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~アートメイクは医行為~

医政医発0703第5号 医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて
医政医発0703第5号 医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて

 

 

先日、重要な通達がありました。それはアートメイクに関する医師法の解釈についてです。

福島県保健福祉部より令和5年(2023年)6月28日付けの『5健第3000号』における<医師法第17条の解釈について(照会)>という照会に対して、『医政医発0703第4号』<医師法第17条の解釈について(回答)>で回答し、令和5年(2023年)7月3日付けで厚生労働省医政局医事課は、『医政医発0703第5号』<医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて>という通達を出しました。これにはアートメイクは“医行為該当性が肯定できるものと考えられると示された”とあります。

 

荒川区 厚生労働省等からの通知一覧

医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて(PDF:731KB)

令和5年7月3日 医政医発0703第5号 厚生労働省医政局医事課長 通知

 

医政医発0703第5号

令和5年7月3日

 

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

 

厚生労働省医政局医事課長

(公印省略)

 

医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて

 

今般、令和2年9月16日最高裁判所決定(平成30年(あ)1790号医師法違反被告事件)において、当該決定におけるタトゥー施術行為は医行為でないと判示されたことを踏まえ、厚生労働科学特別研究事業として、従来の医師法(昭和23年法律第201号)第17条に関する学説・判例等の概要を整理し、また、当該決定の内容を検討した上で、今後の同条の運用のあり方について検討を行った。

 

検討においては、当該決定におけるタトゥー施術行為が医行為でないと判示された根拠事情のうち、最も重要かつ本質的な点は、「タトゥーは、歴史的に、長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があることである」と示された上で、「すなわち、タトゥーの担い手は歴史的に医療の外に置かれてきたものであり、そのこと自体が、タトゥーの社会的な位置づけを示すものとして理解されうる」と示された。

 

また、アートメイクについては、医療の一環として医師・看護師等の医療従事者が関与している実態があり、「一定の侵襲性が認められることや、医療従事者による安全性水準の確保がきわめて重要と考えられること」から、医行為該当性が肯定できるものと考えられると示された。

 

今般、別紙1のとおり福島県保健福祉部長から照会があり、これに対し上記も踏まえた上で、別紙2のとおり回答したので、関係方面への周知徹底及び適切な指導方御配慮願いたい。

 

5健第3000号 医師法第17条の解釈について(照会)
5健第3000号 医師法第17条の解釈について(照会)

 

 

別紙1

5健第3000号

令和5年6月28日

 

厚生労働省医政局医事課長 様

 

福島県保健福祉部長

 

医師法第17条の解釈について(照会)

 

このことについて、 医師免許を有しない者が、針先に色素を付けながら皮膚の表面に墨等の色素を入れて、

(1)眉毛を描く行為

(2)アイラインを描く行為

を業として行った場合、医師法(昭和23年法律第201号)第17条違反と解してよろしいか伺います。

 

 

医政医発0703第4号 医師法第17条の解釈について(回答)
医政医発0703第4号 医師法第17条の解釈について(回答)

 

 

別紙2

医政医発0703第4号

令和5年7月3日

 

福島県保健福祉部長 殿

 

厚生労働省医政局医事課長

(公印省略)

 

医師法第17条の解釈について(回答)

 

令和5年6月28日付け 5健第3000号をもって照会のあった標記については、下記のとおり回答する。

 

 

医師法(昭和23年法律第201号)第17条に規定する「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。

御照会の行為は、医行為に該当し、医師免許を有さない者がこれを業として行うのであれば、医師法第17条に違反するものと思料する。

なお、今般、令和2年9月16日最高裁判所決定(平成30年(あ)1790号医師法違反被告事件)において、当該決定におけるタトゥー施術行為は医行為でないと判示されたが、御照会の行為は、医療の一環として医師・看護師等の医療従事者が関与している実態があることから、医行為該当性が否定されるものではないと考えられる。

 

以上

 

まずアートメイクとは何でしょうか。英語ではpermanent makeupであり直訳すると“永続の化粧”。アートメイクは皮膚に針で色素を注入し眉やアイライン、唇などを描くこと。一度やってしまえば永久に残るわけです。

※余談ですが私が中学生の時、保健室の教諭は眉毛を剃っていて入れ墨の眉毛でした。中学生当時の私には見慣れぬ光景でした。これがアートメイクに初めて触れた出来事でした。

つまりアートメイクは人の皮膚に色を入れる施術です。それは入れ墨(タトゥー)と変わらないはずです。今回の通達ではアートメイクは医行為に該当するという判断を厚生労働省はしたということです。これがどういう意味なのか順を追って説明します。

 

まず医師法という医師の行う医療行為について規定した法律があります。その第17条は「医業の禁止」という内容で、医師でない者が医行為を業として行うこと(医業)を禁止しています。医師とは医師免許を取得した者。その医師以外の者(非医師)が医行為を業として行ってはならない(業とは、反復継続の意思をもって行うこと、と解釈されます)。そのように医師法第17条では定めているのです。当たり前と言えば当たり前ですよね。素人が手術をしたり薬を投与したりしたら大変です。

この医行為にアートメイクはあたるという判断です。通達の文言では、正確には、『医行為該当性が肯定できるものと考えられると示された』としています。顔に針を刺して色素を注入するのです。感染症を含めて危険が伴う行為ですから医師が行うことが妥当でしょう。

