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8月14日に再び「学連OBOGミドルな会」の練習会に参加してきました。
学連とは「学生競技ダンス連盟」の略称で、全国で加盟する学生競技ダンス部の組織。ブロックごとに分かれており私は東部日本ブロックの東京理科大学でした。学連との出会いがその後の人生を大きく影響され、現在に繋がっています。競技ダンスに熱中した大学時代。その時の情熱が将来を決めました。4年生の時に半導体(青色発光ダイオード)の研究をした関係で半導体商社(旧東証一部上場企業)に新卒で就職するのですが、毎日がつまらなくてサラリーマンというかこの企業が嫌でした。技術営業部門に配属されたこともあるのでしょう。営業という仕事が非常にストレスで、かつ直属の上司とも関係が築けず、24歳にして麻疹罹患により入院。一度ショック症状で生死をさまよう危険な状況になりました。9日間の入院と前後の自宅静養を合わせて2週間寝込みました。その時に生まれ変わった気持ちで自分の情熱が持てる仕事をしようと脱サラを決意します。一度は社交ダンスのプロを考えましたが私の実力、器量では到底やっていけず。ダンスの師匠のオーナーにあたる先生にも辞めておきなさいと言われました。そして選んだのが競技ダンス選手をサポートする役割。特に学連選手を。そうして専門学校に通い、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を取得します。29歳の3月でした。新たな職場として競技ダンスの聖地、東京都北区十条を選びます。一般的に知られていませんが、都内で競技ダンスをしている選手なら十条という単語ですぐに分かることでしょう。約4年間の修業で競技ダンス選手をみるという経験と出会いをたくさん得られました。この十条の職場で今の妻と出会っているので本当に人生そのものに学連が影響を与えたのです。
学連現役生活が終わって四半世紀。仕事として競技ダンス選手と接するので情報収集、研究は欠かしていません。20年も経つと様々なことが変化しています。環境、踊り方。良い面も悪い面も多々あります。自分のことになれば20代と体が違います。子育てや新型コロナがあり、ダンスから離れた時期がありました。どんどん動けなくなっていることを痛感します。しかし同世代にはまだプロ選手として活躍する者がいます。同期、少し学年が下。しかも今が全盛期という者もいるのです。競技選手を引退せずにフロアーに立つ姿が輝かしいです。何より学生時代からの私の師匠は未だにプロ現役選手。当然私より年上です。それをみるとまだ体が動くうちにもう少しやろうという気持ちになっています。ただ変に始めるとダメです。本気で再開すれば生活に支障をきたすのは目に見えています。時間とお金をいくらでも費やしてしまう。また社交ダンスサークルもいまいちです。学連という特殊な世界で始まったキャリアなので社交ダンスの文化に馴染めませんでした。ヤングダンスサークル、敬老会のサークル、社会人サークルなどを少し体験しましたが、どれも合いませんでした。できもしないステップを見よう見まねでやったふりをして楽しむことができず。高齢者相手に手加減しながら踊ることも合わず。子どもが小さいときは子育ての時間を削って参加しておきながら、これでは逆にストレスが溜まるという気持ちに。そして5年前に新型コロナが大流行。横浜クルーズ船でのクラスターは社交ダンスパーティーが原因だとされて社交ダンスをすることができなくなります。3年間は影響を受けたことでしょう。
2年程前に学連OBOG練習会が発足します。学連出身で同世代の先生が競技を引退し、学連を経てダンスから遠ざかっていたOBOGにもう一度再開してもらおうという意図でした。指導者の一人が学連時代からお世話になっていた本池淳先生だったことから参加を決意。参加者がみんな学連経験者という練習会は自分の希望に合致しました。基礎を徹底的にやる。地味な基礎練習をする。一つの動きを深く追求する。それをしてくれます。
それから「学連OBOGミドルな会」が誕生します。学連経験者というのは同じですが年齢制限を課してミドル=35~59歳が対象というもの。学連OBOG練習会は先生主体ですが、こちらのミドルな会は発起人が主体。色々なイベントを企画しています。
前回初めて「学連OBOGミドルな会」の練習会に参加しました。要町駅にある「ダンスカレッジ古都」で明治大学OBの新井透先生による練習会。このときはワルツでした。事前にステップの動画が共有されていて、ほぼやったことのあるもの。これなら大丈夫だろうと参加したのですが、内容は想像を超えていました。それはイタリアスタイルのダンス。これまで私がやってきたのは主にイギリススタイルのダンス。伝統的、クラシックな。対してイタリアはお国柄情熱的。私の世代だとピノという選手が印象深いです。新井透先生はずっとイタリア、ドイツでダンスを習っていました。またとても珍しい10ダンサーというモダン種目もラテン種目も両方競技に出る方。スタンダード種目にワルツ、タンゴ、ウィンナーワルツ、スローフォックストロット、クイックステップが、ラテン種目にチャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソドブレ、ジャイブがあり、合計10種。その全てを競技レベルで踊れるのです。踊ることはできても大抵はスタンダードかラテンのどちらかに絞ります。両方をするには時間が足りなくなります。特に学連は2年生以降専攻を決めて片方ばかりに専念するので10ダンサーが育ちにくいのです。新井透先生は異色の存在です。
