開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
先月『鍼灸マッサージつゆき按腹堂』の露木美那先生を当院に招いてマッサージの練習会をしました。露木先生は神奈川衛生学園専門学校を卒業しています。こちらの学校を創業したのが後藤家になります。先に姉妹校にあたる東京衛生専門学校が創設され、その後に神奈川衛生専門学校ができました。東京衛生専門学校は看護とマッサージの学校から始まり、その流れを汲んで現在も神奈川衛生学園専門学校は看護学科(看護師)と東洋医療総合学科(按摩、はり師、きゅう師)が併設されています。その神奈川衛生学園専門学校を卒業した露木先生はあん摩マッサージ指圧師及び鍼灸師でありますがマッサージに力を入れております。露木先生は「後藤流按腹術」の4代目であります。また「結合織マッサージ」を習得しています。「後藤流按腹術」は後藤家で誕生した按腹術であり、按腹とは按摩の技術の一つでお腹への手技となります。「結合織マッサージ」は1928年にドイツの理学療法士エリザベート・ディッケ女史によって誕生した技術です。
「後藤流按腹術」と「結合織マッサージ」は私にとって未知の技術でした。そしてこの2つの技術には後藤治久先生が大いに関係します。後藤治久氏とは神奈川衛生学園専門学校元学校長で昭和53年(1978年)~昭和55年(1980年)まで旧西ドイツ(現在のドイツ)で「結合織マッサージ」の研修と実習を行いました。日本の「結合織マッサージ」の第一人者と言えます。そして3代目「後藤流按腹術」の継承者。名字から分かるように衛生学園専門学校の創業家である後藤家です。この後藤治久先生から技術を継承しているのが露木先生。呉竹学園東京呉竹医療専門学校を卒業した私にはこれまで接することが無かった技術でしたが、露木先生と知り合ったことで体験することができました。そして練習会(技術交流会)をすることで傍からその様子を見学することができました。
珍しいものを体験できました、良かったね。ではプロとして終わらせられません。私もあん摩マッサージ指圧師としのこだわりが強いです。そして今年の当院の(自分の)テーマが~按・マ・指を探求する~であり、様々なあん摩マッサージ指圧技術を研究していくことを決めています。「結合織マッサージ」を更に深堀りしようと思い立ち、知り合いの学生さんを招いて練習をすることにしました。「後藤流按腹術」はある程度理解できます。従来の按腹とかなり似ています。ところが「結合織マッサージ」はこれまでの私が培ってきた知識、技術にないもの。やってみないとスタート地点にも立てません。
事前に20年前に私が専門学校入学時に購入した『あん摩マッサージ指圧理論』の教科書を読み直してみました。すると「結合織マッサージ」が数ページに渡って掲載されていたことに気付きました。定期試験に出るのでその名称と特徴は学生と宇治に覚えたのですが、授業で実技をすることもなく、卒業後誰一人実践している人を見たことが無く、完全に忘れていました。教科書を読み直してみると記憶していた以上に詳しく解説がされていたのでした。皮下組織の反射帯を利用して行う。皮膚を摘まみあげてその状態から検査する。また中指と薬指で皮膚を擦り皺の状態をみる。皮膚牽引法やハンゼン氏皮膚波法です。手技としては擦過軽擦(平たい滑擦)、カギ型軽擦(立てた滑擦)があります。更にディッケ法、他と複数のやり方があります。またネットで調べると「結合織マッサージ」はドイツ語でBindegewebsmassageといい「BGM」と表記することもあります。これらの知識と露木先生の技術を思い出し照らし合わせました。
私が考える「結合織マッサージ」の特徴は、皮膚に直接触れるのにオイルやパウダーといった滑剤を使用しないこと。素肌に触れて指を滑らせると、摩擦が生じて術者の指も患者も互いに痛くなるもの。滑らないのです。だから滑剤を皮膚に塗布して摩擦抵抗を減らすわけです。それがマッサージの基本だと思っていました。ところが「結合織マッサージ」では使いません。次に検査法でも施術でも用いる部位が手の中指と薬指であること。中指はまだしも薬指はよく動かせないので、他のあん摩マッサージ指圧では積極的に用いないのです。薬指主体の手技など知りません。3つ目の特徴として「結合織マッサージ」には引く動作があります。ヨーロッパ発祥のマッサージは押しだす動作ばかり。文化的に引くことより押す方がやりやすいはず。
これらの慣れない、というよりやったことのない、動きが「結合織マッサージ」にはあります。これは練習しないといけません。学生さんの体を借り、前回の練習会に参加して見学していた方の助言を受けながら手を動かしてみました。とにかく慣れないので試行錯誤。正直なところ、何が正解なのかその場にいる者が誰も分からないのであっているのかも不明。それでも挑戦してやってみました。ひとまず皮膚の変化があったことは確認できました。また皮膚を摘まむ、皮膚に皺を寄せるという手の使い方が実感できました。
また作用機序については教科書の解説だけは分かりません。やりました、効果が出ました、良かったね。ではいけません。刺激がどこに行き、体内でどのような作用が起きているのか。理論が伴わなければいけません。安全性にも関わります。
今回は自主練習第一歩という感じ。折を見て練習を重ね、解剖学、生理学の勉強をしていきます。また露木先生のところで手技を受けてみます。「結合織マッサージ」の研究は始まったばかりです。
甲野 功
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