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今日は『アジサイ塾~あはき・柔整広告ガイドラインの解説~』というセミナーを開催しました。つい先日『アジサイ塾~あはき・柔整広告ガイドラインの内容とその意義~』を行ったばかり。ほとんど同じタイトルです。今年2月に発表されて正式施行された「あはき・柔整広告ガイドライン」。発表当初はその内容に業界内が一部騒然としました。私は前々からこのガイドライン作成に関する広告検討会の情報を追っかけていたので遂に正式に決まったのかという感覚でした。3月以降このあはき・柔整広告ガイドラインの影響と思われることが起きております。
本広告ガイドラインの内容を解説してもらいたいという依頼がある鍼灸学生から寄せられました。そこで本セミナーを開催したわけです。しかし、また別の学生さんからも解説の依頼があったのですが、その学生さんには以前から色々なことを個人的に教えており情報量の差が大きいのです。広告ガイドラインって何?という学生さんと、昨年のうちにこのようなものが今後発表されますよと完成内容とさほど変わらない情報を得ていた学生さんとでは伝える意図が変わってくる。というより変えたい。そのような私自身の都合であはき・柔整広告ガイドラインという同じ題材でセミナーを別々に行ったのでした。
6月21日の方はオープンに参加者を募り、一般的なガイドラインの内容を解説するものとして考えていました。ところが外部からの希望者がなく、最初に依頼したよく知っている鍼灸学生さんだけの参加になります。何度も会っていてそれなりに信頼関係があるので少し踏み込んだことものにしようと内容を少し変更しました。
私が時間をとって資料を作成しあはき・柔整広告ガイドラインの解説をしようと思ったのは、すごく表面的な話がネット上に飛び交っていると感じたからです。
「東洋医学」って用語が使えないらしいよ。どうせ法的拘束力はないんでしょ。こんなことをするなら無資格者を取り締まれよ。どうせ何も変わらないでしょ。
こんな意見がSNS上で見受けられました。何年も調査している私にとっては、そんな単純な話ではない!、という気持ちが強い。そもそもこの広告ガイドライン作成のためにあはき柔整等広告検討会が始まったのは2018年(平成30年)のこと。平成時代です。その頃から会議をしてきました。途中、新型コロナのパンデミックがあり社会情勢は大いに変化。その影響を受けた上での広告ガイドライン完成です。その前に医療機関に関する医療広告ガイドラインが先に完成しています。2020年には総務省による大規模調査を経て医業類似行為等の健康被害に関する調査報告書が出されています。そして総務省により消費者庁と厚生労働省に対して是正勧告が出ているのです。そのような背景があった上での今回のあはき・柔整広告ガイドライン施行。ガイドラインそのものだけでなくそれまでの経緯を踏まえてどのような意図で作成されたのか。それを伝えたかったのです。
免許を取ってプロとして臨床現場に出ている者は自己の責任があります。国家試験には関係法規が出題されるので法律を知っていて当然。開業して広告違反で指導、摘発されるのは誰のせいでもなく自己責任。知りませんでしたでは済まされませんし、そうなったら各自が対応する。ところが学生さんは知識、経験が乏しく先輩方の話を参考にします。これまで大丈夫だった、上手くいった、何も起きていない、ということが将来はそうではないかもしれない。それは昨今の世間を見ていれば理解できます。30年前は、20年前は、5年前なら、特に問題にならなかったとされたことがコンプライアンス違反、違法行為と指摘されています。法的にも社会的にも処罰が厳しくなっていることが伺えます。このあはき柔整業界だけが変わらないとは言えません。公開されている情報だけを確認していても水面下で様々な動きがあります。あはき・柔整広告ガイドラインは表面に出てきた具体案だと私は捉えていて、そのことを踏まえて説明する必要を感じていました。
当日。参加した顔見知りの鍼灸学生さんにまず伝えました。私がこれから鍼灸師になる学生さんにまず伝えたいことは成功する方法よりも失敗しない方法。成功というのは人それぞれでお金、時間、交友関係、やりがいなど何をもって成功だとするのかは定まりません。しかし失敗は割と分かりやすく、逮捕される、社会的に抹殺されるということは誰しも失敗になるでしょう。そうなればお金も手に入らないですし、交友関係も失う。実刑になったら自由な時間も失うかもしれません。違法行為を行わないようにする。そのためにまず法律の話をしました。最も関係の深いあはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関わる法律)以外にも医師法、医療法、景品表示法、薬機法など多数の法律が関係します。広告規制に関わること、この広告ガイドラインに関連する法律は複数あるのです。幸い学生さんは授業で一通り関係法規を習っていたのであはき法の話は飛ばしてできました。そして業界に大きな影響を与えた判決、事件を紹介します。続いて広告関連で非常に重要な景品表示法の説明をします。違法な表現とは。罰則の種類。実際に起きた処分の事例。
それを踏まえて健康被害が多発している現状を紹介します。実質無資格者の施術が取り締まられていない現状。そのことを総務省が大規模調査をして『消費者事故対策に関する行政評価・監視 -医業類似行為等による事故の対策を中心として-<結果に基づく勧告>』という報告書を出したこと。ここから総務省は消費者庁と厚生労働省に勧告を出していて行政が動いていることを知らせます。鍼灸業界としては『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会』。通称「あはき柔整等広告検討会」の開催が2018年5月から始まってこのあはき・柔整広告ガイドライン作成に向けて動き出していました。
今年2月18日に正式名称『あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針~あはき・柔整広告ガイドライン~』が完成。その内容をピックアップして解説しました。何となく噂レベルで知っていたという学生さん。巷にある施術所は多くが引っ掛かる内容ですねと驚いていました。実際にどうなるのかを私は実例を挙げて説明しました。NHK(Eテレ)の番組『きょうの健康』でガイドラインが特集されたこと。東京都新宿区はガイドライン発出したこととその内容を遵守するように通達するハガキを出していること。保健所に指導されたケース。新宿区は施術所情報を公開していること。などなど。“どうせ何もしないんだろう”。その無責任な意見を鵜吞みにできない事例を挙げていきました。
終わると学生さんは、考えたことも無かったことばかり、自分で調べる気にならないし調べることもできない話だったという感想でした。私は正しく恐れましょうという言葉で締めました。
1週間に2回同じテーマで学生さんに向けて話をしました。資料作成にあたり調査を深めて新たな発見が幾つもありました。私自身の理解も深まった気がします。この後も似た内容を話す予定があるので更に精査していきたいと思います。
甲野 功
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