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~無免許はり施術死亡事件~

日本経済新聞 サイト はり治療後に死亡、副院長に有罪判決 大阪地裁
日本経済新聞 はり治療後に死亡、副院長に有罪判決 大阪地裁 より

 

 

ちらほらと、はり師免許を持たない者の毫鍼施術の噂を目にするようになってきました。

 

よく使う「鍼灸師」という言葉。正確には「はり師」と「きゅう師」の国家資格免許を取得した者をいい、業として鍼灸を行うことを国(厚生労働省)から許可されている人です。ほとんどの場合、「はり師」と「きゅう師」の両方の免許を取得しているので鍼灸師と一まとめにしますが、少ないですが「はり師」のみの人、「きゅう師」のみの人も存在します。

 

免許制度であるから当然なのですが、鍼(はり)施術を業として不特定多数の人に行うには「はり師免許」が必要です。自動車を公道で運転するには普通自動車運転免許が必要なように。どれだけ「自分には卓越した自動車運転技術があるから免許など必要ない!」と主張しても無免許自動車運転をすれば逮捕されます。同じように「はり師」免許を持たない者が“はり施術”を勝手に行えばそれは違法行為となり逮捕されます。

 

この“はり(鍼)”には種類が多数あり、どこまでを“はり施術”とするか解釈が分かれるのです。毫鍼(ごうしん)という人体に刺入する、つまり刺す鍼が多くの人が想像する鍼だと思われます。それ以外にも鍉鍼(ていしん)という身体に刺入しないで押す、撫でる、当てるといった操作をする金属の棒状のものも鍼に入れています。他には円皮鍼(えんぴしん)という短い(0.3mm~1.5mmくらい)棘のようなものが出ていてそれをシールで体に貼る鍼もあります。小児鍼といって子どもだと毫鍼は刺激が強すぎるので、器具を用いて皮膚を撫でるような刺激を用いる技術があります。

 

最近、はり師免許を持たない者がこれらの“はり施術”を行うというケースが増えています。柔道整復師免許しか持たない者が、小児鍼ができます、とSNSで宣伝をする。鍉鍼ならはり師でなくてもやってよいという解釈。円皮鍼は誰でも貼れるので患者さんに渡して自分で貼るように指示をする、あるいは患者さんがネット通販で円皮鍼を購入して自分で貼っているという状況。これらのような、見過ごされているだけで厳密に言えば違法行為となることがまま見受けられます。毫鍼のように体に刺さないものならOKというのは都合のよい解釈です。最低限、自分の体に行うことはセルフケアだからいいだろうとしても不特定多数の人に行うことは違法となるでしょう。

 

関連法律(通称、あはき法)に業務独占という項目があり規定されています。また円皮鍼は医療器機に該当するので本来は医師あるいははり師でなければ手に入れることができません(扱うことができない)。現状ではネット通販で買えるという矛盾がありますが。また鍉鍼の類で○○鍼という名称の器具を雑誌の付録にしたり、やはりネット通販で購入できたりする環境もそれを助長しています。

鍼灸をはじめとして日本の東洋医学(伝統医学)には「養生」といって自ら健康であるために努力しましょうという文化があります。現代だとセルフケアといいますか。そのため自らお灸を据える、ツボを押す、体操をする、ストレッチをするなどの指導を行ってきました。その延長なのか分かりませんが、本来免許が必要な“はり施術”が悪い方に身近になっている側面があります。

 

問題は毫鍼です。身体に刺す鍼である毫鍼ですら「はり師免許を持たない者」が行うという話を耳にするのです。想像すればわかる通り体に鍼を刺すのですから、その危険さは他に挙げた“鍼(はり)”とは比べ物になりません。素人が手を出してはいけません。危険という意味には、感染症、鍼が途中で折れる、といったことも加味されます。美容なら何をしてもいいだろうと素人が自分の顔に毫鍼を刺す、あまつさえそのやり方を整体スクールが指南して料金をとるという事態が過去にありました。厚生労働省は「健康被害が生じるおそれがあるか」を重要視しており、毫鍼は高い確率で“健康被害が生じるおそれがある”ものです。

 

では実際にはり師免許を持たない者が毫鍼の“はり施術”を行って健康被害が生じることがあるのでしょうか。

あります。過去に死亡事故が起きているのです。

 

