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先月、子ども達と観に行った映画『名探偵コナン』。これまで3回映画館でコナンの映画を観ましたが一番面白かったです。元々『名探偵コナン』は通ってきませんでした。マンガが連載した当時、少年サンデーは読んでおらず。アニメが放送する頃には年齢が上がりテレビ放送を見る習慣が無くなっていました。子ども達が映画を観たいというので連れて行く関係で映画鑑賞してきたということ。前作も大ヒットして今作も前評判が高かった本作。噂通りというかそれ以上の内容でした、個人的に。興行収入も凄くて100億円突破は間違いないと言われています。映画を観てから今作の映画『名探偵コナン』がどこまでいくのか興味があります。今でも記憶に新しい2020年の映画『鬼滅の刃 無限列車編』。コロナ禍で経済活動が止まり暗かったあのとき。興行収入400億越えという異例の大ヒット。あの瞬間は間違いなく全世界で一番観られていた映画作品でした。希望が見えなかった社会に明るい話題となりました。本作『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』にも期待がもてます。
それを裏付けるようなニュースがありました。
コナンが天文台の救世主 劇場版の聖地巡礼で長野「野辺山宇宙電波観測所」来場3・5倍
まず本作の映画は長野県が舞台です。実在する施設や土地を精密に描いています。近年のアニメはこのようなことが多く、架空の都市を描くこともありますが実在の場所にし、かつ非常に正確に描写します。そうすることでアニメファンが作品縁の土地や施設に訪れる、いわゆる“聖地巡礼”ということを行います。聖地巡礼とは元々宗教の言葉ですが、アニメファンもその作品の信者として作中に登場する場所を聖地と崇め、訪れるという行動が相通じるものがあります。このアニメの聖地巡礼は20年くらい前から活発化し、地方自治体の救世主になることがままあります。アニメで村おこし。アニメによって地方再生。アニメに取り上げられて莫大な経済効果。このような現象が多発しております。更に架空の描写でも実在の風景と似ていればファンが勝手に聖地と認定して訪れるというパターンもできました。直接ここだと制作側が公言しなくてもファンの中で決めてしまうという。
更にこの聖地巡礼のムーブメントは海外にも波及しています。配信技術が発達し映画でも動画でもタイムラグが無く海外でも視聴できるようになってきました。一昔前は映画館で無断でビデオカメラで撮影し、それに字幕を付けて販売する海賊版が横行していました。今は高品質の公式作品をすぐに見ることができ海賊版は無くなってきています。今や世界に広がる日本のアニメは強力なコンテンツとなり世界からファンを集めています。オーバーツーリズムで引き合いに出される鎌倉の踏切。中国人が殺到して道路に出て撮影して地元住民が迷惑しているというもの。これもアニメ『スラムダンク』の聖地としてファンが殺到しているわけです。新型コロナが明け、円安の影響、さらに大阪万博もあり、アニメの聖地巡礼で日本を訪れる外国人観光客は増えていることでしょう。
ニュースの内容に戻りますが、映画『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の作中に登場する長野県南牧村にある国立天文台「野辺山宇宙電波観測所」にコナンファンが訪れているというのです。来場者は前年の同時期と比べて3.5倍。平日だけでみるとなんと10倍に増加しているといいます。京都、北海道、東京といった観光エリアに比べるとメジャーではない長野県。その長野県でも善行寺や松本城といった定番のところではない国立天文台に人が集まる。これこそコナンの力が無ければこうはならないでしょう。平日で10倍ということは仕事を休んできているか、海外観光客が考えられます。海外旅行なら長期になりやすく曜日の影響が薄くなるわけです。
そして単に普段注目されていないところがコナン映画で人が殺到しているという話に終わらないのが注目点です。この「野辺山宇宙電波観測所」。近年、財政難により閉鎖機器がささやかれているというのです。野辺山宇宙観測所は昭和57年(1982年)に完成し世界最大級の直径45m電波望遠鏡を有します。平成6年(1994年)には世界で初めてブラックホールを発見しました。科学の発展に寄与する重要な施設でありますが、国からの運営費交付金の削減などで財政難に。施設も完成から40年経ち老朽化しています。お金がない中、何とか現状維持をしている状況。それがコナン映画の影響で観測所所長が『「劇的な出来事。信じられないくらい多くの人が来てくれている」と大喜びする。』ほどの来場者。映画公開と連動する形で4月18日から始めた基金に100件以上の申し込みがあったという。今後はコナン映画と野辺山宇宙電波観測所のコラボ商品の販売も予定されていて、大きな収入が見込めそうなのです。施設維持どころか開発費にまわせるかもしれないという。
この話に私は非常に感動し、また期待しています。というのも高校生当時の私は宇宙物理学に興味があり、大学で勉強したいと願っていました。当時近隣で宇宙物理学をしているのが上智大学理工学部物理科でした。あえなく受験に落ちてしまいその希望は叶いませんでしたが。それでも東京理科大学理学部応用物理学科に進学し物理学を勉強した身。研究施設が財政難で閉鎖してしまうのは残念です。国の予算が出ないなか、民間の、それもアニメ映画が、救世主となるというのは痛快です。科学の研究は結果(成果)が出るのに何十年とかかるものです。目先の利益が出ないからと基礎研究の費用を削減していくと将来が尻すぼみします。今、日本でノーベル賞を受賞する学者が生まれているのも1980年代に時の中曾根康弘首相が研究に予算を投入したからだと言われています。コナン映画によって何十年先の科学発展に繋がるのではないかと期待しています。観測所所長も本作を機会に映画を観た子ども達が宇宙や天文学に興味を持ち、観測所を訪れて研究者となり、将来ノーベル賞を受賞してくれるかもしれないと、期待を語っているといいます。
私はコンテンツが地域を再建させることを目の当たりにしています。地元といってよい東京都新宿区神楽坂。今では都内有数の観光エリアとして賑わう神楽坂も寂れた時期がありました。かつての花街で田中角栄も通ったところは時代と共に芸者文化が廃れていき、過去の栄光となっていました。ゴミが落ち、活気がなかったのです。それを変えたのが嵐の二宮和也さんが主演したドラマ『拝啓、父上様』。このドラマは神楽坂を舞台に脚本家倉本聰氏が描きました。この作品をきっかけに若い女性が聖地巡礼として神楽坂に殺到して街が再生したのです。実写ドラマでありますがコンテンツの力が地域を変えることを実感しています。今の時代はアニメの方がより影響力があります。
名探偵コナンは社会に影響を及ぼすコンテンツまで成長しつつあると感じています。前作の『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』でも北海道に与えた経済効果は相当なものでした。それは毎年発表される都道府県魅力度ランキングに反映されたといいます。来年の同ランキングで長野県の順位を押し上げる効果があるのか今から注目しています。
何十年後かに、コナンのおかげで日本の天文学が救われた、と言われるかもしれない。そう思ったニュースでした。
甲野 功
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