、内原先生がクラウドファンディングで母校の鍼灸学生さんに書籍を提供するという取り組みを教員の卵に紹介するという感じでした。当時は非常に珍しかったクラウドファンディング。それを行い鍼灸専門学校の学生に自己啓発というかビジネス書籍に該当するタレント本を配るという前代未聞の行動。結果は目標額を達成して学生達に本を配布することができました。

そのあと、学生だけでなくこれから専門学校の教員になる人たちにも本を渡さないと意味が無いのではないかという意見を受けて、内原先生は母校である東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科に本を寄贈することに。その際にTwitter上で本を寄付してくれる人間を募ります。私はその本を購入して読んでいましたし、その関係で関東鍼灸専門学校の副校長という立場の人間がクラウドファンディングを達成したことも情報として知っていました。経歴を見ると私と同じ教員養成科を卒業している先輩だということも。その内原先生が母校教員養成科に本を寄贈するというので私も支援することにしました。内原先生が直接、教員養成科へ本を手渡しするときに一緒に行くことになりました。そこで私からの本を渡すという予定。

そのときに、当時の教員養成科学科長が「クラウドファンディングという珍しい経験を生徒に話しませんか」と特別授業という形で時間を作ってくれたのでした。つまり内原先生の活動報告が発端なのでした。本を渡すところを見学するつもりだった私に、一緒に開業鍼灸師の立場からどのようにSNSを使っているか話をしませんか、と提案してくれたのが内原先生でした。つまり完全に内原先生のおこぼれの形で私の授業担当が決まったのでした。

 

私がこの授業で伝えたい、いや伝えないといけないことは前にも書きましたが集客や経営のこと。独立開業して自ら経営するにあたって事業を存続させるためにどのようなことをSNSを使ってしているのか。それが一番だと思っていますし、そう学校側から期待されていると感じています。個人で開業することがとても多い鍼灸師。ひいき目抜きで母校の教員養成科はとても教育レベルが高く、特に臨床に関する授業は非常に質が高いと思っています。『10年間の修業を2年間で』を謳い文句にしているほど。そこに加えて、実際に経営するには、もっと範囲を狭めて集客するには、患者さんに来てもらうには、どうしたらいいのかを実体験を踏まえて卒業生である私が話す。それが最初に話をすることになったときに自分に課せられたテーマだと思いました。

 

対して内原先生の報告というのは、語弊があるかもしれませんが、閉塞して身動きが取りにくい鍼灸専門学校専任教員という立場で大きな(当時の状況としては非常識な)行動をして成し遂げたことの顛末を知りたい、教員養成科の生徒たちに知らせたい、と(当時の)学科長が考えたと思うのです。私はもちろん専門学校の教員免許を持っていますし、周りに教員をしている方がたくさんいます。話を聞けば色々な制約に苦しんでいることが分かります。我々開業組の大きな制約はほぼ一つ。経営が成り立つか、です。それが上手くいけば自由でとても楽しいやり甲斐のある仕事です。専任教員は臨床家である以前に組織に属する教育者として仕事をしなければなりません。学校のルールはもちろん、厚生労働省と文部科学省の指導があります。ここ3年は新型コロナウィルス流行により、たくさんの新しいルールに縛られてきました。そういう実情を、当事者ではないので完全に理解できるとはいえませんが、分かる立場に私はあるので毎年内原先生の授業を注意深くみています。

 

今年の内原先生の授業で注目したのが、鍼灸が生き延びるための方法として挙げた例の一つ『医療としての「実質」を備えて生き残る』という点でした。

 

内原先生の授業はまず、自身のここ5年間を振り返るものでした。

2017年に最初に話したクラウドファンディングを達成、同じ時期に(比較的若い)鍼灸師同士がTwitter上で繋がりはじめます。まさに私が内原先生と交流が始まったきっかけがTwitterで、実際に初対面したのは授業当日の教員養成科職員室でした。それまで学校、学会、技術練習会、師会など出会う機会が限られていたのがSNSによって年齢、場所、所属を問わず一気に交流が広がった年だと私も考えています。

2018年はセルフブランディングだったと内原先生は振り返ります。ブログを書き、Twitterのフォロワー数を増やすことに注力。毎月関東鍼灸専門学校校舎でセミナーを開催し、この時点でその様子をZOOM配信していました。私も何度も関東鍼灸専門学校に出向き、そこで数多くの同業者や学生さん、関係者と出会いました。

