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~マッサージ業第3次倒産時代というニュース~

@niftyニュース ”マッサージ業”倒産時代に より
@niftyニュース ”マッサージ業”倒産時代に より

 

 

7月6日に@niftyニュースで以下のようなニュースがありました。

 

2025年1-6月の「マッサージ業」倒産55件 20年間で最多、熾烈な競争で値上げも限界

 

私はあん摩マッサージ指圧師。マッサージ業を営む者です。他人事ではないニュースです。ただ当事者であり専門家の目で見るとタイトル通りの内容ではないことがうかがえます。この報道をみてSNS上の意見というか感想を目にしたのですが正確なことが分かっていないのではないかと感じました。学生さん達がこのニュースをどう理解するのかを懸念しています。

 

このニュースでは『「マッサージ業」の倒産が過去20年間で最多の55件に達した。第3次の倒産増時代に突入した「マッサージ業」を分析した。』とあります。この文章にも色々と説明したいところですが報道内容を先に触れます。今年令和7年(2025年)の上半期(1~6月)で倒産(負債1,000万円以上)し企業が55件となりました。この数字は前年同期比17.0%増で過去最多を更新。これまでの最多だった2024年の47件を上回りました。倒産した55件の83.6%が売上不振によるもの。倒産した企業はすべて負債1億円未満。従業員数10名未満の規模が54件でした。「マッサージ業」の倒産には今回を含めて過去に3度大きな波があり、第1次は平成22年(2010年)~平成24年(2012年)。第2次は平成30年(2018年)~平成31年・令和元年(2019年)。そして現在の第3次だといいます。解説として第1次は『リーマン・ショックや東日本大震災で先行きが見通せない時期に、足つぼマッサージやタイ古式マッサージなどの斬新なマッサージ店が台頭した。』、第2次は『リーマン・ショックの傷もようやく癒えた頃で、大手チェーンが駅前などを中心に店舗数を急拡大し、人手不足に拍車がかかった時期だった。』、そして現在の第3次は『続々と新しい接骨院や鍼灸院、マッサージ店が誕生し、顧客獲得を巡り熾烈な競争が続く。新規来店は破格値での施術や前払い回数券で実質割引に手を付けるなど、あの手この手の集客方法も右肩上がりの物価高を前になすすべがなく、差別化が難しい時代に脱落するマッサージ業者は多い。』と述べています。

 

まず指摘したいのは凄く大雑把に「マッサージ業」と括っています。リラクゼーション店、接骨院、鍼灸院、マッサージ店と。これらは全て別物です。別物というのは行うために必要な資格が違います。リラクゼーション店→誰でも、接骨院→柔道整復師免許、鍼灸院→はり師・きゅう師免許、マッサージ店→あん摩マッサージ指圧師、といったように。どれも同じではなく、師がつく国家資格はそれぞれ最低3年間勉強して厚生労働省が管轄する国家試験に合格しないとすることができません。全てできるという人は多くはないのです。やる側からするとこれらを「マッサージ業」と一括りにするのは暴論です。

ではなぜ「マッサージ業」としてしまっているのでしょうか。それはこの調査は日本産業分類(小分類)の「療術業」を抽出してデータを集計、分析しているからです日本産業分類とは総務省統計局が定めた世にある仕事を便宜上分類したものです。大分類、中分類、小分類と段々と細かくなっています。ここでの療術業というのは番号でいうと835でその内訳に83518352があります。

(※注意:令和5年に改訂されており、旧835は現在「施術業」という名称となり、8352は旧8359で「その他の療術業」といったが現在は「療術業」となっている。元の東京商工リサーチはデータは平成18年からで旧853「療術業」で統計を取っている。ややこしいので旧853「療術業」とするが、番号は旧8359ではなく現在の8352で記載しています。

 

8351:医療、福祉>医療業>療術業

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所

あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師及び柔道整復師がその業務を行う事業所をいう。これらの者が出張のみによってその業務を行う場合も含む。

事例 あん摩業;マッサージ業;指圧業;はり業;きゅう業;柔道整復業

 

8352:医療、福祉>医療業>療術業

その他の療術業

温熱療法,光熱療法,電気療法,刺激療法などの医業類似行為を業とする者がその業務を行う事業所をいう。これらの者が出張のみによってその業務を行う場合も含む。

事例 太陽光線療法業;温泉療法業;催眠療法業;視力回復センター;カイロプラクティック療法業;ボディケア・ハンドケア・フットケア・ヘッドセラピー・タラソテラピー(医業類似行為のもの);リフレクソロジー

 

このように8351は法的に開業権のある国家資格者(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師)が業務をする施術所のこと。3852は8351の国家資格ではないものが行う事業所。これらを日本産業分類では同じ「療術業」にカテゴライズしているのです。

極端な例えかもしれませんが西欧から見れば日本も中国も韓国も北朝鮮も同じ東アジア地域で似たような容姿をしているから一まとめにしてカウントしているようなもの。当事者からすると文化も風土も社会環境も全然違うだろと言いたいというような。

 

