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先日最終回を迎えた「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」。以下、あはき柔整等広告検討会と記載します。前回振り返った通り、この第11回のあはき柔整等広告検討会のポイントのは一度決定したはずの「整骨院」名称使用禁止が覆って、広告ガイドラインに掲載しないという結論がでたことだと考えています。
第11回「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」議事録
これまでのあはき柔整等広告検討会に議事録を読み、2度会場で会議を傍聴した私にとってはいったいどういうことだという疑問が残りました。この第11回も会場で会議を傍聴していました。そこで気になった発言がありました。
柳田医事専門官の発言です。柔道整復師が開設する施術所の名称に関して、法的には「整骨院」を認めておらず「接骨院」にすることが正しいとされてきました。実際には大多数で「整骨院」という屋号を採用している。今回の広告ガイドラインを作成するにあたって正式に新規に開設する施術所の名称に「整骨院」を禁止し、既存の整骨院も移転などする場合は屋号の変更を求めるという内容を記載することが前回までに決まっていました。それを今回、徳山健司(公益社団法人日本柔道整復師会理事)構成員の方から再審議してほしいという意見が出て話し合うということに。意見交換が始まる直前のところで柳田医事専門官の言葉です。前半を省略しています。
『加えて1点御報告事項がございまして、先の通常国会期間中における参議院内閣委員会の質疑におきまして、「整骨院」という名称が国民に不利益を与えているために使用不可とするのであれば、そのエビデンスを検討会として出すべきではないか、という御発言がございました。政府側からは、この点については結論に至っておりませんので、構成員の皆様の御意見を基に、引き続き検討を進めていく旨を答弁しているところでございます。本件につきまして、参議院の内閣委員会より、国会における発言ということで、事務局より構成員の皆様に紹介してほしいという御連絡をいただいておりますので、本日御紹介させていただきました。私からは以上でございます。』
国会の参議院での質疑でこの件について質問があったという内容でした。更に事務局より紹介してほしいという発言。会場で聴いていて圧力をかけているのかと私は感じました。そうでなければなぜ一度決議した内容を蒸し返すのかが分かりませんでした。国会で質問が出たからやり直せというように感じたのです。それではこの『通常国会期間中における参議院内閣委員会の質疑』とはどのようなものだったのでしょう。みてみましょう。
今年令和6年6月18日に大島九州男参議院議員の名前で尾辻秀久参議院議長あてに出された第213回通常国会内で質問第188号質問主意書として出されたものです。3つの内容を質問しておりますが、最初が該当するあはき柔整等広告検討会に関するものです。抜粋します。
『
一 厚生労働省のあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(以下「検討会」という。)等において、施術所の名称に「整骨院」を用いることの制限について議論が行われており、令和六年五月二十日に開催された第十回検討会において、これまでの議論で「新規の「整骨院」を不可とすること」、「既存の「整骨院」は施術所の移転や看板の掛け替え等を行わない限り当面の間猶予すること」の方向性に異論が出なかったとされた。しかし、柔道整復業界は、これまで「整骨院」での名称の届出が認められてきたこと、施術所の半数近くが名称に「整骨院」を用いていること、施術所が名称に「整骨院」を用いていることによって国民が大きな不利益を被るような問題は生じていないことなどを挙げ、再度議論することを求めている。また、国家資格取得者である柔道整復師にのみ制限を課し、無資格者が自由に「整骨」の名称を使うことになれば、国民の健康被害へと至る重大な政策ミスとなる危険性がある。政府においては、このように恣意的な議論を展開する検討会によらない公正公平な国会の場で、法改正も含めた制度整備の必要性について国民の声を聞くべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
』
質問内容、というより意見となっています。5月20に行われた第10回あはき柔整等広告検討会で『「新規の「整骨院」を不可とすること」、「既存の「整骨院」は施術所の移転や看板の掛け替え等を行わない限り当面の間猶予すること」の方向性に異論が出なかったとされた。』としています。実際には第10回の会議中に既に日本柔道整復師会から再審議の訴えを出しております。
第10回「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」議事録
新規の施術所に「整骨院」名称を不可とするとしたのは昨年2023年2月13日に行われた第9回のことです。
それはさておき、大島九州男議員は『国家資格取得者である柔道整復師にのみ制限を課し、無資格者が自由に「整骨」の名称を使うことになれば、国民の健康被害へと至る重大な政策ミスとなる危険性がある。』と柔道整復師だけが制限が課せられ、無資格者(※ここでいう無資格者とは柔道整復師免許を持たない者と思われるが)が「整骨院」の名称を使うことの懸念を意見しています。これもあはき柔整等広告検討会議事録を読んでいけば分かりますが、いわゆる無資格者に対する制限をかけることも十分に考えられている会議内容となっております。名称に“等”が入っているようにあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師という開業権を法的に認められた国家資格以外のものも考慮しているのです。