2019年は評価(信用)経済社会と内原先生はいいます。当時感銘を受けた概念が“錯覚資産”だそう。内原先生はこの頃からオンラインサロンの限界を感じ、千葉大学医学部での勉強に気持ちをシフトしていきました。

2020年になるとご存知の通り新型コロナウィルスが世界的に流行し対面コミュニケーションが途絶、オンラインコミュニケーションが一気に普及します。専任教員として内原先生は教育現場の対応に追われます。

2021年になっても新型コロナウィルスの影響は続きます。世間のオンラインセミナー疲れが出てきます。内原先生は『社会のホワイト化』というキーワードを出し、それが昨年の授業で私が特に注目したものでした。

そして今年2022年。内原先生は更に社会のホワイト化が進んだと言います。

 

私は内原先生と立場、環境は違えど納得できる部分がままあります。新型コロナウィルス流行という社会状況とSNSというツールによって、良くも悪くも情報が飛び交い、それまで見えてこなかったものまで白日の下に晒される。その流れで社会のホワイト化がどんどん進んでいるといいます。私も時代がますますコンプライアンス重視になっていると感じていています。その時代変化によって、これまで社会の目を集めにくかった鍼灸あまし師の特殊性やおかしな所が表面化し、批判されやすくなっている、と内原先生は話します。現在、千葉大学医学部で鍼灸臨床を行う内野先生。医師と対話し、他の医療従事者と一緒に仕事をする上でよりそう感じているのでしょう。

そこで鍼灸は、民間療法の一種なのか、医療の一部なのか、という命題に突き当たります。それが内原先生にとって非常に重要なテーマであるはずです。

 

大学病院で鍼灸をして千葉大学で医師と漢方を勉強している内原先生にとって、鍼灸は医療であるしそうでなければいけないわけです。大学病院で鍼灸施術をしておいて、鍼灸は医療ではありませんから、とはならないわけです。それは私も大学病院で鍼灸師として働いた経験があるので間違いなくそう思います。対して日本の鍼灸の社会的立ち位置は曖昧で、昔からある民間療法で現代医療とは違う所にある、という印象が一般的に強く持たれています。あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師と並び開業権があるため医療機関で働くケースが極端に少ない鍼灸師。医師の指示の下、業務を行わない。サービス業、民間療法の一種になっていないか。その問いかけが内原先生にあります。

 

このことに関しては意見が分かれるところだと思います。開業鍼灸師の立場からすれば、冒頭に書いた通りまず経営が成り立たないと話になりません。理想、信念、希望。続かなければただの綺麗ごと。

だからといって儲けるなら何をしてもいいのかというのも違います。情報化社会、そして社会のホワイト化。内原先生と違う面から悪いことはすぐにバレて罰せられる時代になったと私は痛感しています。

 

内原先生はこれから鍼灸が生き残るための2つの選択肢を挙げましたが、その一つが『医療としての「実質」を備えて生き残る』でした。私は二択ではなく、どのような形にせよ最低限医療としての「実質」を備えないと生き残れないと考えました。それは鍼灸に限らず、あん摩マッサージ指圧師も柔道整復師も。これらは厚生労働省が管轄する国家資格免許である以上。例え世間から「鍼灸なんて医療ではないだろ!」と思われたとしても『医療としての「実質」を備えておく』ことは必須であるし、そうでなければ鍼灸院の経営も鍼灸師としても生き残れないと考えています。その根拠は私がリラクゼーション業出身で、“医療としての「実質」を備えずに”お客さんに向き合っていたから。経験上、それが無ければゆくゆくは廃業していただろうと体感していたのです。

 

では『医療としての「実質」』とは何を指すのか?。内原先生はその定義を示していませんが、私のこれまでの職歴上、それは深い知識であり技術であり覚悟であり社会的責任などであると思うのです。人体に鍼を刺す技術だけならちょっと習って練習すれば習得できてしまうでしょう。安全に・効果を出すために、どう刺すのか体現するには膨大な勉強と練習が必要です。またそれによって人に危害を加えてしまうかもしれないということを知り、本来やってはいけないことをするという認識を持つこと。そういった覚悟やライセンス(免許)も必要。つまり具体的に言うと専門学校で学ぶことだと思うのです、『医療としての「実質」』って。専門学校教員でかつ大学病院で鍼灸をする内原先生が用いる概念はそういうものではないかと。

 

今年も考えさせられる内容でした。

 

甲野 功

 

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