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~メタバースとは何か~

メタバース見るだけノート表紙
メタバース見るだけノート 宝島社 岡嶋裕史監修

 

 

ここ数年よく耳にするようになったメタバース。世界一のSNSであるフェイスブック、そしてインスタグラムを運営するFacebook社が2021年10月に社名を「Meta(正式にはMeta Platforms)に変更しました。メタバースのメタであることは明白で、株式の銘柄コードもMetaverse(メタバース)の略であるMVRSとなり、このことからもMeta社はメタバースを強く意識していると言われています。

この社名変更はなかなか衝撃があり、あれほどの大企業が社名を変更するのですから相当なことです。単純に社屋の看板から社員の名刺までとてつもない手間と資金がかかったはずです。何より日本ではGAFAMといって巨大企業を総称してきました。GAFAMとはGoogleAppleFacebookAmazonMicrosoftの頭文字を並べたもの。そのFacebook社がMetaに変更したのでこの言い回しも今後無くなるかもしれません。

 

開業してから経営や経済、社会環境を勉強するために数多の書籍を読んできました。その中で重宝してきたのが「見るだけノート」シリーズ。今でも新刊が出るとかなりの確率で手に取っています。昨年行きつけの本屋で目に入り勉強しようと買ったのがこれです。

 

メタバース 見るだけノート 岡嶋裕史監修 宝島社

 

この本を読んでメタバースとは何かを勉強しました。すると今まで何となく知っていた用語の意味が少し理解できてきて、これからの未来を考えるきっかけになりました。

 

まず「メタバース」という言葉の意味はどういうものでしょう。メタ(meta)は“超えた”・“高次の”を意味する言葉で、それに“世界”・“宇宙”を意味するユニバース(universe)を合成したものです。1992年にSF作家のニール・スティーヴンスンが書いた「スノウ・クラッシュ」という小説で初めてメタバースという単語が登場したと言われています。30年前から既に存在していたとは驚きです。語源を直訳してみる「メタバース=高次な宇宙」になるでしょうか。しかしこの語訳だと正確な表現とはいえず、本書では現実とは異なる「もう一つの世界」とするのが適切と述べています。実際にはメタバースの解釈が定まっていないといえるそう。さらに本書では『現実離れした「都合の良い世界」を作れることこそがメタバースの本質なのです。』としています。

 

“現実離れした都合の良い世界を作れること”という表現はなかなか危険なような気がします。空想、妄想、願望といった心に浮かんだことを具現化するということになります。そこに個人的な怖さと懐疑心があります。実際のところはどうなのでしょう。読み進めてみました。

 

基礎知識としてメタバースを理解するためには、○○リアリティと言われる3つ用語の各々の違いを知っておくことが重要だといいます。それらは以下の通り。

 

VR(Virtual Reality=仮想現実)

これは「現実世界とは別に作られた空間」を意味します。具体的には以下の3要素を満たすものとされています。

・三次元の空間性

・実時間の相互作用

・自己投射性。

 

AR(Augmented Reality=拡張現実)

現実世界の空間にコンピュータで何らかのバーチャルなオブジェクトを「加える」技術。高性能なスマートフォンの普及によって広まりました。2016年にリリースされた「ポケモンGO」は、ARゲームの典型例。他には自撮りアプリの「SNOW」や、会議に用いられる「Zoom」のバーチャル背景などに活用されています。

 

MR(Mixed Reality=複合現実)

現実の空間の位置情報等を細かく把握してそこにバーチャルな情報を加える技術のこと。「VRとARの中間」または「ARの進化形」と表現されます。

 

VR、AR、MR。最近耳にする用語の定義です。これだけ読んでもいまいちピンときません。そこでもう少し新たな用語を足してみます。それがミラーワールドです。

ミラーワールドとは何でしょうか。直訳すれば“鏡の世界”。メタバースと類似したものであるが、それとは異なる概念を示します。メタバースが『現実とは異なる、都合の良いもう一つの世界のこと』だと本書で述べています。あくまで現実とは異なる世界を作ることを目指しており、現実に似せた景観を作ることがあっても、それはあくまで演出の一部であると。対してミラーワールドは『現実そっくりに作った世界である「デジタルツイン」から、現実に対してフィードバックが返ってくる関係性のこと』を指すとしています。

どういう比較かというと、メタバースは現実とは異なる場所であり、ミラーワールドは現実世界と連動して常に情報をやり取りし現実世界の様子を変化させている、という対比。現実と異なった世界を作るのがメタバースで、現実に即した世界がミラーワールドということ。

 

更に新しい用語「デジタルツイン」が登場しました。現実そっくりに作った世界をデジタルツインと言い、「疑似現実」と説明されます。デジタルツインが現実世界にフィードバックを返すようになると、それがミラーワールドとなるのです。ですからミラーワールドはまず現実そっくりな世界であるデジタルツイン(疑似現実)ありきということでしょう。

 

なお、メタバースにはVR(仮想現実)技術の利用が進んでいて、ミラーワールドにはAR(拡張現実)やMR(複合現実)の技術が適しているといいます。というのはデジタル空間に現実世界を再現する場合、ゼロから作り上げるよりも既にある現実世界にバーチャル情報を混ぜ込む方が効率的に作れるわけです。例えば最初からドラゴンクエストの世界をバーチャルで作るのはとてつもない工数がかかりそうですが、現実の風景にスマートフォンを通すとキャラクターが写る「ポケモンGO」のようなものを作る方が手間がかからないわけです。つまりデジタルツイン(疑似現実)に対してはAR(拡張現実)が得意であるわけです。

 

