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~パーソナルトレーニングでの健康被害~

独立行政法人国民生活センターホームページより 
独立行政法人国民生活センターホームページより

 

 

先週の金曜日5月19日に「パーソナルトレーニングで事故 消費者事故調が実態調査へ」というニュースが出ました。

 

NHKニュース パーソナルトレーニングで事故 消費者事故調が実態調査へ 2023年5月19日

 

このニュースによると

スポーツジムなどで1対1で指導を受けるパーソナルトレーニングによって、筋肉を痛めたり腰の骨を折ったりするなどの事故が報告されているとして、消費者庁の安全調査委員会、いわゆる「消費者事故調」が実態を調査し、再発防止策を検討することを明らかにしました。

とあります。

 

消費者庁安全調査委員会が調査をする。この事態がどれくらい深刻なのかは私にはよく分からないのですが、結構重い健康被害が出ているようです。腰骨の骨折は重篤です。自身の仕事柄、健康被害について敏感になっており、この件について調べてみました。すると昨年の時点で国民生活センターからパーソナル筋力トレーニングでの健康被害について警告がなされていました。

 

独立行政法人国民生活センター 「パーソナル筋力トレーニング」でのけがや体調不良に注意! -コロナ禍でより高まる健康志向や運動不足解消の意外な落とし穴!?- 令和4年4月21日

 

つまり1年前から警告が出されており、今年に入って更に消費者庁が動いたということでしょう。独立行政法人(国民生活センター)から省庁レベル(消費者庁)へ。国民生活センターの報告には詳細な文書が提示されていました。

 

国民生活センター 報告書本文

 

こちらの文書を読むと私が想像していた以上に事態が深刻であることが判明しました。内容を紹介しましょう。

 

まず一般的にパーソナルトレーニングというトレーナーと利用者がマンツーマンで指導することであり、この調査ではパーソナル筋力トレーニングと、内容が筋力トレーニングに絞っています。ヨガ、ゴルフ、水泳などの個人レッスンは除外しております。情報収集の窓口として「医師からの事故情報受付窓口」(愛称:ドクターメール箱)とPIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)という消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースを活用しています。

 

・ドクターメール箱に寄せられた事故情報

【事例】

 

パーソナル筋力トレーニングを2021年4月にスタートし、週2、3回、通えるときに1回1時間枠でトレーニングをしていた。最初の2カ月はデッドリフトでバーベルを持ち上げ、次第にウェイトを重くしていったそうだ。2カ月後、パーソナルトレーナーの指導により、最初は30~45kgのバーベルをデッドリフトで持ち上げ、その後、前屈位の状態で行うデッドリフトでバーベルを上げようとしたら、バーベルが持てなくなっていたとのこと。その数日後に行った際は、2kgのバーベルも全く持つことができず、整形外科を受診するように言われ、受診したところ、ヘルニアの疑いがあり、リハビリをすることとなったようだ。しかし、様子がおかしかったため、後日MRIを撮ったところ、腰椎・仙椎の骨折が発覚した。椎骨に一気に負荷がかかり、骨がそれに耐えられなかったようだ。患者には過負荷と考えられるバーベルを前屈位の状態でのデッドリフトにより持ち上げるのは大変危険な行為であり、そういったことを2カ月間も続けていたため、疲労骨折という側面もあったのかもしれない。

8月中旬に別の整形外科を受診したところ、あと1カ月(推定)の治療期間が必要と言われたとのことであった。なお、当該トレーナーは、糖質ばかりの食事や、いきなり肉をたくさん食べるメニューなど、不適切と考えられる食事指導を行っていたとのこと。(事故発生日:2021年6月23日、30歳代・女性)

 

腰椎・仙椎という背骨を構成する骨(椎骨)のうち、下部の骨折です。いきなり骨折に至ったのではなく時間をかけた疲労骨折かもしれないとあります。また食事指導において不適切と考えられる面があったと。女性ですが30歳代ということで比較的若いでしょう。

 

・PIO-NET に寄せられた危害情報

【事例1】

パーソナルトレーナーの指示によるトレーニングで腰にしびれや痛みが生じた個人トレーナーが借りているレンタルジムでパーソナルトレーニングの指導を受けていた。

 