また無資格者が「整骨院」の名前を使いだしたら危険だという意見ですが、それこそエビデンスはあるのだろうと私は思います。例えば理学療法士は開業して整体院ではなく「整骨院」を名乗るメリットがあるでしょうか。鍼灸師が鍼灸院ではなく「整骨院」と名乗ることでより患者が来るのでしょうか。私は柔道整復師であり、他の資格を持つのでそう感じますが、わざわざ「整骨院」を屋号に入れるメリットがあるのか、そしてそうなったときに『国民の健康被害へと至る重大な政策ミスとなる危険性』があるのか疑問です。そして『政府においては、このように恣意的な議論を展開する検討会によらない公正公平な国会の場で、法改正も含めた制度整備の必要性について国民の声を聞くべきと考えるが、政府の見解を示されたい。』と続いています。あはき柔整等広告検討会を『恣意的な議論を展開する』としています。ここが最も理解しがた内容でした。国や民間、地方自治体らの有識者によって構成される会議。“恣意的な議論”を展開する理由がよく見当たりません。「整骨院」名称不可という判断に至った第9回の構成員の一覧です。
(五十音順)
石川英樹(公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会副会長)
磯部哲(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)
加護剛(奈良県橿原市財務部部長)
釜萢敏(公益社団法人日本医師会常任理事)
木川和広(アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士)
坂本歩(公益社団法人東洋療法学校協会理事)
竹下義樹(社会福祉法人日本視覚障害者団体連合会長)
豊嶋良一(公益社団法人日本柔道整復師会理事)
福島統(東京慈恵会医科大学特命教授)
前田和彦(九州保健福祉大学教授)
南治成(公益社団法人日本鍼灸師会副会長)
三宅泰介(健康保険組合連合会政策部長)
山口育子(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML)
医師会や大学教授、弁護士ら。柔道整復師業界に不利になるように恣意的に議論する必要があるのかと思います。何より日本柔道整復師会理事が参加しており、「異議なし」の意思表示があったと議事録にあります。
第9回「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」議事録
『
そして整骨院から接骨院に、順次機会を見て替えていただくということで、まとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の意思表示あり)
』
ずっと検討会の内容を追っていれば分かりますが第9回で突然議論が始まってその場で決まったわけではなく、その前の回から議題に上がっていました。なお第8回まで日本柔道整復師会からの構成員だった人物が柔道整復師国家試験漏洩事件により逮捕起訴され有罪判決を受け、第9回ではメンバーが豊嶋良一日本柔道整復師会理事に変更。更に第10回では日本柔道整復師会からの構成員が変更なっております。大島九州男議員はこのあはき柔整等広告検討会ではなく『公正公平な国会の場で、法改正も含めた制度整備の必要性について国民の声を聞くべきと考える』としており、この会議は公正公平ではないと判断しているように見受けられます。そもそも行政の場である国会で柔道整復師の現場や法律のことが分かる議員がどれだけいるのでしょうか。結局、有識者を呼んで意見を聞いて判断することになると考えられます。国会議員誰もが熱心に取り扱うような消費税や年金といったメジャーなものではないですし。国会ならば公正公平なのかというと、柔道整復師の立場からすると、むしろ情報の差が生まれてそれこそ“恣意的な会議”になるように私は思います。
この質問に対する答弁書が6月28日、内閣参質213第188号として内閣総理大臣岸田文雄の名前で尾辻秀久参議院議長あてに出されました。
参議院議員大島九州男君提出柔道整復業の施術所の名称等に関する質問に対する答弁書
『
一について
お尋ねの趣旨が明らかではないが、いずれにせよ、厚生労働省医政局長が参集を求めて開催している「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」において、当該広告の在り方について、柔道整復師の当事者団体や患者団体の代表、学識経験者を含む様々な構成員が、それぞれの立場から、その経験や知見等を踏まえ、意見をし、議論が行われているところであり、「恣意的な議論を展開する検討会」との御指摘は当たらないものと考えている。政府としては、引き続き、当該広告に関する検討会において構成員の意見を伺いながら、当該広告の在り方についての検討を進めてまいりたい。
』
このように『「恣意的な議論を展開する検討会」との御指摘は当たらないものと考えている』と否定した内容の回答をしております。わざわざ「」付きで表現を抜き出して。『当該広告の在り方について、柔道整復師の当事者団体や患者団体の代表、学識経験者を含む様々な構成員が、それぞれの立場から、その経験や知見等を踏まえ、意見をし、議論が行われている』としています。当たり前ですが偏ったメンバーで話し合っているわけではないことを指摘しています。最初に柔道整復師の当事者団体を挙げて。『構成員の意見を伺いながら、当該広告の在り方についての検討を進めてまいりたい。』とあはき柔整等広告検討会の意見を尊重する姿勢を見せています。
質問主意書の一つ目に関しては、大島九州男議員の意見を真っ向から否定した形の回答ですが、あはき柔整等広告検討会には影響を与えたように私には見えました。今後は正式に発表されるあはき・柔整広告ガイドラインの内容はどのようなものになるのでしょう。
甲野 功
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