開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
先週土曜日にお客様が来ました。今年国家試験をパスしてあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師になった元学生さんお二人です。過去に何度か当院に来ていただいて講義や練習会、施術などを受けてくれました。昨年までは鍼灸マッサージ専門学校の学生さん達ですが、2月末の国家試験に合格し名簿登録が済み、身分は私と同じあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の3つの免許を持つことになりました。今後臨床現場に出ていくことになります。
ここ数年、毎年春に学生時代に当院に来ていた方々とお祝いをする機会に恵まれています。皆さん、希望と不安が入り混じった感情がそれぞれです。やっと免許が得られて本格的に動き出すぞ!という人。新しいステージに立つことが不安でしかないという人。
私がずっと心に決めて実践してきたことは学生さんに成功させるためのアドバイスをするのではなく失敗することを避けるための助言をすること、です。一見成功する方が良いように見えますが、成功の定義は人それぞれになると思うのです。とにかく大儲けすることを成功というのか。自分らしく生きていくことが成功なのか。家族と幸せに暮らせることが成功なのか。成功のイメージは実は違っていて、もしも億万長者を目指すというのなら鍼灸マッサージ師よりも金融系の企業に就職するとかベンチャー企業を起業する、あるいは芸能人やインフルエンサーを目指す方が今は現実的でしょう。鍼灸マッサージ師という肩書を持ってインフルエンサーになろうという人もいるでしょうが。私は過去に読んだ本から成功の定義をこうしています。成功とは「時間・お金・交友・健康の4つの自由がある状態」。単にお金があるのではなく、お金の自由(専門用語だと可処分所得)があること。それが大事。それ以外にも自由な時間、家族を含めて交友関係が充実している、健康である。4項目全てが充実している状況。そう考えるとかなり成功に達するのは厳しいかもしれません。“幸せ”はまた別として。
失敗はだいたい万人に共通すると思います。最悪死亡する、再起不能の大怪我を負う。これらを失敗と呼んでいいのかは分かりませんが誰でも体験したくないでしょう。警察に逮捕される、多額の借金を負う、人から恨まれるといった社会的問題は分かりやすい失敗でしょう。そのような失敗を避けるために、法律のこと、業界状況のこと、過去の事件・判例、炎上騒動などを学生さんに伝えるようにしていっています。成功するにはまず失敗を避ける。失敗には体験して良い失敗が多々あります。自己を成長するための挑戦をするも、理想とは異なる結果が待っていたもの。それは糧となる失敗(というより経験値)。そうではなく無知ゆえにしてしまうことを防ぎたいということです。
当院を訪れたお二人はどちらもプレッシャーを口に出していました。これまでは学生というある意味言い訳ができる状況でした。これからはプロとして自分と面識のない患者さんと相対していくことに。果たしてできるのだろうか、という不安です。その感情は至極当然で、新卒の先生が「私は天才だから誰でも治せます!」とか真顔で言っていたら、こちらが不安になるもの。プレッシャーは免許を持った者としての社会からの責任感と自己の成長を願う希望から生じること。良いことだと思いました。
私も十数年前の国家試験が終わり、これから就職するという時期は不安・プレッシャーが強くありました。30歳になる年の3月。自分を変えないといけないと決意して一歩を踏み出すとき。本当にできるのだろうかと不安でしかたありませんでした。実際のところ、現場に出て3日目には、もう辞めたい、自分には務まらない、きつい、つらいとネガティブな感情ばかり。新卒3日なんて雑用と諸々の業務内容を覚えることしかしていない頃。大したこと(実務)などしていないのですが。通勤途中でよく駅のトイレに駆け込んでいました。毎日なんとか1日が終わったと胸をなでおろしていたものでした。ですから現場に出ることのプレッシャーはよく分かります。始まっていないと何が起きるのか予測できないので不安になるわけです。
その日は6時間くらい話をしました。最初はいつもように業界の状況を話。本当に最近大きな事件や出来事が起きているので、それらがどういうことなのかを説明。そして今後どのようになっていくかの私なりの予測。それを踏まえてお相手の近況報告や心理を聞いて。話の流れから按摩の技法へ。母校が異なるため習った内容が異なります。私が教えてもらう立場になりました。私がこれまで学んできた、知っている按摩技術にない概念を体感しました。お世辞抜きで感心しましたし学びになりました。そのような体験が新卒の先生にとって自信に繋がればいいなと思います。この私が按摩を受けて解説してもらうという時間を経てから、話題が盛り上がるというか積極的に相手が話してくれるようになったと感じました。私の話を聞くから自らのことを語る。そのような変化がありました。
新卒で現場に出る直前は不安があるもの。その心境はきっと今だけのものでゴールデンウイークが明ける頃には消えてしまうでしょう。私も前のこと過ぎて思い出すことがなくなっていました。あの時の不安を思い出してまた気持ちを引き締めることができました。また免許を取得してまさにスタートラインに立った先生方の将来が楽しみです。
甲野 功
コメントをお書きください