指導中に、うつ伏せになって上体そらしをしながら自分の腰の脇に手を置いて肘を伸ばした状態で、トレーナーに背中の肩甲骨あたりを押された。これを 10回3セット行ったところ腰が大変痛かったが我慢して「痛い」とも言えず、その日は指導を受け続けた。指導後、腰の左側にしびれの症状が出て、痛みがだんだん強くなってきた。1カ月後に整形外科を受診し、医者に腰を痛めた理由を伝えた上で、投薬等で治療を受けていたが良くならず、さらに1カ月後にMRIを撮ったところ、「骨に異常がある」という診断を受けた。(2021年8月受付、50歳代・女性)

 

トレーナーが利用者の体を押しています。また強い痛みを我慢し、痛いことを訴えることができなかったことに注目しました。

 

【事例2】パーソナルトレーニングジムの食事制限で上半身に湿疹が出た

 

インターネットで見つけたパーソナルトレーニングジムと契約した。食事制限が8割、運動が2割のメニューだった。食事は完全に糖質をカットし、毎日食べたものを写真に撮ってトレーナーにメールで送り、栄養管理のアドバイスを受けていた。開始後3週間近くたった頃から上半身に湿疹が出始めて、糖質を少し摂ってみようということになり、食事内容を変えてみたが悪化してしまった。病院での検査の結果、医師から「糖質制限による色素性痒疹だろう」と診断された。1カ月経った現在は赤みもかゆみもなくなったが、茶色くあざのような跡が全体に残っている。(2021年6月受付、20歳代・女性)

 

食事指導により健康被害が生じた事例。糖質制限による色素性痒疹だろうという医師の診断。20歳代女性のため美容面でより気になることが想像できます。

 

【事例3】ジムのパーソナルトレーナーの指導で筋肉痛のようになり治療を2カ月以上継続

 

5年前坐骨神経痛になったのを契機にスポーツジムに通うようになった。昨年2カ月間パーソナルトレーニングを受けた。自分には非常にきついスクワットをさせられ、内腿部分が筋肉痛のようになり、整形外科を受診。レントゲンを撮ったが骨には異常がなく、医師からは「持病の坐骨神経痛が出たのではないか」と診断され、治療を2カ月以上継続しているが、改善がみられない。今でもヒリヒリ痛くて、歩行も自転車も乗れない。自分ではこれは肉離れだと思っている。日常生活もままならず、家族の助けを借りて通院している状況。その後、ジムはやめている。(2021年1月受付、60歳代・女性)

 

日常生活に大きな支障が出た事例です。60歳代女性、坐骨神経痛の既往があります。

 

【事例4】パーソナルトレーニングジムで下半身を鍛えるトレーニングで肋骨を骨折

 

パーソナルトレーニングジムで下半身を鍛えるトレーニングをしていた。トレーナーに足首をつかまれて強く胸のあたりまで引き上げる動作を何回も繰り返していたら胸に強い痛みを感じた。その後も痛みが治まらないので後日、整形外科を受診したら、医師から「トレーニングが原因で肋骨が骨折している」と診断された。(2020年4月受付、30歳代・女性)

 

肋骨骨折という診断が出ており、かつトレーニングが原因とはっきり診断されています。

 

【事例5】パーソナルトレーニングジムでバーベルを持ち上げる動作により腱板損傷

 

パーソナルトレーニングで長椅子に仰向けになりバーベルを上げる動作で、トレーナーが重量のあるバーベルを持ってきた。「持てない」と断ったがトレーナーから「メンタルの問題だから」と言われ、強引に持たされた。胸のほうにバーベルを下ろしたときに右肩からパキンと音がして痛みが走った。トレーナーから「大したことない。湿布を貼れば大丈夫」と言われ帰宅した。右腕の痛みは続いたが、市販の湿布で様子をみた。数日後、痛みの範囲が大きくなり整形外科を受診したところ「右肩腱板損傷。リハビリが必要」と診断された。8カ月たった現在もリハビリ中である。(2019年12月受付、40歳代・女性)

 

リハビリが必要な腱板損傷という健康被害。トレーナーの高圧的な態度が目立ちます。

 

【事例6】専門知識を持たないと思われるトレーナーから指導を受けて腰痛が悪化

 