このようにVRとARを比較してみます。VR(仮想現実)は仮想空間に何もないとろころから作らないといけないため多くの工数やコストがかかります。その代わり自由に世界観や仕組みを決めることができます。AR(拡張現実)はリアル(現実世界)にバーチャルなオブジェクトを加えるため、デジタルツイン(疑似現実)を構築するのに適しています。もちろん現実世界ありきですからVRのように自由に世界観をつくることは難しいでしょう。

 

技術的な視点からメタバースという現実離れをした都合の良い世界を作ることを考えると、何となく見えてきます。完全にオリジナルの世界(つまり仮想現実:VR)はデジタルの中にしか作れません。人間は創造主ではありませんので。しかし現実世界とリンクしているミラーワールドはAR(拡張現実)技術を用いればデジタル外でも作れそう。プロジェクションマッピングもある意味でAR技術と言えるかもしれません。

 

さて私の仕事がメタバースと関係があるのか。それが重要です。

例えばメタバース内で鍼灸師、マッサージ師として仕事をすることになるのか

現時点で考えられる答えはNoです。

 

アバターといわれるデジタル内のもう一人の自分をメタバースでは用いることになりますが、実際の肉体を持たないため物理刺激を行うことができません。メタバース内の設定でアバターの体が疲れたというステータスを作り、それをデジタル的に回復させるということはできるかもしれませんが、そこに現実世界の技術は介入できないでしょう。30年以上前からあるRPG(ロールプレイングゲーム)の金字塔「ドラゴンクエスト」では、敵の攻撃でダメージをくらうとホイミという回復呪文や薬草というアイテム、あるいは宿に泊まるということで回復します。そのときにドラゴンクエストをプレイする人に特殊技術や知識(医学など)は必要ありません。それと同じです。

メタバースの世界でアバターが病気になる、それを治すための職業をメタバース内で設定する。このようなルールを強いれば別ですが、それはどう見ても「都合の良い世界」とは思えません。むしろ現実世界で障害や病気のため自由に行動できない人々がメタバース内では自ら望む行動ができるようにするのが本来のメタバースをする目的になるでしょう。

 

ただこれはメタバースというかVR(仮想現実)の世界の話。AR(拡張現実)の技術を用いたものは今後大いに関係がありそうです。例えば鍼灸専門学校の授業において、実技練習で受け手の体にツールを通して経穴・経絡が表示されるようにする。スマートグラスとか端末を通して見ると体表面に経穴(ツボ)や経絡(気のライン)が浮かび上がる。それを指標に生徒が取穴(ツボを取ること)する。あるいは講師の動きを画面上に映し出してそれを参考に学生が鍼をうつ。このような練習や実技補助は既に医療の世界では導入されていて、外科手術の補助に使われているといいます。

 

今のところメタバースは関係がないが、AR技術によって実技練習方法に新しいものが導入され、臨床(鍼灸施術)の補助に用いられる未来が訪れるのではないでしょうか。そのように私は2023年1月6日現在で考えています。

 

より現実的なことで世界の大企業がメタバースに対してどのように取り組むでしょうか。それによって私の考察も本当にあるのかそうでないのかが予測できるでしょう。最初に挙げたGAMAMの5社。これらの企業がメタバースに対してどうしようとしているのか本書では予測しています。

 

まず社名を変えて真っ向から取り組む姿勢を見せているMeta社。SNS分野では王者でありますが他社に比べてプラットフォーム(基幹部分)を持っていないと指摘されます。フェイスブックにしろインスタグラムにしろベースとなる技術は他社のプラットフォームに依存しています。その弱点を克服するためにメタバースにおいてプラットフォームを獲得しようとしていると思われます。新社名は正式には「メタ・プラットフォームズ」としているくらいですから。

次にSNSには注力してこなかった検索サイトの王者Google社です。リアル志向のビジネスベースの考えが強いと言われています。そのためあくまでも現実のビジネスに即した戦略を取ると考えられ、グーグルグラスというAR技術でビジネス市場を取りにくると思われます。

世界的に製品のファンが多いApple社。ソフトウェアではなく製品(ハードウェア)における売上が大部分を占めるApple社はデジタル領域のメタバースは縁遠いと思われます。そのためメタバースを理由するにはiPhone、iPad、Mac などのApple社製品が必須であると市場に認めさせるようなやり方をするのではないでしょうか。

WindowsやOfficeなどのソフトウェアが強いMicrosoft社。現実社会のビジネスで使われる情報システムの中核部分を担っている企業であるため、メタバースに力を入れるメリットはさほどありません。そのためミラーワールドの方に舵を切るでしょう。既に「ホロレンズ」というツールを販売し、MR(複合現実)と呼んでいます。

流通の王者Amazon社。実はAWSという世界最大のクラウドサービスを持っている世界一のクラウド企業です。そのためメタバース自体がAWS上で行われインフラを担う可能性があるといいます。

 

本書の内容をかいつまんで紹介しました。大きな市場が見込まめる分野なので各社何かしらの関りが出てくるようです。

 

メタバースについては現時点ではよく分からないというのが私の本音です。次はこれが来る!と騒がれてもそうはならなかったものがままあります。個人的な予想としてはコロナ禍で人々のリアルな交流や行動が大いに制限されたこの数年。その反動でより現実世界の交流・行動が貴重であると認識されているように感じています。私の本業である臨床、あん摩マッサージ指圧、鍼灸には(今のところ)関係が薄いと捉えています。ただテクノロジーの発達によって補助的に活用できるものが出てくるのではないでしょうか。それはVR(仮想現実)ではなくAR(拡張現実)で。

 

甲野 功

 

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