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6月17日に『アジサイ塾~あはき・柔整広告ガイドラインの内容とその意義~』というセミナーを開催しました。
今年2月に発表されて正式施行された「あはき・柔整広告ガイドライン」。あはきとはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の頭文字。柔整とは柔道整復師の略称。これらの資格とその業務に関することの広告について決めたガイドラインです。このあはき・柔整広告ガイドラインは内容が従来までの常識を覆す内容が含まれており(法的に見ればそこまで逸脱したものではないかもしれませんが)、少なからず業界に衝撃を与えました。このガイドラインについて、当院でずっと勉強に来ている学生さんに向けて解説をしました。
事の発端はよく来ている学生さんに広告ガイドラインが今後国家試験に出題されそうだからきちんと知りたいという声でした。学生さんにとって国家試験合格は絶対に達成しないといけないハードルで最重要課題です。来年行われる国家試験には採用されないと思われますがその次以降は出題範囲になる可能性があるかもしれません。関係法規の教科書が改訂されるかもしれないという話もあるようです。ただ私の立場からするとガイドラインがなぜ生まれたのか。それまでの経緯といういか社会的問題があったからこそ厚生労働省は作成した。その意図は何か。またこのガイドラインが登場することでどうなっていくのかを考えていく。それが大事だと思います。国家試験は重要ですが新卒受験者の過半数が合格します。合格してからの方がずっと長くなります。そのためあはき・柔整広告ガイドラインを理解するにあたり、点(すなわち、ガイドラインそのものだけをみる)ではなく線(時系列を含めて前後を踏まえて)で理解して考えて欲しいと考えていました。今回参加した学生さんは過去に業界の歴史と起きてきた事件・裁判に加えて現在進行形の諸問題を教えています。その延長線上に今回のガイドライン発表があると伝え、内容の紹介とそれぞれの項目に対する解説を加えました。そのためかなり導入が長く話が色々なところに飛びます。事前学習をしている前提で講義内容を作成しました。
まずは過去に話したこの業界に関することの復習をしました。
鍼灸マッサージ専門学校ではあはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関わる法律)をしっかりと学びます。参加した学生さんにとっては学校の授業でこれから習うことなので復習であり予習となります。業務独占、欠格事由、広告制限、免許取消、開設届、医業類似行為の禁止、業務停止命令、懲罰、両罰規定など法律特有の文言を説明した。あはき法だけでなく法律関連も知らないといけません。医師法と医療法の最低限必要な事項を説明しました。そして過去に起きた重要な裁判の紹介。例えば昭和35年判決(HS式無熱高周波療法事件)やきゅう師の広告規制最高裁など。ガイドライン以前に法律、そして憲法があるわけですからそれらを説明します。特に知っておきたいのが景品表示法違反。景品表示法とは誇大広告で消費者を騙してはいけませんよというもの。違反広告の種類として優良誤認表示、優良誤認表示、ステルスマーケティングがあり、罰則として措置命令、課徴金納付命令があります。過去に景品表示法違反で処罰された事例を紹介しました。法律はとても重要な項目です。
総務省の消費者事故調査について話しました。
これは2020年11月に『消費者事故対策に関する行政評価・監視 -医業類似行為等による事故の対策を中心として-<結果に基づく勧告>』という非常に長いタイトルの文書を総務省が公開します。2年半にわたり消費者の事故を調査し、医業類似行為とエステティックによる健康被害が多いことを確認。その原因も追究しました。この調査結果はなかなか衝撃的でした。医業類似行為とエステティック(美容整形)分野はきちんと取締りができていない。警察に通報するシステムができていない、保健所は指導権限がないと認識して取締りをしてこなかったと。この結果を踏まえて総務省は消費者庁と厚生労働省に勧告を出すのです。消費者庁は警察庁へ協力依頼し、警察庁は各地警察組織に通達を出します。その成果のか美容関連の健康被害について摘発が増えます。医師法違反疑いでの逮捕や書類送検が報道されています。一方、総務省から勧告を受けた厚生労働省は関係各所の衛生担当に通達をするも大して行動に移しませんでした。それは2021年12月に総務省が行った1回目のフォローアップで消費者庁と厚生労働省の勧告後の実態調査をしたことで判明します。そして2023年の2回目のフォローアップでは保健所の意識が変わってきて指導実績が増えていることが報告されています。この事実からも総務省から健康被害に対する是正勧告を受けていた厚生労働省および保健所は指導するための活動を進めているのです。