今回の曲はタンゴ。最もイタリアらしさが出ます。スタンダード種目の中でもラテンに最も近く、他の種目とルーツが異なります。前に出したピノの代名詞がタンゴでした。前回の体験を踏まえてこれはより“濃く”なるだろうなと予想していました。
そこで出会ったのが足し算のダンスでした。
私は学連時代、スタンダード(モダン)専攻でした。正直なところラテンが苦手でした。恥ずかしいというか。性格に合っていない。スマートなスタンダードが合っていました。長年練習していくと分かったことが引き算の踊り。学連はとにかく大きく動けと最初に言われます。それは間違っていないのですが、大きく見せるのと大きく移動するのは違います。確かに移動距離が重要なスタンダードは長身が有利なので背が高い人が多くなります。しかし大きく見せる(魅せる)のは別の話。やっていくうちに無駄を省いて合理的にしていくこと。学連を卒業してからよく言われるのが「学連の時みたいにガツガツしないように」。元気よく、大きく、が正義だった学連とは違いますよということ。体力、筋力、そして若さにものを言わせてガンガン動くのではない。そのように余計な力を抜いて、余計な動きを削る、引き算のダンスがスタンダードに大切だと考えるようになっていました。
ところが新井透先生のダンスは足し算です。何度か引き合いに出した言葉が「とおるの遠回り」。前に出る前に後ろに振りかぶる。右に進むなら左にいってから。上がる前に下がっておこう。そういう感じです。タンゴは音の表現として強いアクションがあります。動きが不連続。他のスタンダード種目は全て連続、動きを途切れないようにするのですがタンゴだけがストップ&ゴーがあります。そのストップをいかに不連続で急に止まるかが見せ場。そこに強いアクションが生まれます。動きを大きくするために逆のことをしてから。最短距離ではなく遠回りする。
ファイブステップの応用でセブンステップというものをしました。ファイブステップは基本中の基本といえるステップ。そこを質問したときのこと。ただ淡々と行うのではなくその前に色々としなさいと言われます。窓の魚にアピールして、と言われ。スタジオ古都の窓には魚や亀のイラストが貼ってありまして。視線の作り方は重要なのですが、一度遠くをしっかりと見てから(アピールしてから)リンクという動作に入る。やることが多いのです。
ここでモヤモヤしていた悩みが少し解消されます。相手と組んで踊ると途中何をしていいのか分からなくなるときがあるのです。シャドーといって一人で踊るときは自分をコントロールできるのですが、二人で組むと体が自由に動かせなくなる。だから学連時代も勝てなかったですし、プロではやっていけないという致命的なもの。その原因に動きの途中で動きが消える感覚に襲われる。ステップはできます。相手もできます。ただ互いのタイミングが微妙に異なります。外面は帳尻を合わせているだけのような。それを動きを増やすことである程度解消できそうなのです。色々な動きを入れることで音を目いっぱい使える。動くから相手に情報量が増えてタイミングを与える機会も増えて合わせやすくなる。シンプルにし過ぎて音に対して動きが余って棒立ちになり音を消費しているところがある。そのように気付きました。どんどん使った方が忙しいのでむしろ棒立ちになる暇がない。もっと足した方がいい。そう思いました。
もう一つ。新井透先生は背骨や股関節を大きく使います。骨盤の前傾・後傾が激しい。腰椎、胸椎の前弯・後弯を凄くする。ラテンもできるからこそなのでしょう。スタンダードであんなに動かす人を今まで知りません。そして困ったことにその動きが外から見ても分からないわけです。はた目から見ているとまっすぐ立って踊っているように見えます。あんなに体幹をグニグニ動かしているように見えないのです。これは個人的な感覚的な話ですが手足の四肢で踊る場合と胴体の体幹で踊る場合があります。ラテンはどちらかというと体幹の感覚が強いと考えていて、スタンダードは四肢の感覚が強いと思います。スタンダードを踊るときに四肢の感覚ばかりで踊っていたので途中動きが消えてしまうのだと分かりました。私は体幹、特に背骨の動きを入れるのが苦手でした。特に相手と組んでいるときに。最も触れている体幹よりも手足で踊ろうとしてしまう。これも余計なことを省こうという考えが強かったせいだと思いました。だから言われたことが組むとできない。背骨と股関節の動きも足していった方がいい。
今回も新しい発見がありました。今まで関わったことが無いイタリアスタイル。それを知ることで長年の悩みが解消される兆しに。どんどん足していってダメなら引けばいい。そのような心境になりました。
甲野 功
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