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大西兄妹をご存知でしょうか。社交ダンスを競技として行う競技ダンスの選手で、アマチュア部門です。主戦場にしていた団体の関係で競技ダンスというよりダンススポーツという名称を使用した方が適切かもしれません。テレビ番組にも出演していて世間の知名度が高いと思われます。タレントが社交ダンスに挑戦するのではなく、生粋のダンススポーツ選手。そこからテレビ番組出演をしてきました。日本テレビの特番『THE DANCE DAY』で準優勝を果たしました。翌年の冠スポンサーのCMにも出演しています。
この大西兄妹が今年カップル解消をしました。カップル解消とは一緒に競技をすることをやめるということ。アマチュア界のビッグカップルが解散するというのは社交ダンス業界に大きな衝撃を与えました。兄妹とあるように実の兄と妹のカップルでした。その解散までの3ヵ月をNHKがドキュメンタリーとして『スポーツ×ヒューマン』で追いました。それが9月1日にBS NHKでされました。
スポーツ×ヒューマン 2人をつなぐ ラストダンス 〜競技ダンス・大西兄妹〜
国営放送であるNHKに取材されて放送されるということは快挙といってよいでしょう。かつては年に一度の日本インターナショナルという国内最大のプロ競技会をNHKは『栄光のステップ』という番組名で中継していましたが、現在は放送されていません。テレビ番組を主戦場とする芸能人にとってもNHKに出演することは大きなことだといいます。銀行の信用度が上がるのだとか。私が記憶する限り、NHKでドキュメンタリーとして社交ダンスが取り上げられたのは2021年12月27日放送の『社交ダンスの最高峰ブラックプール〜日本人ペアの挑戦〜』以来です。この番組では日本最大プロ団体であるJBDFの当時チャンピオンである廣島悠仁・石渡ありさ組を中心に、日本からの選手らが社交ダンスの聖地イギリスのブラックプールで行われた競技会に挑戦する模様を放送しました。それ以来の出来事だと思います。
大西兄妹は社交ダンス一家に生まれました。私はご両親を過去に見たことがありました。1996年12月。東京理科大学舞踏研究部に入り学生競技ダンスの世界を知った年の年末。学生競技ダンス最大の競技会である全日本学生競技ダンス選手権大会。そこでクイックステップの部で優勝したのが大西兄妹の両親となる大西組でした。この1年生時点でクイックステップが最も好きな種目でクイックステップの名選手になりたいと考えていた私は東部ブロック外の選手に優勝を取られたのが残念でした。そして衝撃的なことを上級生に言われます。この人たち夏全ラテンチャンプだよ、と。夏全とは全日本学生選抜競技ダンス選手権大会のこと。夏に行われるので夏全。冬に行われる全日本は冬全と呼ばれています。夏全は各ブロックから上位の学校が参加して行う4種目総合戦(当時)で、ラテン部門はチャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソドブレの4種目を踊り総合点で順位を出します(※現在は5種目)。つまり夏全のチャンピオンはその時点で総合力が最も優れた選手です。対して冬全は単科戦といって1種目のみのエントリー。大会出場に制限がなく出場選手数は夏全よりも大幅に増えますが、種目でばらけるので勝ち上がりやすくなります。私のいた東部ブロックでは2年以降は専攻分けといってモダン(※当時の呼称。現在はスタンダード。)、ラテンの片方に専念します。特別な競技会を除いて専攻外の種目に出場することはありません。それを大西組は夏全でラテン部門で優勝し、冬全ではモダン部門のクイックステップに出場して優勝したのです。東部ブロックでは専攻を変えること自体あり得ませんし、4年生の段階で変えるなど聞いたことがありません。お笑いで例えるとキングオブコントを優勝したコンビが同じ年の年末にM-1でも優勝するようなもの。全日本をモダン・ラテン両方で優勝したのは大西組だけです。今後もまず破られないと思われる偉業です。そのお二人から生まれたのが大西兄妹なのです。
なお大西兄妹には、下に次女がいまして妹さんもアマチュアトップ選手です。このような競技ダンス一家に生まれた大西兄妹は兄大晶さん6歳、妹咲菜さん3歳のときにカップルを結成し競技を始めます。それから20年組み、国内のダンススポーツアマチュア大会で優勝の山を築いていくのでした。特に昨年の三笠宮杯というダンススポーツアマチュア大会では国内最高レベルの競技会の、選手権カテゴリーの最もレベルの高い部門において、スタンダード・ラテンともに優勝という快挙を達成します。これは30年以上ぶりの出来事でした。両親は学生競技ダンスでしたがダンススポーツの世界で二人も偉業を達成するのです。その二人が20年組んできたダンスのカップルを解消したのでした。
私は30年近く競技ダンスに携わっているので様々な情報が入ってきます。妹の咲菜さんが廣島悠仁先生と組むという話も耳に入っていました。昨年、ある意味で大西兄妹のカップル解消以上の衝撃があったのが廣島悠仁・石渡ありさ組のカップル解消でした。冒頭に書いた通り、廣島悠仁・石渡ありさ組は当時のプロ部門のチャンピオン。日本にはプロ団体が複数ありますが歴史も規模も一番なのがJBDFという団体。その団体におけるプロスタンダード部門のチャンピオンであった廣島・石渡組。まだ若く、長期政権を築くものだと思っていました。まさかのカップル解消でした。そして今年の大西兄妹のカップル解消。既に廣島悠仁先生と大西咲菜さんはカップルを組み、ダンススポーツの団体であるJDSFのPD部門(プロ)に所属して競技会に出ています。JDSFは社交ダンス以外にもブレイキンの団体でもあり、アーバンスポーツとしてダンススポーツを行っています。番組ラストでは兄大西大晶さんが新しいパートナーと踊る様子が映っていました。
今も昔も競技ダンス界でカップル解消、団体分裂は世の常。あの名カップルが分かれてしまった。その度にファンは喪失感に駆られます。しかし、私も選手であったしカップル解消を経験しているので分かりますが、それぞれ個別の事情があり仕方ないこと。新しい門出に注目したいですし、そうしないといけません。アマチュアトップだった大西兄妹が分かれて別々の選手と新しいカップルを組む。競技ダンス界でよくあることをNHKの番組で取り上げられる。これも間違いなく偉業だと思います。そして外からは見えない姿をテレビが映し出していました。
甲野 功
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