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~盲学校の学生さんが来院しました~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 ガラス作品

 

 

当院では鍼灸マッサージ専門学校の生徒及び進学希望者を対象に「学生ペア割」というシステムを実施しています。これは臨床現場を見学や体験したい学生さんあるいは希望者がいたとして、なかなか現場を見せてもらえないという現状があります。

ある意味それは当然のことで、患者さん側からすると知らない人が立ち会って見られるのは嫌でしょうし、術者側からしても見学者にいてもらいたくないと思うわけです。少なくとも私は大切な患者さんへの施術を面識のない学生さんに見学させることは嫌です。

それならば、学生さんがペアになって訪れて互いに体験と見学を交互にすればいいわけです。この取り組みは数年前に都内の鍼灸マッサージ専門学校学生さんが希望して、当院で実現したものです。これまでたくさんの学生さんがこのシステムを利用してきました。

 

そして今日は初めて盲学校の生徒さんが学生ペア割で来院しました。盲学校とは視覚障害がある人が通う学校で、その中にあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師を取得するための科があります。一種の職業訓練校とも言えます。

按摩師はり師は古くから視覚障害者の生業としてあったもの。音楽家と並ぶ職業でした。かの杉山和一検校は江戸幕府4代将軍徳川綱吉に鍼治療を行いました。今の日本鍼術の主流となる管鍼法を生み出したと言われております。杉山和一は盲人であり、検校とは盲人の最高位を表す階級。墨田区には杉山江島神社に祭られています。杉山和一検校は江戸時代に盲人向けの按摩鍼の教習所を設立します。これは現代では視覚障害者のための職業訓練養成所にあたります。世界初の障害者のための職業訓練施設になるのです。このように江戸時代から視覚障害者が社会的に自立するための学校があるのです。

私は過去に4名の視覚障害者の方と働いたことがあります。また実質先天性の全盲のあん摩マッサージ指圧師の知り合いがいます。専門学校では弱視の教員に授業を習った経験があります。あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師という仕事は視覚障害者と非常に深い繋がりがあると考えております

 

一言で視覚障害者といっても障害の程度は様々です。生まれついて視力が無く、「見る」という動作も「色」・「姿形」という概念も無い方もいます。視野狭窄で視界の周囲が見えない、見えづらい方。視野欠損で視界の一部が見えない、見えづらい方。極端に視力が低下している方。進行性の病状で段々と視力を失っていく方。など。

 

今回SNSを通じて盲学校の学生さんから連絡がありました。今は音声読み上げ機能があるので視覚障害者の方もSNSを使っていることが珍しくありません。文面でのやり取りで日時や内容を詰めて昨日の来院に至りました。駅に迎えに行った方がいいのか尋ねたところ自力で行けるという返答でした。どれくらいの視力なのか分からなかったので(事前に根掘り葉掘り確認するのも失礼かと思いまして)、少し安心しました。どのように体験と見学を実行したらよいのか頭の中でシミュレーションしておきました。

当日は私の想定以上に視力があったのでほとんど普段の学生ペア割と変わらない内容でした。

 

今回の盲学校学生さんが来院したことで今までよく分からなかった視覚障害者の実態を知ることができました。同じ業界にいるようで接点がほとんどない世界。多様性が叫ばれるなか、視覚障害者の方と接する機会は驚くほど少ないのが実情です。新宿区には視覚障害者支援の施設が幾つもあるにも関わらず。何より私の職業は視覚障害者と共に歩んできた歴史があるのに。盲学校のシステムもよく知りませんでした。先天性の視覚障害と後天性のそれとはやはり大きな違いがあるそうです。これまで断片的に聞いてきたことですが、現在進行形の学生さんと話をすることでより鮮明になりました。盲学校ではこう、専門学校(健常者が通う鍼灸マッサージの専門学校)ではそうなのですね、といった声。知らないことばかり。盲学校には盲学校の文化というか通例があって、こだわりやしきたりがあるようだと感じました。

 

鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師の人数には視覚障害者が当然含まれています。しかしなかなか一緒に働くという現場は多くないわけです。悲しいことに視覚障害者を疎ましく思う人はいて、差別用語を用いて“マッサージはそいつらの利権だ”といった意見を衆人環視のSNSに投稿する人がいます。それも同じ鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師免許を持った晴眼者(健常者)が。医療に分類される資格免許を持ちながら、まして盲人と歩んできた歴史のある資格を持ちながら、なんて汚い言動なのだろうと辟易とします。人体の能力としては相当なハンディキャップを背負いながら健常者と同じ技能を習得して自立して社会を過ごそうとしている人々に対して。もちろん障害者が誰もが聖人君子とはいいません。性格が悪い人、いけ好かない人もいるでしょうが。しかし仮にも同業者に向ける言葉なのだろうか、と。

 

今回の学生ペア割、盲学校の学生も受け入れてくれるか心配だった、ということを言われて少なからず悲しかったです。同業者お断りというところも少なからずありますが、視覚障害があるから断れるかもしれないと学生さんが懸念していたのです。そういう現実に気持ちが悪くなりそうです。

そして後天的に視力を失うことがあるということを実感します。事故、病気、怪我などで視力が失われることがある。そのため盲学校で資格を取るために勉強している人がいるという現実。私だって将来病気や事故で視力を失うことがあるかもしれません。誰にだってあるかもしれません。それなのに視覚障害者を下に見るというのはどういうことでしょう。

そして進行性病変というものがあります。段々と視力が低下し視野が狭くなっていく。もしそのような病気にかかってしまったら、視覚障害者を悪く言っていた人たちはどうなるのでしょう。吐いた言葉が自分に襲い掛かってくることでしょう。

 

現在確認できる鍼灸マッサージの養成機関は167校あります(既に募集停止したところも含む)。そのうち視覚障害者を対象とした養成機関は65校。今年2月末に行われた第30回の国家試験においてあん摩マッサージ指圧師国家試験では全合格者数1,082名中、視覚障害者は182名(全体の16.8%)で、はり師国家試験の全合格者数2,956名中、視覚障害者は128名(全体の4.3%)です。数ではマイノリティでありますが同じ職業の人達です。何か私でも盲学校の学生さんに対して手助けできたのかと考えると嬉しいです。かつて職場の先輩として視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師の方々に様々なことを教えてもらったから。

 

甲野 功

 

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