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~鍼を刺せない新卒鍼灸師はどうしたらよいか~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 毫鍼
身体に刺す鍼、毫鍼。

 

 

昨年2022年は1年を通じて講義、実技指導をしました。鍼灸学生さんへの座学講義、実技指導、臨床体験と見学。こういう活動をするのは鍼灸師の免許を取得しても鍼灸師を辞めてしまうことが少なくないからです。

 

私の場合、あん摩マッサージ指圧師が取りたくて東京医療専門学校鍼灸マッサージ科に入学しました。3年間学校に通うならあん摩マッサージ指圧師単独の科よりも鍼灸も取れる方がお得という考えで。現在のところ(健常者向けの)あん摩マッサージ指圧師単科がある学校は日本には3つだけです。うち2つが東京にあるので行こうと思えばそちらの学校を選択することができましたが、せっかくなら鍼灸も取っておいた方がいいよと言われ、それもそうだと納得し入学しました。つまり鍼灸師免許はついでに取ったのでした

 

専門学生時代から特に鍼は刺すのも刺されるのも好きではなく、なるべく関わらないように過ごしてきました(無茶苦茶ですが)。実技授業は課題のことだけ最低限のことをする。実技試験前に試験範囲の練習をちょこっとする。普段はほとんど自主練習をしない。そんな不真面目な学生でした。まだ灸の方が好きで火傷ができるくらい熱いものを耐えて大きな水ぶくれができたこともありました。皮肉なことに在学中、鍼実技で再試験はありませんでしたが灸実技では再試験になったことがあります。

 

かつての私はこのような状態ですから卒業も鍼はできなくても一向に構わないというスタンスでした。それが就職したところで否応なしに鍼を刺す環境になり、鍼をした患者さんの喜ぶ・驚く姿に私の方が驚き鍼技術を練習することに。学生時代はきちんとやらなかった練習を。患者さんが私の師匠であり、現場で習得したものでした。

 

このような経緯があるので私には卒業後に鍼が刺せないのは当たり前だと思っています。しかし鍼が刺せなくて鍼灸師を辞めていくという人がいるというのは信じられませんでした。そんなわけがあるわけがないだろうと。鍼を刺すのも刺されるも嫌いであん摩マッサージ指圧師になるついでに鍼灸師になった私ですらできているのに。3年間の学校と国家試験を突破してなぜやらないのだろうか。そう思っていました。

 

実はこのような話は鍼灸マッサージ教員養成科を卒業してから知ったのです。教員養成科を卒業すると周りに鍼灸専門学校関係者が増えます。同級生も先輩も。教員養成科卒業後に集まりで「3年生存率」なる隠語があることを耳にします。免許取得してから3年後、どれだけ卒業生が業界に残っているかという。それだけ続けらないということ。更に鍼灸専門学校では教員が「鍼灸師は食えない」「卒業後に生き残れるのはごく一部だけ」といったネガティブなことを生徒に話すことがあるのだと別の機会に知ります。通称「呪い」というらしい。それも信じられない話で私が鍼灸マッサージ専門学校時代に教員からそのようなことを言われた記憶が無かったからです。甘い仕事ではないから必死に勉強と練習をするように、とは言われましたが。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院を開業してからは積極的に外部の人間と交流し顔を売ることを続けてきました。同業者が来院してくれるようになりました。その過程で、新卒鍼灸師で鍼が刺せない人が多い、就職してもすぐに辞めてしまう、といった話を多々耳にするようになり噂ではなく現実なのだと知るようになりました。極端な話ですと国家試験があった年の冬の時点で鍼灸師をしているのは学年で3人しかいないという例も。もちろん学年全員の人数が3名という学校の話ではありません。20名以上の同級生である新卒鍼灸師がいたのです。なぜこのような事態になるのでしょう。

 

新卒鍼灸師が鍼が刺せない理由を内部環境外部環境で考えてみます。これは経営で用いる基本的な考えになります。内部環境とは新卒鍼灸師自らの状況・状態、外部環境とは新卒鍼灸師が置かれている環境によるものです。それらから理由を考察していきます。考察というよりこれまでの実体験や周囲の意見から導き出すものですが。

 

まず内部環境の問題。術者当人に原因があるのではないかということ。

よく引き合いに出されるのが、「技術が未熟、勉強・練習不足」ということ。ベテランの開業鍼灸師からたまに聞かれる意見です。学校で何を学んできたの?という。それは確かにそうかもしれませんが、国家試験が終わってすぐに臨床に耐えうる技術がある新卒鍼灸師がどれだけいるでしょうか。むしろそんなに甘くないのではないでしょう。本当に学校で卒業するための最低限のことしか練習しなかっという自負がある私はそう考えます。また出会った学生さんの多くはこのまま卒業しても通用しないから、とよく話します。卒業した時点で自信満々、どのような患者さんでも対応できる、という人などいないと思うのです。一昔前のように学生時代から誰かに弟子入りしてずっと習ってきたということを除いたら。