話を戻すと日本産業分類の「療術業」を「マッサージ業」と言い換えてしまうことで術者側からの批判を生みます。鍼灸師と足つぼマッサージはそもそもラーメン屋とパスタ店くらい違いがあります。どちらも飲食店だから一緒だろうと言われればそれまでですが、ラーメン屋が潰れるのとパスタ店が潰れるのでは事情が異なることはわかるでしょう。接骨院が倒産する理由と鍼灸院が倒産する理由は異なります。もちろんマッサージ店(あん摩マッサージ指圧師が行う施術所)が倒産する理由とリラクゼーション店(非国家資格者が行う店舗)が倒産する理由ももちろん違います。全てで業務経験がある私からすると明白なことですが統計データには一緒になってします。この上半期倒産した55件の詳しい業態はどうなのでしょうか。そこが判明しないのに「マッサージ業」とあたかもマッサージ店が倒産しているように見出しをつけるのは問題があります。最後まで読めば日本産業分類の療術業でデータをとったと注釈がありますが。果たして日本産業分類の療術業を理解している方がどれくらいいるのでしょうか。

 

次に注意したいのがこの倒産というのは企業ベースであるということ。元のデータは東京商工リサーチによるもの。個人店のデータではないのです。私も含めて鍼灸院は個人事業主で行っているところが多いです。訪問マッサージになると企業が増えますがあん摩マッサージ指圧師によるマッサージ店も個人事業主が圧倒的に多いです。接骨院だとグループ院展開をする企業が増えますがべらぼうに多いわけではありません。ここに非国家資格者による個人リラクゼーション店を入れるとその数は膨大になるのですが、そのうち企業で行っているところはわずかです。倒産したのが55件と過去最多と言いますが、個人店の閉店・廃業はそんな数では済まないはずです。私の住む東京都新宿区には施術所で1000件弱あります。これは保健所が認識している国家資格者の施術所の数だけです。リラクゼーション店を入れたらその数はもっと増えます。施術所の廃業については届出を保健所に出すので統計に乗りますが、新宿区だけでも上半期で数十件とデータが出ます。もちろん企業の倒産ではなく、単に施術所を閉めたということで、住所を変えて移転するのにも廃止届を出すのでデータに乗ってきます。

 

何が言いたいかというと個人の店舗はそんなに潰れていないということ。特に鍼灸院、個人のマッサージ院に関しては。経営規模が小さいのでリスクが低く生き残りやすいのです。現在専門学校で勉強している学生さんがこのニュースを見て、個人経営のマッサージ院も潰れているのか、と不安を覚えるのはお門違いということなのです。鍼灸、あん摩マッサージ指圧師で企業にするところは多くないので倒産したのはリラクゼーション店を展開するところや整骨院をしている企業が多いのだと思われます。少なくとも20年この業界にいますがあん摩マッサージ指圧師で法人化(企業)している人をほとんど知りません。そして知っている数少ない企業はだいたい堅調で倒産したとは聞いたことがないのです。

 

一方、企業ベースで考えると非常に厳しい状態であることは確かです。専門学校を卒業した新卒の方は、特に若い方ほど、企業就職を求めることが多いです。福利厚生を考えて。そう考えている人にはここでいう「マッサージ業」、実際には日本産業分類でいう「療術業」の企業は厳しいということなのです。それを裏付ける別のデータがあります。セーフティネット保証制度というものがあります。これは(中小企業信用保険法で定める要因によって)経営の安定に支障が生じている中小企業者に対し、信用保証協会を通じ資金調達の円滑化を図る制度です。セーフティーネット1号から8号まであります。

1号:連鎖倒産防止

2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限

3号:突発的災害(事故等)

4号:突発的災害(自然災害等)

5号:業況の悪化している業種(全国的)

6号:取引金融機関の破綻

7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整

8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡

 

このうち5号の全国的に業績の悪化している業種を定期的に中小企業庁は発表しています。

 

中小企業庁ホームページ>セーフティネット保証制度>5号:業況の悪化している業種(全国的)

 

この一覧には最新の5号業種に8351(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所)8352(療術業)が掲載されています。現在掲載されている令和4年1月1日~3月31日(令和3年12月28日更新)からずっとセーフティーネット5号職種となっています(※旧8359「その他の療術業」になっているものもある)。つまりここ数年ずっと全国的に業況の悪化している業種であることがうかがえます。

繰り返しますがこれは中小企業庁の出しているデータで対象は起業です。個人事業主とは違います。ただ就職するなら企業にと考えている鍼灸マッサージ専門学校の学生にとっては注意しておかないといけないでしょう。企業だから安泰という考えは甘いと言ってよいわけです。

更に最初に紹介した@niftyニュースで、倒産企業を地区別にみると近畿地方の増加(前年19件→今年27件)が目立つと述べています。都道府県別ですと大阪府(8→10件)、兵庫県(6→6件)、京都府(3→3件)、滋賀県(1→3件)、奈良県(1→3件)、和歌山県(0→2件)とあります。これらの倒産した企業がリラクゼーション店なのか接骨院なのか鍼灸院なのか業態が定かではありませんが頭の片隅に残しておいてよい情報でしょう。

 

見出し、タイトルだけで早合点する。AIの要約で分かった気になる。どのような情報でもそうでしょうが、きちんと精査しないといけません。なぜ「療術業」を「マッサージ業」と言い直してしまっているのか。そしてその用語は日本産業分類によるものであること。更に個人経営ではなく企業体の倒産が多いということ。こういったことを理解していないと記事の内容は事実でも、受ける印象はかなり変わると思われます。

 

甲野 功

 

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