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~国家試験漏洩は何の「柔道整復師法」違反になるか~

柔道整復師 関係法規教科書 医歯薬出版株式会社
柔道整復師 関係法規 医歯薬出版株式会社

 

 

1月12日に初公判が開かれた柔道整復師国家試験問題漏洩事件。2名が起訴されております。

柔道整復師国家試験の問題内容を事前に入手し、その情報を関係のある柔道整復師専門学校に教えた罪に問われています。それが違法行為にあたることは明白なのですが、具体的にどの法律に抵触するのでしょうか。警察は柔道整復師法違反の疑いで逮捕し、やはり柔道整復師法違反の疑いで被疑者は起訴され、公判が行われました。柔道整復師法について関係する部分をみていきましょう。

 

柔道整復師法。この法律は第一条(目的)にこのように記されています。

第一条 この法律は、柔道整復師の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律することを目的とする。

もちろん柔道整復師に関すること全般を規定する法律です。

 

その中で今回の事件に直接関わるのが柔道整復師法『第三章 試験』の項目です。ここで表記されている『試験』は柔道整復師国家試験を指します。つまり柔道整復師法第三章は柔道整復師国家試験に関する項目です。

 

柔道整復師法第11条は柔道整復師試験委員に関するものです。

第十一条 厚生労働大臣は、厚生労働省に置く柔道整復師試験委員(次項において「試験委員」という。)に試験の問題の作成及び採点を行わせる。

2 試験委員は、試験の問題の作成及び採点について、厳正を保持し不正の行為のないようにしなければならない。

厚生労働省に置く柔道整復師試験委員(以下、試験委員)に国家試験の問題作成及び採点を行わせると柔道整復師法で規定されています。この試験委員にあたるのが公益財団法人柔道整復研修試験財団の元理事であった三橋被告です。そして柔道整復師法第11条2で試験委員は問題作成において厳正を保持し不正の行為のないようにしなければならないと規定しておりますが、それを破ったことになります(初公判において被告は検察の起訴内容を認めている)。

また柔道整復師法第13条の5不正行為の禁止においても

第十三条の五 試験委員は、試験の問題の作成及び採点について、厳正を保持し不正の行為のないようにしなければならない。

と第11条2と同じことを記載されています。

この部分が直接的な違法行為として逮捕された理由だと思われます(2月1日に判決が言い渡されたときに判決文が公開されると思うのでそのときに正確なことが分かることでしょう)。

 

では違反したらどうなるのでしょう。柔道整復師法『第七章 罰則』の項目に規定されています。

第二十八条 第十一条第二項又は第十三条の五の規定に違反して、不正の採点をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

柔道整復師法第28条には、第11条第2項または第13条の5の規定(どちらも「試験委員は、試験の問題の作成及び採点について、厳正を保持し不正の行為のないようにしなければならない」という内容)に違反して不正の採点をした者は1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する、としています。初公判では、三橋被告が懲役10ヵ月、黒田被告に懲役1年を検察側が求刑したのはこの法律によるものと思われます。裁判官がどう判断するのでしょうか。

 

執行猶予が付くのか分かりませんが求刑通りになったとします。そうなると欠格事由が関わってきます。欠格事由とは柔道整復師免許を与えない条件です。柔道整復師法第4条にはこうあります。

第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

一 心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

三 罰金以上の刑に処せられた者

四 前号に該当する者を除くほか、柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

この第4条3の罰金以上の刑に処された者。もしも両被告に懲役刑が確定した場合、この第4条3に該当する可能性があります。なお両被告は当然ながら柔道整復師免許を取得した柔道整復師です。第4条の文面をみるとこれから柔道整復師免許を取ろうとしている者を対象にしているように思われますがそうではありません。柔道整復師法第8条には「免許の取り消し等」に関して規定されています。

第八条 柔道整復師が、第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

厚生労働大臣は第4条の欠格事由に該当した者の柔道整復師免許を取り消す、あるいは柔道整復師業務を停止することができるのです。判断は厚生労働大臣にありますが、もしも免許取消となったとしたら被告にとっては更なる罰となるでしょう。年齢的にもキャリア的にも柔道整復師関係の仕事が大部分だったと予想されます。柔道整復師の業務ができなくなると大きなダメージであることは想像に難くありません。(執行猶予が付くかもしれませんが)懲役刑だけにとどまらず副次的な罰則が科されられます。

 

なお第8条には柔道整復師免許の再交付について規定されています。

2 前項の規定により免許を取り消された者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えることが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。

つまり刑に処されてもその罪を償ったらまた免許を与えられることもできるということ。どちらにせよ判断は厚生労働大臣に委ねられます。

 

ここまでは被告に関することを柔道整復師法からみてきました。

 

個人的に気になっていることがあります。

柔道整復師法『第三章 試験』の項目で「不正行為者の受験停止等」です。

第十三条 厚生労働大臣は、試験に関して不正の行為があつた場合には、その不正行為に関係のある者について、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による処分を受けた者について、期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

第13条には柔道整復師国家試験に関して不正があった場合、その不正行為に関係のある者についてその試験を無効とすることが厚生労働大臣にはできます。今回の事件で4つの専門学校に国家試験の情報が漏えいしたのは捜査で判明していると報道されています。その情報を得て国家試験に臨んだ受験生は“不正行為に関係のある者”ではないのでしょうか。受験者の意志とは関係なしに情報を知ってしまったとは思いますが、常識的に考えて不正行為に関係しているのは確かなのではないでしょうか。

この事件では報道において専門学校側の関与があまりされていません。一番国家試験情報を得たいのは専門学校と受験生であるはず。専門学校が両被告に依頼して情報を得ていたのではないのか、という疑問がずっと残っています。早い話、専門学校側には何のお咎めもないのでしょうか。昨年の第30回柔道整復師法国家試験に合格できなかった受験生も、意図せず問題情報を得て受験した受験生も、もやもやする感情が残ると思います。両被告が罰を受けてこの事件は終わるのでしょうか。

 

柔道整復師業界において前代未聞の事件。2月1日にどのような判決が下るのでしょう。

 

甲野 功

 

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