はり治療後に死亡、元副院長に有罪判決 大阪地裁

 

これは2009年12月に鍼灸整骨院で、当時鍼灸専門学校に通う柔道整復師が、来院した患者の背中に鍼を刺して外傷性気胸を起し死亡したものです。執行猶予付きですが懲役3年、罰金50万円の有罪判決が出ています。

あまり知られていない事件で、鍼灸師でも初めて知りましたという反応が多くありました。このことを教訓にしないといけません。

 

私がこの事件のことを知ったのは柔道整復師専門学校に通っている頃、職場の鍼灸整骨院で業界団体からの通知によるものでした。

2009年当時、私は鍼灸師になって3年目で午前中は柔道整復師専門学校に通い、午後から鍼灸整骨院に出て臨床を行っていました。被告と免許を取る順番が逆ですが、似たような状況にあったといえます。柔道整復師が無免許であるにもかかわらず職場ではり施術をして、患者が死亡した。この内容の通知文章が柔道整復師業界団体から職場に届いたのです。その報告を読んで驚きましたが、その時は学業、実務が忙しくて特に気に留めることもなく(余裕もなく)流してしまいました。同僚の鍼灸師達も大きなリアクションが無かったように記憶しています。

それから10年以上経過し、本件のことを調べてみると数多くの問題があることが分かりました。

 

まず当初逮捕されたのが、無免許はり施術を行った柔道整復師かつ鍼灸専門学校学生である被告、それと同鍼灸整骨院の経営者(院長)の2名。つまりが逮捕されたのは2名いたのです。しかし院長は院内ではり施術が行われていたことを知らなかったと証言し、罪に問われていないようなのです。判決が出たのは柔道整復師のみ。なお被告が元副院長とあるように、事故が起きたあとに被告を解雇したようです。

 

また院長は被告がはり施術をしていたことを知らなかったというのは無理がある話で他の従業員は知っていたと話をしたとか。ここら辺はネットに転がっている情報なので真偽が定かではありません。上記の日本経済新聞社サイトの記事よれば2009年9月から12月の期間に14回はり施術を行っていたとあります。これだけ行っていてそれを把握していないというのは無理があると思われますが。

 

死亡した原因は背中に深く鍼を刺したことによる両肺外傷性気胸。それは裁判によって因果関係が明らかだとされ、自然気胸ではないという判断です。気胸とは肺に穴があく病態で外部からの物理刺激で起きたものを外傷性気胸、自然に起きたものを自然気胸といいます。記事によれば裁判長は『「安全なはりの深さなどの認識が乏しく、必要な専門的知識や技能を十分有していなかった」と指摘。「危険な施術を繰り返した過失は大きく、結果も極めて重大」と述べた。』といいます。このことは確かにその通りです。

他にも情報を調べると色々とその時の状況が出てくるのですが、真偽が定かではないので割愛します。判決文を読めればいいのですが見つかりませんでした。問題は気胸が起きてしまった過誤に対して適切に対応しなかったこと。当時の状況を調べてみると技術面よりもその後の対応面がまずいという感想です。ただ信頼できる報道以外の情報で無暗に意見するのは違うでしょう。

 

ここで最初の指摘に戻りますが、被告は既に柔道整復師免許を取得していました。副院長という肩書を得ていたことからもある程度実務経験があったと予想されます。更に鍼灸専門学校に通っていたのは業界団体の通知から間違いないようです。

 

平成22年9月 日本マッサージ新報 第62号

 

そうなると柔道整復師としての知識があります。加えて専門学校で鍼灸を習っていた。そのためまだ無免許でありながらはり施術を人に行ってしまったのだと容易に想像がつきます。私も柔道整復師ですから、柔道整復師の解剖学知識がどれだけのものか予想がつきます。自分には大丈夫という過信があったのではないでしょうか。柔道整復師免許持ちであるなら関係法規で業務独占というものがあり、無免許での施術が禁止されていることを理解した上で行ってしまったことは、無知ゆえの暴走とは言えないでしょう。自分には実力が十分にあるから免許が無くてもはり施術ができる。そのような都合の良い解釈を感じます。

 

健康被害が生じてからでは遅いのです。もはや風化しているようなこの事件を思い出して、無免許行為は危険だという事を認識しないといけないと思います。特に他の医療系免許を持っているのであればなおさら。

 

甲野 功

 

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