あはき柔整等広告検討会とは。
総務省の健康被害調査が行われている2018年。5月から「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」が始まりました。既に施行されていた医療広告ガイドラインを踏まえてあはき柔整等の業界においても広告ガイドライン制定が必要であると有識者会議が始まっていました。構成員には業界団体関係者はもちろんのこと医師会、学校協会、保険を取り扱う健康保険組合、医大教授、医大法律教授、弁護士、医療人権団体といった外部の人間も参加しております。この会議から本題のあはき・柔整広告ガイドライン作成が作られていきます。ここで重要なものが広告検討会はタイトルが“あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告”と等が付いておりあはき柔整だけの広告について話し合っていたわけではないのです。私は全11回のうち2回現場で公聴しています。また議事録も全て目を通しました。この広告検討会によって完成したあはき・柔整広告ガイドラインの内容が決められ方針が固まったのです。6年前から動き出し、途中新型コロナにより中断を挟み、パブリック・コメント募集を経て、当初の予定よりも6年遅れた2025年2月18日に施行されたのがこのガイドラインであること。唐突にできたものではなく、有識者が11回の会議をした上での内容であることを参加者に説明しました。
あはき・柔整広告ガイドラインの内容を解説します。
ガイドラインは非常に長い文章でつづられています。必ず全文を読むように伝えた上で重要と思われる項目をピックアップして紹介しました。そして各項目について私の解説を加えます。AIに要約させて内容を理解したと済ませている意見が見受けられるのですが、これまでの広告検討会の議事録と総務省の勧告、更にその前から出ている健康被害や職域に関する裁判の結果を踏まえて、ガイドラインを読み取ってほしいと話します。特に文言だけ切り取ると、広告不可のものとして「レディース鍼灸」、「東洋医学療法」、「伝統鍼灸」、「個別の流派(施術方法)」、「施術者の経歴」といった文言があり、なぜこれがダメなの?と焦るものもあります。そこにはそもそも広告の定義は何かという項目があり、それを理解しておかないといけません。そして具体的に強い規制対象となるのは施術所名称、すなわち屋号であることがみえてきます。既に開設(開業)しているところで屋号がガイドライン違反とされている場合はどうするのか。そのような場合についても説明をしました。
更にはこのガイドラインは誰のためのものなのか。果たして我々術者を苦しめる存在なのか。そのような疑問を呈し答えを示しました。言葉だけをみるとなぜ規制されるのか、と文句を言いたくなる内容が掲載されています。それもこれまでの経緯を踏まえるとまた違った見方ができます。相談・指導に関する項目や無資格者の広告についてという所を読むと印象が変わってくるのです。
あはき・柔整広告ガイドラインが施行されてから。
2月18日に正式施行されてから。まだ4ヵ月ですがこの間に幾つか大小動きがありました。Eテレ(NHK)の番組「きょうの健康」でこのガイドラインが特集されました。あじさい鍼灸マッサージ治療院がある東京都新宿区からは広告ガイドラインが完成し守るようにとの通知ハガキが届きました。それに先立ち新宿では施術所の情報が新宿区ホームページで公開されています。ネットを見渡すとガイドライン施行による影響が出ている情報がちらほら見受けられるのです。そういったガイドライン完成その後についても説明しました。そして昨年法改正された景品表示法に直罰規定が導入されたことを踏まえると、広告ガイドラインは前段階で注意喚起を促してくれる存在だと考えられると私見を述べました。
長時間に及びましたが過去の講義内容を踏まえて点と点が繋がり線となる内容になるように心掛けました。
甲野 功
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