女性専用のパーソナルジムで、腰痛持ちだったため、腰痛改善のためのプログラムを申し込み、トレーナーにも腰痛があることを最初に伝えていた。ところが3回目の指導の際、腰を痛め立ち上がれなくなった。病院に行ったら、2週間ほど治療期間を要すると言われた。このトレーナーは専門的な知識を得ているわけではないと思われる。(2018年5月受付、20歳代・女性)

 

あまり具体的なことが分からないレポートです。利用者の専門知識を持っていなと思われるという意見。腰痛改善という治療目的での利用という点に注目してしまいます。

 

【事例7】フリーランスのトレーナーの指導で肩の筋肉を傷めた

 

友人に紹介してもらった有名なトレーナーに指導を受けていた。3回目のトレーニングで、サイドレイズという肩の筋肉を鍛える運動をトレーナーに負荷をかけられながら行っているときに肩の筋肉を傷め、炎症が起こってしまった。トレーナーもその筋肉の炎症の原因が自分にあることを認めている。(2018年5月受付、40歳代・女性)

 

トレーナーが負荷をかけたトレーニングでのこと。他者からの紹介、知名度のあるトレーナー。原因が自分にあると認めている。トレーナー側の状態が垣間見える事例です。

 

【事例8】パーソナルトレーナーの指導中、ベンチプレスのプレート落下により肩を痛めた

 

スポーツジムで追加料金によりパーソナルトレーナー契約をした。ベンチプレスで、トレーナーに合計50kgのプレートを付けてもらい持ち上げたところ、プレートが外れて落下した。直接プレートが体に当たったわけではないが、そのせいでバランスを崩し、肩を痛めた。タクシーで病院に行き、治療してもらった。計3回病院に行き、MRI検査も受けている。(2017年10月受付、40歳代・男性)

 

掲載された事例集で唯一の男性利用者。これは過誤に当てはまると感じました。

 

続いてパーソナル筋力トレーニングでけがや体調不良になった人、200名に対してのアンケート調査を紹介します。なお複数回答です。

 

けがの症状

筋・腱の損傷:41人

擦過傷・挫傷・打撲傷・刺傷・切傷:25人

脱臼・捻挫:21人

神経・脊髄の損傷:12人

骨折:5人

上記以外の原因不明の痛み:15人

内臓損傷:1人

 

この調査ではいわゆるスジを傷めたというけがが一番多かったわけですが、脱臼・骨折という骨に関わるけがや神経・脊髄の損傷という神経系への問題がありました。利用者が多いので分母が大きいとはいえ、これほどの健康被害が起きたことに驚きました。

 

報告書には他にも背景、利用者の属性、問題が起きた際のトレーナー側の対応、など調査内容が記載されております。気になる方は目を通していただけたらと思います。

 

さてニュースからパーソナルトレーニングによる健康被害が起きているということを知りました。調査に目を通すと他人事ではないと感じます。対人サービスで、相手の体に影響を与える仕事であるという共通項。詳しくみるとトレーニング指導だけでなく、直接利用者の体に触れる、食事指導をするといったことまでトレーナーが行うことがある。また利用者も腰痛改善を目的とした健康増進から治療目的と動機が私の業界に近いところがあるようだと。こうなったときにトレーナーの質をどう確保するのかという問いがでてきます。鍼灸マッサージの場合は国(厚生労働省)があん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許という免許制度をすることで最低限の知識と技術を確保しています(現実にそうかはさておき、システム上は)。しかし法的規制があるにも関わらす(免許無しに該当する施術をすることを禁止する“業務独占”が法律で規定されている)整体だ、身体に刺さない鍉鍼は大丈夫だ、お灸はセルフケアだから誰もできるだろう、など守られていないことがままあります。トレーナーの場合、国家資格の免許はありませんから言わば“誰でも”できるわけです。何だったら私が治療院でパーソナルトレーニングを初めても法的な規制はありません。

しかし健康被害が生じるとなると話は変わってきます。

 

健康被害が生じるとなるとそれは規制対象になります。だからこそ調査をしているし、より詳細な調査が入るということです。昨年、国民生活センターは行政(消費者庁、厚生労働省、経済産業省、スポーツ庁)への要望を出しています。そして今年消費者庁安全調査委員会が実態調査を行い、健康被害の再発防止策を検討することになりました。私の業界にはパーソナルトレーニングに関わる人間がたくさんいます。今後の動向が気になります。

 

甲野 功

 

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