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景品表示法。ご存知でしょうか。
景品表示法とは正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」と言います。ここでいう“表示”というのは広告全般を指すと考えてもらってけっこうです。商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って広告することを規制して消費者を守るための法律です。大雑把にいえば、誇大広告を許さない、という法律。この景品表示法は私の業界に大きな影響を与えています。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師は通称「あはき法」、柔道整復師は柔道整復師法という法律で業務内容や施術環境、方法、広告内容などを制限されています。業務独占といって各種国家資格(免許)を持たない者が我々の業務を行うこと(※法律用語で「業とする」という。「業とする」とは反復継続の意志をもって行うことで対価の有無を問わない。無料だから構わないということではない。)を禁止しています。これを業務独占と法律では表現します。ところが昭和時代の最高裁判決の誤解釈や報道によって実質この業務独占が守られていません。これは業界団体の法制部長も「我々の業務独占を守る法律が実質ない状態」と表現しました。しかし健康被害等の問題は実際に生じているので何かしらの対策を打たないといけません。その具体策の一つが広告違反で取り締まるというやり方。今年に入り通称「あはき・柔整広告ガイドライン」という広告をきちんと適正に行いましょうというガイドランが導入されました。これは今まで曖昧にしていた部分をかなり細かく指導する内容になっています。このガイドランを作成するにあたり、紹介したあはき法、柔道整復師法はもちろんのこと景品表示法も加味して作られています。
なおあはき・柔整広告ガイドラインは法律ではありません。一方、景品表示法はもちろん法律です。法律違反があれば違法行為として罰則がくだるわけです。理学療法士の整体院を含めて私の仕事にも景品表示法は関わっていきますし、過去に処罰例が何件かあります。そして昨年から景品表示法の罰則が強化されて直罰規定が加わりました。開業している身の私にとっては景品表示法の動向は実務に直結するので常にチェックをしております。
最近P&Gジャパン社に対して景品表示法違反による措置命令が下されました。
P&Gジャパン合同会社に対する景品表示法に基づく措置命令について 2025年08月01日
P&Gといえば認知度が非常に高い大手メーカーです。その商品で「ファブリーズ お風呂用防カビ剤」の広告表現に対して「優良誤認表示」があるとして措置命令を出しています。優良誤認表示とは実際の効果よりも優れていると思わせる広告内容という意味です。具体的には
・「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」
・「※防カビ効果は約6週間持続します」
・「自然発想成分“BIOコート”テクノロジーがお風呂場の隅々にまで広がり、天井や床や掃除しにくい場所などを有効成分でコーティングし、黒カビの成長を防ぎ続ける」
等と表示していました。
実際にこの効果があるのかP&Gジャパン社に対し、消費者庁は期間を定めて、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めました。P&Gジャパン社は資料を提出したのですが、消費者庁は効果を裏付ける合理的な根拠を示すものであるとは認めず措置命令に至ります。措置命令とは、事業者に対して違反広告(=不当表示。この場合は優良誤認表示。)を行ったことを公表し、その広告を取り下げ、対応策を講じるようにさせるものです。大企業であるほど広告媒体が多くなりますから、変更するのに莫大なお金と手間がかかります。消費者庁が公表している資料によればP&Gは本件で商品パッケージ、YouTube広告、テレビCM、自社ウェブサイトの内容が該当しています。CMと動画広告の内容を変更してパッケージデザインも変えないといけないことになります。また措置命令が下されたというのは社会的信用を落とすことに繋がります。融資が滞ったり、上場企業では株価に影響したりすることがあり得ます。P&Gのファブリーズという非常にメジャーな商品に措置命令が下るというのは驚きました。効果試験はきちんと行っているはずだと思っていたからです。
それを踏まえて。先月でニュースでは初の措置命令取り消しの判決が出ました。
時事ドットコムニュース 消費者庁の措置命令取り消し「糖質カット」炊飯器巡り初判決―東京地裁 時事通信
社会部2025年07月25日19時00分配信
どのようなものかというと、販売会社「株式会社forty―four」(東京都)が自社サイトで「おいしさそのまま糖質45%カット」などと炊飯器を紹介しました。時期は2021~2023年。この広告表現に対して消費者庁は効果を裏付ける資料の提出を販売会社に求めます。そして合理的な根拠がないと消費者庁は判断し、景品表示法(優良誤認)でforty―four社に対して措置命令を2023年10月に出しています。しかし同社はこの措置命令を出しの葉違法だとして処分取消しを求めて東京地方裁判所に訴訟しました。判決の結果、ニュース内容を引用すると『鎌野裁判長は、表示では米の糖質を削減することが強調されており、一般的な炊飯器で炊いた米とは異なる炊き上がりになることが示されていると判断。「消費者が『同様の炊き上がり』と認識するとは認められない」などとして、優良誤認表示に該当しないと結論付けた。』というように同社に対する措置命令を取り消す判決を出したのです。一度出た措置命令を取り消す判決が出たのは初めてのことになります。
なお、消費者庁から処分が下されても、それについて不服がある場合には、行政不服審査法第2条、第4条及び第18条第1項の規定に基づき、書面により消費者庁長官に対し審査請求をすることができます。
この訴訟において同社側弁護士は『「事業者が提出した資料の検討が不十分なまま措置命令が出されている。運用の在り方に一石を投じる判決だ」と評価した。』と報じられています。この言葉には消費者庁の過剰な措置命令処分をけん制する意図がうかがえます。除菌やダイエットなどの誇大広告が疑われるものに対して検査データを提出させて広告内容に合理的な裏付けがあるかを消費者庁は判断します。その多くは科学的根拠が乏しいとして処分を行う。資料の検討が不十分で恣意的に措置命令を出している例があるということを裁判によって示すことができたというものだと弁護士側のコメントに表れているでしょう。糖質カットの炊飯器について、消費者庁は本件の同社以外にも複数のメーカーに対しても優良誤認表示の措置命令処分を出しているのです。
この判決に対して消費者庁側は『主張が認められず残念。判決内容を精査し、対応を検討する。』とコメントを出しています。
一度出された措置命令処分が覆る。景品表示法制定以降初めてのことだとか。これは大きな判例となります。一度目を付けられたら逃れられないと、一部で言われていた景品表示法違反。取消しになることがあるとなれば重要な前例となるわけです。私としては今後大きな影響を与えるものだと感じました。
ところが。先日の報道で消費者庁は控訴する方針であることが報道されました。
東京新聞 措置命令取り消し、控訴へ 糖質カット炊飯器、消費者庁 2025年8月7日19時27分 (共同通信)
消費者庁は東京地方裁判所の判決を不服として、控訴して高裁で争う方針とのこと。まだこの件は決着していないということです。二審判決がどうなるかで、間接的に私の業界にも影響を受けることになります。裁判の判例は重要な前例となります。どうなるのか今後も注目しています。
甲野 功
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