 

ここで見方を変えると、何をもって十分な技術がある、とするのか。例えばスポーツ選手が多数来院する職場ではやはり外傷、スポーツ傷害に対応できる鍼灸技術が必要だと思います。美容専門鍼灸院なら美容に関わる鍼灸技術です。これが訪問鍼灸の現場に行ったら美容鍼の出番はほとんどないと予想できます。つまりその現場で求められる技術はそれぞれであるということ。そうなると就職、研修、開業を問わず必要な鍼灸技術はそのつど習得しないといけないでしょう。学生のうちにどの分野、あるいはどの職場に行くかはっきりと決めていてそこに向けて練習を重ねていたらいいのでしょうが。ですから必要な技術を術者自らが選定することが前段階にあるのかと考えます。そしてそのための技術を習得できるだけの基本能力は必要であるとも。

 

結局術者の実力不足というのは、“どのジャンルを目指しているのかという方針を決めて、最低限の基礎ができていること”、これができていないからなのかと考えます。私は鍼灸技術をほとんど練習しないで専門学校を卒業しましたが、将来競技ダンス選手のサポートをしていきたいという希望がはっきりしていたので前段がありました。それと経穴を覚えている、筋肉を覚えている、鍼を身体に刺入できる、といった最低限のことは学校で習得していので何とかやれたのでしょう。一言で新卒鍼灸師は技術が乏しいと決めつけるのではなく、要素を分けると解決の糸口が見えてくるのでないでしょうか。

 

続いて外部環境の問題。新卒鍼灸師が鍼を刺せない環境に置かれているのではないかということ。

これは就職したものの鍼を刺す機会がない、という新卒鍼灸師が多いのではないでしょうか。先ほどと同じことになりますが卒業してすぐに臨床で鍼灸ができるかというとそう簡単にはいかないでしょう。開業してしまえば別ですが、就職したとしたら現場での研修や技術チェックを受けて上長が許可をしてやっと患者さんに鍼を刺せるようになる場合が一般的でしょう。学生のうちからずっと働き練習をしていて技術的な信頼があればすぐにできるかもしれないのですが、それは珍しいと思います。鍼灸は術者の個性が大いに関係するもの。相性があるというか。安全に刺せる技術はあって当然で、接遇面がとても重要です。そこで新卒鍼灸師は新顔であることで臨床に立つまで時間がかかることでしょう。

 

それとは別でそもそも鍼を刺す機会がないという現場もあります。鍼灸師がマッサージをする、物理療法機器の操作をするというところ。鍼灸師なのに鍼を刺せてもらえない。このパターンは結構聞きます。それが嫌で直ぐに辞めてしまうということも。鍼灸師と採用されたのに日々の業務は鍼灸以外のことばかり。やりたくないことをやらされて嫌になるという。いわゆるくさってしまう。私の新人時代もそうで患者さんに鍼をさせてもらうのは入職してかなり月日が経ってからでした。自分の場合、あん摩マッサージ指圧師であり鍼灸施術に興味が無かったので一向に苦になりませんでしたが、期待を持って職場に入った新卒鍼灸師には耐え難いのかもしれません。完全に理想の職場環境などあり得ませんから、スタッフや患者さんの信頼を得る努力をして鍼を任せてもらうようにするのが得策だと思います。全くチャンスがないならば転職をするとか、休みの日に練習させてもらうなど自ら行動しないと変わりません。

 

専門学校を卒業し、はり師免許を取得したら学校の授業は無いですし、実技試験もありません。能動的に行動するしか選択肢はありません。免許は業として鍼を刺せるという許可証であり、その人に鍼を刺す機会を与えてくれるものではない。自ら動いて鍼を刺す状況を作らないと何も始まらない。技術面に不安があるならば練習する、練習会に参加する、実習に出る、といった機会を作る。お金と時間に余裕があるなら教員養成科に進学して強制的に練習する、試験を受ける、実習をする、という環境に身を置くのも一つの手です。他にも有料の外部研修生制度があるところがあります。就職したところでは鍼が刺せないというのならば転職する、空いた時間に練習をさせてもらう、休みの日に自分で友人相手に始めてみる。そういう自発的行動が必要でしょう。

 

今月末に第31回はり師国家試験合格発表があります。合格すれば多くの新鍼灸師が誕生します。免許を取ったけど結局鍼は刺せませんということにならないように願います。免許はあるけれど鍼はしません、という考えならそれでいいです。私が当初そういう考えでした。鍼が刺せるようになったらあん摩マッサージ指圧だけよりも幅が広がったので免許があるならできるに越したことがない、そう思うのです。

 

甲野 功

 

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