 

ところが。

 

令和2年(2021年)9月16日の最高裁判所決定(平成30年(あ)1790号医師法違反被告事件)でタトゥー施術行為は医行為でないと判示されたのです。通称「タトゥー裁判」と言われるこの裁判で、最高裁はタトゥーは医行為ではないとしたのです。医行為と何かの説明では<医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為>としています。タトゥー(入れ墨)をするのは人体に危害を及ぼすおそれのある行為であるのは明白だと思うのですが、最高裁は医行為ではないと。

 

なぜそのような判決に至ったのかというと、今回の通達にもありますが『タトゥーは、歴史的に、長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があることである』と示された上で、『すなわち、タトゥーの担い手は歴史的に医療の外に置かれてきたものであり、そのこと自体が、タトゥーの社会的な位置づけを示すものとして理解されうる』としたことなのです。入れ墨というと江戸時代は犯罪を犯した者が腕や体に刑として入れられることでした。一生、犯罪者の刻印を与えられる。あるいは任侠の世界で一般社会との決別を示す、覚悟をみせる、といった意味合いで入れ墨を入れてきました。そのため入れ墨は日本の文化においてネガティブな意味合いが強く、今でも公共プールや銭湯では入れ墨、タトゥーを入れている人は入場拒否をしているとこが多いです。これが海外でのタトゥーになると宗教的な意味合いがある場合もあり、一概に悪いものとも言えません。和彫りの入れ墨と海外文化でのタトゥーはまた意味合いが変わります。

このようにタトゥー、入れ墨は文化的側面を考慮した結果、医行為には当たらないと判断されました。彫り師になるためにわざわざ医大を卒業し医師免許を取るのであれば、古くから存在する入れ墨・タトゥー文化は衰退する。だからタトゥーは医行為ではないという。

 

医行為にあたるか否かが問題なのは、医行為にあたるとすると(医師免許を持たない)彫り師が行うタトゥー、入れ墨を入れる行為は医師法第17条違反になるわけです。なおタトゥー裁判は医師法違反で彫り師を逮捕、起訴したことが発端です。

 

このタトゥー裁判判決を受けての、アートメイクは医行為に該当するという厚生労働省の判断。どちらも皮膚に色をつけて装飾する行為なのに。タトゥー、入れ墨は医行為ではなくて、アートメイクは医行為である。一見、矛盾が生じます。そのことについて通達では『御照会の行為(アートメイク)は、医療の一環として医師・看護師等の医療従事者が関与している実態があることから、医行為該当性が否定されるものではないと考えられる。』とあります。つまりアートメイクという行為は伝統文化ではなく、従来から医療の一環として医療従事者が行ってきた実績があるので医行為に該当するであろう。そのように読み取れます。

 

タトゥー裁判でも言われたことですが、厚生労働省は元々タトゥーを入れることは医行為になるという見解を示していました。それは健康被害のおそれがあるからです。ところが最高裁の判決は医行為ではない(彫り師は医師免許が無くてもタトゥーを入れる行為をしてもよい)との判決。この判決を受けての、アートメイクは医療従事者が行ってきたことだからという点をもって医行為である(否定できない)としました。司法と厚生労働省で意見が異なるように感じますが、タトゥー裁判での大阪高裁では判決文で入れ墨(タトゥー)とアートメイクは別物だとしています。

 

平成29年(う)第1117号 医師法違反被告事件 平成30年11月14日 大阪高等裁判所第5刑事部判決

 

アートメイクの概念は、必ずしも一様ではないが、美容目的やあざ・しみ・やけど等を目立ちづらくする目的で、色素を付着させた針で眉、アイライン、唇に色素を注入する施術が主要なものであり、その多くの事例は、上記の美容整形の概念に包摂し得るものと考えられ、アートメイクは、美容整形の範疇としての医行為という判断が可能であるというべきである。後にみるように医療関連性が全く認められない入れ墨(タトゥー)の施術とアートメイクを同一に論じることはできないというべきである。

 

改めてアートメイクは医行為であり、医師の指示なしに行えば医師法違反で逮捕する、ということを暗に示していると思われる通達です。タトゥーとは別だと。

このことは重要で、これまで美容、エステティックの分野は医療器具を用いた施術をしても構わない、という風潮があったように感じます。それをきちんと取り締まる動きが出てきたと思われます。

先日も脱毛サロンでの脱毛施術における火傷で、20代女性のアルバイトとサロンオーナーが医師法違反疑いで書類送検されました。本来、医師の知識が必要な医療器機を用いた施術で健康被害が起きるおそれがあるものは医行為にあたる。そのため医師法(第17条)違反疑いとなったわけです。

 

美容鍼という美容に関する鍼施術が一般的となった今、今回の通達が持つ意味は大きいです。タトゥーが医師免許無しに彫れるのだから美容鍼だってはり師免許無くてもやっても構わない、といった考えに繋がりかねないと懸念していたからです。

 

タトゥーは医行為ではないがアートメイクは医行為である。

美容において、免許が必要な施術を無免許者が行ってはいけない。

 

そのように周知されていくことを、術者はもちろん消費者も含めて、願うばかりです。

 

甲野 功

 

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