開院時間
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
世間の人が「指圧」と聞いて思い浮かべるのはどのような動作でしょうか。おそらく親指で体を押すことだと思われます。50代以上だと故浪越徳次郎氏の姿が記憶にあるのでは。指圧の心は母心、という。親指を前にして笑う姿。実際に『浪越指圧』という技術は現在も継承されており、浪越学園日本指圧専門学校はあん摩マッサージ指圧師を養成する学校ですが、そこで教えています。親指で押すことは専門用語で母指押圧(母指圧)といいます。母指とは親指のこと。押圧とは押す、圧迫すること。母指による押圧操作なので母指押圧といいます。浪越指圧はこの母指押圧全てというくらい多用します。そのため指圧といえば母指押圧とイメージされるようになります。
押圧操作には体の様々な部位で押し、母指だけではありません。手掌、手根、四指、母指球、小指球、手拳、肘頭、前腕、膝頭、足底、中指など。ただ押すように見えて技術的に奥が深いのです。
さて母指での押圧ですが、母指の更にどこを用いるかで更に細かく違うのです。そこを細かく説明していきましょう。
まず親指の部位を細かくみていきましょう。なお押圧操作で用いる部分です。
・母指尖:親指の尖端。爪に近いです。ほぼ爪という感じです。
・母指頭:親指の頭。先の部分。母指尖より指の腹側です。
・母指腹:母指頭より少し根本に近く、柔らかい部分。
・母指側腹:母指腹の外側。爪の横側。
・母指骨:親指の骨。解剖学で母指の基節骨と末節骨と言います。中手骨も含める場合もあります。
親指だけでも細かく部位に分けられます。
こられの部位で母指押圧操作を行います。圧力は物理学的には力に比例し、面積に反比例します。つまり強く押せば押すほど圧力は高くなり、また押す面積が狭くなればなるほど圧力は高くなる。母指圧は軽くより強く押した方が当然で圧は強くなります。そして押す面積が狭い方が圧は強く(鋭く)なります。針先で皮膚を突っつかれたら弱い力でも痛いですし、強ければ皮膚に突き刺さってしまいます。それと同じです。
それを踏まえて母指での押圧操作を細かく分けていくと以下のようになります。
●母指尖圧
母指尖で押します。感触は非常に鋭く感じます。強圧のときに使用します。強い圧は神経の興奮を鎮静させる効果が期待できます(※アルント・シュルツの法則)。術者としては相当強く圧を入れたいときに用います。指の負担も大きいのであまり多用しません。そうとう強く押したいときに用います。
●母指頭圧
母指頭で押します。母指尖よりも柔らかく、母指腹よりも強い圧になります。術者によりますが一番用いる母指圧と言えます。
●母指腹圧
母指復で押します。指の腹、柔らかいところで押すので当たりがマイルドになります。私は主に使うのはこちらの母指腹圧です。私はあまり親指が柔らかくないので母指頭圧だと負担がかかってしまいます。母指腹圧でも負担はかかるのですが、好みの問題といえるかもしれません。
●母指側圧
母指側腹で押します。長さがあり、点ではなく線で押す感じです。特に手の甲(手背)や足の甲(足背)にある中手骨の間を押す時に便利です。面積が広くなるので圧が鈍く、その分安心する感触になります。
●母指骨圧
表面上は触れませんが母指骨で押す感覚です。母指側圧よりも広く大きい感触で強く押せます。広いので触知を兼ねて押すことが私は多いです。
●全母指圧
親指の先から母指球までを用いて押します。最も面積が広く、押すというよりも押さえるという表現が正しいかもしれません。圧はとてもマイルドになるので、感覚が過敏でちょっと押すと痛いと感じるような方に用います。広いので安心感が得られます。
このように母指押圧といっても細かく使い分けができます。なお母指尖押圧については以前触れています。
面積が広くしたいなら手根(手の付け根)や手掌(手のひら)で押せばいいだろうという話にもなります。それよりも狭くしたい場合に使い分けます。それと親指を用いるのは感覚が鋭いからという理由もあります。押しながら相手の身体の状態を触知する。それができるのが母指圧の大きな利点なのです。それでは別の人差し指や中指でもいいだろうという意見が出ますが、5本の指で最も力を出せるのが親指なのです。ある程度の圧を入れるには四指(親指以外の手の指4本)では足りません。もっと力を入れたければ別の部位を使って押せばいいのですが、それだと触知する能力が落ちてしまいます。母指の押圧操作が最も使われるのはこのような理由があります。
あん摩マッサージ指圧師の技術は場所や用途、相手の感受性などを考慮して細かいです。「親指で押せば指圧でしょう?」ということではありません。“親指で押す”という単純な動作を深く掘り下げて研究しています。また体格、骨格による個人差があるので術者一人一人が微調整をして自分に合った、そして患者さんに合ったやり方を日々研究しているのです。
甲野 功
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